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4-9 仕事の後の一杯は、やっぱ格別だよね






 ゾンビ退治のクエストに申しこんでから二日後。オレたちは、二十八階での毛皮狩りクエストを終えてギルドを出たところだった。

「よーし、それじゃ仕事上がりの一杯だー!」

 リアが右の拳を天に突き上げながら声を上げる。コイツ、おとといはベロンベロンになってたじゃねえか。ま、そういうヤツほど酒が好きだったりするけどな。

「これからはステラもマントがあるから、いくらでもつきあえるでしょ?」

 リアがマント姿のステラを振り返る。

 このステラのカッコなんだけどさあ……。オレは中身がビキニアーマーだって知ってるわけじゃん? で、そのすぐ上からマントだけを羽織ってるわけよ。これってさ、いかがわしいビデオとかに出てくる痴女スタイルっぽくね? マントをバッと開くとその下にはビキニアーマー……ぐぅっ、たまらん。はっきり言おう、かえってエロい。

「はい、ありがとうございます」

 いえいえこちらこそ! お陰でいろいろと妄想にも花が咲いてるから! 我ながらいい物をプレゼントしたぜ! この件に限っては、案を出したリアに感謝しないとな。



 今日のクエストについてあれこれ話しながら、オレたちはギルドからほど近い飲み屋へと入った。うちのギルドメンバー行きつけの店らしく、見知った顔もちらほらと目に入る。

「よおリア、こっちで一杯どうだ?」

「ははっ、またの機会にするよ」

「ステラちゃん、これ食べなよ」

「あ、ありがとうございます」

 コイツら相変わらず人気だなおい! てか、一人くらいオレに声かけてくれたっていいだろうによ! ちったあ気を使えよ!


 奥の方の席を取り、店員のお姉ちゃんを呼ぶ。とりあえず一杯頼み、今日のおすすめを聞くオレたち。

「今日だと鳥の串焼きがおいしいですよ」

「おお! 肉、肉! これは食べなきゃダメだよ!」

 興奮気味に注文し始めるリア。まあ、コイツも若いからな……。

「ルイもガンガン食べないと、強くなれないよ!」

「ああ、言われなくても食うさ」

 もっとも、オレがリアやステラ並に強くなれるとは到底思えないけどな。てか今日でレベル28になったけど、フツーにレベル15くらいの剣士とかにだって敵わないんじゃないか?

「ステラもどんどん頼みなよー」

「はい、いただきます」

 このステラがまた、よく食うんだよな……。まあ、斧兵らしいっちゃらしいけど。酒の方も底なしだし、やっぱ年上のお姉さんは違うわ……。

「いやーしっかし、昨日は二日酔いでさー。今日までお酒残ってたらどうしようかとヒヤヒヤしたよ」

「リアさん、すごい酔ってましたもんね」

 ホントだよ。二、三杯くらいしか飲んでないのにフラフラとかどこのお子サマだよ。ま、実際お子サマなんだけど。この国って何歳から飲酒オッケーなんだ?

「ルイさんが送ってあげたんですよね」

「送りオオカミになる度胸はなかったみたいだけどねー」

 そういう言葉はこっちの世界にもあんのな。

「まあ、リアみたいなお子ちゃまを襲ったってしょうがないからな」

「あー、ルイのクセに生意気ー」

 リアが頬を膨らませる。だからそれがお子ちゃまだっつの。

「どうせルイはステラみたいなボインボインが好きなんでしょ?」

 ボインボインって……。コイツのセンスは昭和かよ。ステラは顔を赤くしてうつむいてる。萌える。

「でもステラが酔う前にアンタが酔っちゃうから、襲うのはムリだね」

「それは間違いないな」

 いよいよ恥ずかしそうにステラが身を縮ませていると、最初の一杯がやってきた。今日も遅くなるんかね……。お子ちゃまは飲みすぎんなよ。




 酒が来てテンションが上がるリア。さっそく乾杯の音頭をとる。

「それじゃー皆さん、お疲れさまー!」

 この店のグラスはちゃんとガラスなんだな。がちゃんて音が懐かしいぜ。

 っておいおい、一杯目から調子乗って飲むなって。あーあ、イッキだよ。飲みきれなくて三分の一くらい残ってるけど。

「ぷはーっ、生きてるって気がするよねぇ」

 お前まだそんなに生きてないだろ……。オレも果汁入りの酒を口にする。ステラは……いつの間にか空いてるよ。ホント、この前も思ったけどスルスルと飲むよなあ……。

「次回はゾンビ退治か」

「ちょっと、ヤな事思い出させないでよ」

 露骨にリアが眉をひそめる。

「総勢五十名規模のクエストになるそうですね」

「自由連盟からは参加者少ないみたいだけどね」

「五十人ってすごいな」

 そんな大人数のクエストとか、さすがに『デモグラ』でもやった事ないわ。てかあのゲーム、そこまで人集まらなくても進められるからこそ一部で人気だったんだよな。

「そういやAランクの何とかってのは、有名なヤツなのか?」

 今回のクエストに参加するという高位プレイヤーについて聞いてみる。

「ギュスターヴさんは、王国調査隊の副隊長を務めている凄腕の剣士ですよ」

「マジかよ? 調査隊って、確かスゴいエリートなんだよな」

「そりゃそうだよ、ダンジョンの最深部を探索できるレベルの人ばっか集まってんだから」

「そんなヤツがいるなら安心だな」

「Bランクの方も三名いましたしね」

 ゾンビも大して強くないって言ってたし、なんだ、次回は楽勝そうだな。てかオレの歌って、五十人いても全員に効果あるのかね?



 そんな話をしていると、注文していた鳥の串焼きがやって来た。

「来たあぁぁぁぁあっ!」

 コイツ、どんだけ盛り上がってんだよ。でも確かにうまそうだな……。待ちきれないって様子で、リアが串に手を伸ばす。どれ、オレも一つ……。

「うまいっ!」

「ウメえ!」

 ヤベえ、ウマすぎだろコレ! 仕事上がりの焼き鳥ってこんなにウマかったのか! 脂のノリもヤベえ! これでコショウ効いてれば完璧だったわ!

「そうそう」

 串焼き片手に、リアが思い出したかのように言う。

「ルイの誕生日って、あと十日くらいじゃん」

「あ、そうなの?」

「そうなのって、自分の誕生日忘れてどうすんのさ」

 いや、それはだってほら、オレは中の人だからさ。

「だからさ、みんなで誕生日祝いやろうよ」

「あ、いいですね!」

 ステラもノリノリで食いつく。コイツら、また女子会やりたいだけじゃないのか……?

「まあ、オレは別にいいぜ」

「はぁ? 逆でしょ、美女二人が祝ってあげるって言ってんだから、ありがとうございますって感謝するべき所じゃん」

 そいつはまたずい分と恩着せがましいなオイ!

「私も、迷惑でなければお祝いしたいんですけど……」

「あ、もちろんオッケーだぜ? ステラに祝ってもらえるなんて、オレ楽しみだよ」

「えー何ー、その態度の違いー」

 ブーっとリアがオレをにらみつける。

「いや、わかってるって。ありがたいから。じゃあ十日後? よろしくな」

「そう来なくっちゃ! それじゃ決まりね!」

「お店はモンベールですか?」

「もっちろん! クエストでがっつり稼いだ後だしね」

 そんな感じで盛り上がる女性陣。しっかしアンタら、パーティーとかホント好きだよな……。


 その後も酒を追加し、結局遅くまで盛り上がったオレたち。若さだな……。ま、今回はリアがつぶれなくてよかったわ。






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