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4-5 で、出たあぁ~!





 薬草の採集も終わり、帰路につく。しっかし不気味な森だな……。てか、こんな洞窟じゃ光合成もできないだろうに、なんでこんなに木が生えてるんだ? 今さらすぎる話だけど。それに、霧も濃いんだよな……。お陰で視界が悪い事悪い事。

「でも、香水買っといてホントよかったよねー」

「そうですね」

「全然出てこないじゃん、ゾンビなんてさ」

 三十二階の出口も近くなり、少し気が大きくなったのか軽口を叩くリア。てか、香水じゃねえだろそれ。

「まだ三十一階もあるんだから、出ないかどうかはわからんだろ」

「あれ、ルイ君はもしかして怖いのかなー? ねえ、怖い? 怖い?」

 怖がってたのはオメーだろ! 思わずオレがそうツッコみかけたその時。


 がちゃり。


 何やら耳慣れない金属音が聴こえてきた。甲冑を着込んだ騎士が歩く時のSEみたいな音があたりに響く。他の冒険者かと思い音の方を見たオレたちは、一瞬息を飲んだ。

 霧の向こう側から、木陰を甲冑姿の騎士が二体歩いてくる。そのすぐ後を見ると――一糸纏わぬ姿の若い女が、悠然と歩いていた。オレがオパーイオパーイはしゃぎまわらないのは、その女の肌が異様に青白かったからというのと、そして――。

(で、出たあぁぁぁぁあっ!)

 オレたちは慌てて木陰に引っ込む。そう、女の周りには……このあたりのモンスターの成れの果てとおぼしい、無数のゾンビどもが群がっていた。


(ちょっと、どうするの!? てゆーか、あの女の人って、オ、オバケなの!?)

 小声でささやくリアは恐怖で今や顔面蒼白だ。

(ゾンビさんも、八匹くらいいますよ?)

 いや、ゾンビに「さん」はいらないから。しかしあれは、ちと数が多すぎるな……。ん? 向こうから風が……。

(くっせえぇぇぇえええ!)

(バカ! 大声出さないでよ!)

 ヤベえ、鼻もげる! マジでムリ! ムリだって! 逃げよう! 逃げ、逃げ!

(ね、おとなしく逃げよ? あの鎧、メチャクチャ強そうだし)

 リアのヤツ、よっぽど怖いのか体ガタガタ言わせてんぞ……。歯のカチカチ音が思いのほか大きくて、オレとしてはそっちの方が向こうに聴こえるんじゃないかと気が気でない。

(この階なら他にも帰り道はありますから、そちらから帰る事にしましょう)

 そうだな、どう見ても今のリアがマトモに戦えるとも思えんし……。しっかしあの女、幽霊なのか……。めっちゃ美人なのにもったいないな……。マッパなのに胸の先端とかはその長い黒髪で隠されてるのが、またなんとも恨めしいな。幽霊だけに。


 そんな事を思いながら女幽霊ちゃんを見てると、ふと目が合った。

「あ」

 思わず声が漏れる。ヤバい、めっちゃこっち見てる。

(マズい、見つかったっぽい)

(え?)

 女につられてか、甲冑野郎どももこちらを向く。

(これは……)

(見つかってますね……)

 リザードマンやら一角イノシシやらのゾンビどもも、次々にこちらに向き直る。

(こうなったら……)

 リアも、覚悟を決めたようだ。

(みんな、用意はいい?)

(はい)

(おう)

(それじゃあ……)

 大きく息を吸うオレたち。そして……。

「逃げろおぉぉぉーっ!」

 今来た道を、一目散に駆け抜ける。後ろを振り返る余裕などどこにもない。オレも右手に竪琴、背中にランドセルという超絶変態ルックで暗い木々の間を爆走した。





「はぁ、はぁ……」

 しばらくの間全力で疾走したオレたち。ゾンビどもが追ってくる様子はない。

「ど、どうやら撒いたようだな……」

「はい、そうみたいです……」

 ようやく一息つく。いやホント、マジで怖かったぜ……。ふとリアの方を見ると、地面に座りこんで何やら洞窟の天井を見上げている。もうなんて言うか、完全に放心状態だな……。

「ゾンビさんたちはあちらに向かって歩いてましたから、こちらのルートを使えば出会わずに済むと思います」

 ステラ、こんな時でも冷静だな……。さて、リアは……。おお、こっちの世界に帰ってきたみたいだな……って、なんか泣きベソかいてないか?

「うう……怖かったよぉ……」

 今にも涙腺が決壊しそうな顔のリア。気づいたステラが、リアを抱き寄せて頭を撫でる。

「もう大丈夫ですよ」

「うぅ……ステラぁ……」

 鼻をグズグズ言わせながら、子供のようにステラの胸に顔をうずめるリア。ああ、代わりてえ……じゃなくて、ステラみたいな気が利くお姉さんがいてよかったぜ……。


 こうしてハプニングこそあったものの、オレたちは無事にダンジョンを出てギルドまで戻る事ができた。ふぅ、一時はどうなる事かと思ったわ……。








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