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4-6 話が違う!





 ギルド内、ゲートと受付をつなぐ廊下。謎のゾンビ軍団から無事逃げおおせたオレたちは、会話もそこそこに受付へと向かっていた。

 ようやく調子の戻ってきたリアが口を開く。

「ね、早く報告して、みんなで何か食べよ?」

「ああ……今日は疲れたもんな……」

「あ、私は今日はちょっと……」

「あ……」

「そうだよな……」

「すみません……」

 さすがにそのカッコじゃ店に出入りしたくないよな。オレはと言うと、ホントはさっさと帰って寝たいと言う気持ちもあるんだが、今日はまだ一人になりたくないわ……。まあ、それはリアも同じだろうな……ん? これは使えるか? どれ、ちょっとからかってやるか。

 オレはリアを見ながら、ことさらに言ってみる。

「まあ、オレは別につきあってやってもいいぜ? すぐに解散して一人ぼっちになったら、リアが寂しがるもんな」

「へっ……?」

「家で一人きりとか、おっかなくてトイレにも行けないだろ」

「なっ……!?」

 一瞬驚きの表情を浮かべた後、顔を真っ赤に染めてオレをにらみつけるリア。

「バッ、バッカじゃないの!? 私、オバケなんか怖くなかったもん!」

「は? オレ別にオバケの話なんかしてないぜ?」

 わざとらしくすっとぼけて見せる。

「だったらなんだってのさ? そういうルイだって……」

「げっ、今甲冑の音聴こえなかったか?」

「ひッ!?」

 オレのしょうもないウソに、ビビりまくってその場にしゃがみこむリア。おいおい、反応がいちいち古典すぎるだろ。日頃イビられてるだけに、こりゃホンットおもしれえわ。

「ルイさん?」

「すまんすまん、つい」

 ステラがリアの両肩に手をあてながら、オレをたしなめる。てか、ホントお姉さんだな……。



 受付に着くと、赤毛の美女がオレたちをねぎらってくれた。

「お疲れさま。……なんだか本当にお疲れね」

 アンジェラが、やや心配そうに声をかけてくる。

「まあ、いろいろあってな……」

「もう、思い出したくもないよ……」

 オレたちの様子を見て、どうやらある程度事情を察したらしい。

「なるほど、出くわしたのね」

「はい……」

「しっかり聖水もしてたのに、災難だったわね」

 それを聞いて変なスイッチが入ったのか、リアがキレ気味にまくし立てる。

「そう! 出てきたんだよ! あれだけいっぱい聖水かけたのに! 何あれ! 全然効かないじゃん!」

「そう……それはごめんなさいね」

「あ、いや、アンジェラに怒ってるんじゃないんだよ? 私が怒ってるのは教会! あんなインチキ商品売りつけちゃってさ!」

 よっぽど腹に据えかねてたのか、かなり危険なセリフまで飛び出す。おいおい、教会批判とか大丈夫なのか、この世界? ヤダよオレ、異端審問とか火あぶりとか。

「普通は聖水で追い払えるはずなんだけど……運が悪かったわね」

 オレからランドセルを受け取ると、興奮するリアをなだめるかのように穏やかに声をかけるアンジェラ。

「てゆーかさ、私ゾンビが出るって聞いてたのに、なんでオバケが出るのさ!?」

 リアの一言に、アンジェラの眉がピクリと動く。

「オバケ?」

「そう、オバケ! キレーな女の人がさ! スッポンポン! ちょっと美人だからって、自慢してるんじゃないの?」

「それと甲冑姿の人も二人いました」

「全裸の女と甲冑の亡霊……?」

 怪訝な表情を浮かべてつぶやくアンジェラ。どうした、首なんかひねっちゃって、なんかあったのか……?

「おかしいわね、そういう報告は上がってきてないのだけど……」

「じゃあちゃんと伝えといてよ! 私たち大変だったんだから!」

「ええ、もちろんよ。私も少し気になるし」

 てか、あれ見たのオレたちが初めてなのか……運悪すぎだろ! 

「よろしく頼むぜ。知らずに出くわして、リアみたいにガタガタ震えて戦えなくなったら大変だからな」

「なっ……震えてなんかないもん! あれは不意を打たれただけで、あらかじめ知ってたらちゃんと戦えるもん!」

「あー、はいはい」

 そんなオレたちを見て、アンジェラが楽しそうに笑う。

「なるほど、リアにも弱点があったのね」

「いや、違っ、ないもん! 私怖くないもん!」

 コイツ、今日何回もんもん言ってんだ。

「それじゃ、報酬と腕輪持ってくるわね」

 いつものように事後処理を済ませていくオレたち。ちなみにオレはまた2レベルあがって、レベル27になった。正直、初めてここに来た頃とあんま能力的な違いを感じないんだけど……。これ、ホントにオレのステータス上がってんのか?



 今日はクエストを選ぶ気分になれないという事で、あさってモンベールで作戦会議をするという流れになった。ギルドを出てステラと別れ、オレとリアは軽く食事を取るべく店を探しながらいつもの道を歩く。どうでもいい話が一段落すると、リアが話を切り出してきた。

「あのさ」

「ん、どうした?」

「あさってステラにさ、プレゼントしようよ」

「ああ、別にいいけど何を?」

「マント」

「あ、なるほど……」

 確かにそれはあった方がいいな。あのカッコ、好きでやってる可能性もあったから今まで何も言わなかったけど。今日の様子見てるとやっぱ恥ずかしそうだもんな。てか、むしろなんで今まではあのカッコだったんだ? 誰も指摘しなかったから? 慣れ?

「そうだな、じゃあ今のうちに買っておくか。あのカッコだと帰りに一杯ってのもムリそうだし」

「それじゃあ、ラビラビに行こうよ。あそこなら女の子向けのカワいいのあるかもしれないし」

 マントに女向けもカワいいもあんのか……? あってもせいぜいサイズくらいだろ。ま、店についてはよくわからんから、おとなしくしたがう事にするか。てか、ラビラビっていかにもギャルギャルしい名前の店だな……。渋谷の108あたりに入ってそうだ。



 この後、まさかそのラビラビとやらで小一時間ほどもリアのお買い物につきあわされるハメになろうとは夢にも思わないオレであった。おい! マント買うんじゃなかったのかよ!

 しかもその後の食事もオレ持ちなのかよ! 今日コイツをからかいまくった事に対する仕返しか? 少しはオレの財布の事も考えろよ!








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