4-10 これ、お前にやるよ
仕事上がりの飲み会も終わり、ステラと別れたオレたちは二人大通りを歩く。今日はリアの足取りも確かなんで、オレも苦労しないで済むわ。
「ああ、そう言えば」
ふと思い出したオレは、ズボンのポケットに手を入れる。
「何? どうしたの?」
訝しげなリアの眼前に、ポケットから取り出した物を突き出した。この前、モンベールでステラにマントをあげた時に思いついて作ったものだ。
「これ、お前にやるよ」
「えー、何これー?」
珍しそうにリアが目を見開く。暗いのもあってよく見えてないようだ。
「これ、お守りって言うんだよ。幽霊とかから身を守ってくれるんだとさ。お前、オバケ怖いだろ?」
「べっ、別に怖くないもん」
「まあそんなお前のために作ってみたってわけだ。こういうの持ってれば、少しは心強いだろ?」
「え、これ、わざわざ私のために作ってくれたの……?」
「ああ。お前にはなんだかんだで世話になってるしな。……いらないか?」
「いや! いる!」
そう言うやオレからひったくるようにお守りを取り上げる。おい! もっとやり方ってモンがあんだろ!
だが両手で大事そうにお守りを握りしめるリアの姿に、怒気もどこかへ行ってしまう。
「そっか……私のために作ってくれたんだ……」
両手の中にあるものを、まるで宝物か何かのように見つめるリア。
「ありがとう……嬉しい」
「お、おう……喜んでもらえてよかったぜ」
あまりに乙女らしいリアの様子に、オレもなんか変な気分になってくる。いやいや、勘違いしちゃイカんぞオレ!
しばらくの間お守りを見つめ続けていたリアだったが、ふと何か思いついたかのように顔を上げる。
「そうだ」
「おう、なんだ?」
「私も今度の誕生日にルイにもらってほしい物があるんだ」
「いや、別にお返しとかはいいんだぜ? それすぐに作れるモンだし」
「ううん、元々あげるつもりの物だったから」
「そ、そうか……」
そういやオレ、女の子に誕生日プレゼントとかもらった事ないわ。ちょっと、いや、すげえ嬉しいかも。
「だから、楽しみにしててね?」
「ああ、もちろん」
「絶対に、約束だよ?」
なんだろ、今日は妙にリアがかわいく見えるな……。酒飲んだせいか?
そこから話が途絶え、しばらく無言で歩く。だんだんと交差点が近づいてきた。
「そうそう」
「どうした?」
「さっき私に世話になってるって言ってたけど」
「ああ」
「私だってルイにはお世話になってるんだよ。お世話になってるのはお互い様なんだから、あんまり気にしないでね」
「お、おう……サンキュ」
今日はずい分デレてるな……酒の力、恐るべしだぜ。てか、コイツやっぱ気配りできるヤツなんだよな……。クエストのパートナーがリアでホントよかったわ。
それにしても、実際の所オレはリアに何をしてやれてるんだろうか? 正直、一方的に世話になってる印象しかないんだけどなあ。ま、そういう事はこれからゆっくり考えていこうか……なんかオレ、もうすっかりこの世界に馴染んでるな。現実世界に戻りたいのはもちろんなんだが、今ではリアたちに何かしてやりたいって気持ちも少しある。オレってこんなヤツだったっけ……?
「それじゃ、次はクエストでだね」
「ああ」
「カゼ引いたりしないでね?」
「わかってるよ。それに、どうせクエストの前に一回はウチに遊びに来るんだろ?」
「へへ、そうだね。それじゃ」
「ああ、またな」
オレたちは交差点で別れ、それぞれの家へと帰っていった。次はゾンビ退治か……リアも、あれで少しは安心してくれるかな?




