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4-3 オバケ、怖い!







 リアが悶絶地獄から復帰したので、弁当を片づけ三十二階の薬草採集に向かうオレたち。

「一回ギルドまで戻るってのが面倒だよなあ」

「仕方ないよ、詰所どうしはつながってないんだし」

 まあここは二十一階の詰所のすぐそばだから、言うほど面倒なわけでもないんだけど。

 詰所に着くとちゃっちゃとゲートをくぐってギルドに戻り、そこからあらためて三十一階行きのゲートに向かう。ゲートを抜けて三十一階の詰所に出ると、テーブルを囲んでいた連中がこちらに気づく。この前の騒動はどこへいったのか、今日はずい分積極的にステラに声をかけてくるな……主に男どもが。

「よお、久しぶり」

「ステラちゃん、だっけ? 今日もカワいいねー」

「あ、ありがとうございます……」

 周りの男どもにチヤホヤされて、戸惑いの表情を浮かべるステラ。いやいや、ここはオレがマネージャーとしてステラを守らねば。

「おい、お前ら! ステラはシャイなんだから、そんないっぺんに寄んな!」

 ステラをかばうように、オレはヤローどもの前に立ちはだかる。

「大体お前ら、なんで急にステラに声かけちゃってるんだよ? 今までだってステラはこの詰所使ってたんだろ?」

 オレの疑問に、男たちが口々に答える。

「いや、だってちょっと怖かったし……」

「あの斧だもんな……」

「しゃべってる所も見た事なかったしさ、やっぱおっかねえよ」

 そういうもんなのか? まあでも、考えてみたらウチの大学でもそういう事あったわ……。話してみないとわからないってのは、どこの世界でも同じなのかね。



 そんな感じでしばらくわいわいやってると、ゲートの方から新たな一団がやってきた。ん? なんか剣士も僧兵も妙に宗教じみたカッコしてんな。あの白地に赤のバッテンって教会のマークだろ? 一行と軽くあいさつを交わしたリアに、ちょっと聞いてみる。

「なあリア、今の連中はなんなんだ? なんかの宗教?」

「ああ、今のはテンプルギルドのメンバーだよ」

「テンプルギルド?」

「そう、教会のお抱えギルドみたいなものだよ。規模は一番ちっちゃいんだけど、なんせバックに教会がついてるからね。発言力は大きいらしいよ」

 へえ……。やっぱ宗教って力あるのね。まあ、今日もオレら聖水準備してるくらいだしな。

「あのギルドの場合、教会の仕事が多いからなかなか見かけることは少ないんだよね」

「ああ、なるほど。それは生活も安定してそうだな」

「でも、入る条件が結構厳しいんだよねー」

「ていうと?」

「キチンと教会に通ってるとか、お勤めに励んでるとか」

「あー……」

 なるほど、信者向けギルドなのな。オレやリアには絶対ムリそうだ。

「やっぱり、例の一件に関係あるんでしょうか?」

「ああ、ゾンビ? そうかもね」

 ゾンビの処理か……。イヤな仕事だな。

「なあ、僧兵ってなんかアンデッドに強いとかあるのか? 祈りで成仏させるとかよ」

「え? ないない、地道に殴るしかないよ」

 切ねえな僧兵! それぐらいの特典はあってもバチはあたらんだろうによ! しかしそうなると、ますますもって出くわしたくないな、ゾンビの群れ……。

 それはリアやステラも同じらしく、用意した聖水を取り出すと武器や衣類に丁寧に塗っていく。ま、これだけ準備もした事だし、ゾンビどもに出くわす事もないだろうさ。

 準備を終えると、オレたちは三十二階に向かうべく詰所を後にした。途中冒険者の一行と出くわし、軽くあいさつと情報交換を交わして先へ進む。

「あの人たちも聖水つけてたね」

「そりゃそうだろ。誰が腐った肉のニオイなんか嗅ぎたいっての」

「武器も汚れちゃうもんねー」

 何度かモンスターにも遭遇したが、フォーメーションうんぬん以前に、大抵ステラが一人でモンスターどもを血祭りにあげてしまう。いや、やっぱあのデカい斧を縦横無尽に振り回して敵を蹂躙する絵ってのは見てて怖いわ……。





 しばらくして、オレたちは三十二階に到着した。薄暗いが天井は高く、脇には痩せ細った木々がうっそうと生い茂っている。一言で言えば、気味が悪い場所だ。おいおい、いかにも出そうなフインキじゃねえか……。

「なんて言うか、雰囲気ありますね……」

「やだ、変な事言わないでよ……」

 女性陣も同じ事を思っていたらしく、二人とも身を寄せ合って……っておい! オレの後ろにまわんな! 敵が出てきたらどうすんだよ!

「オマエら、なんでオレの後ろに来るんだよ! フォーメーション崩れるじゃねえか!」

「えー、だってー」

「ご、ごめんなさい……」

 一人は申し訳なさそうに、もう一人はブーブー言いながら渋々前に出る。おいおい、こんな調子でホントに大丈夫なのか……? 頼むから出てくんなよ、ゾンビども。

「てか、もしかしてオマエら、オバケとか怖かったりするの?」

 いい機会だし、ちょっとからかってやるか。

「まあ、そんなに得意な方ではないですけど……」

「はぁ? オバケなんて、こ、怖いわけないじゃん! バッカでー!」

 ……わかりやすいな、コイツ……。

「そうか、そりゃ心強いな」

「へーんだ、ルイは一人でチビって逃げちゃえばいーじゃん!」

 イラッ。てか、仮にも女の子がチビるとか言うんじゃねえ。そういう態度なら、オレにだって考えがあるぜ。

「じゃあオバケが出てきたら、得意なリアに前衛やってもらおうか」

「えっ!?」

 ものスゴい勢いでこっちに振り返り、大きく目を見開くリア。ぷぷっ、お、おもしろすぎる……。

「ステラはあんまり得意じゃないって言ってんだし、その方が絶対いいよな?」

「そ、そうかもしれないけど……」

 引っこみがつかないのか、今や涙目になりかけている。まあ今日のところは、このくらいでカンベンしてやるか。

「まあなんだ、いきなり変えるのも大変だし、今日はまだやらなくていいぜ」

「そ、そう……」

 ブーッ、もうダメ! そんな露骨に安心するなって! 顔ゆるみまくってんぞ、今のお前の顔! こりゃいいネタつかんだぜ!

「さ、さて! それじゃあテキパキ集めてさっさと帰りましょうか!」

「そ、そうですね!」

 話を変えたいのか、それともいろいろごまかしたいのか、ことさらに大声を上げて採取ポイントを探し始めるリア。そんなリアに気を遣ってか、ステラもその流れに乗っかっていく。このあたり、さすがはお姉さんだねえ……。

 それはさておき、依頼書には採取ポイントが何ヶ所か書いてあったから、クエストはまあそんなに苦労はしないだろう。ステラ強いし。







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