3-5 次回は、何歌おう?
「ふぅ、食った食った」
「ごちそうさまでした」
「え? 二人とも早いよ」
リアが慌てたように声を上げる。オレが早いのは当然として、ステラ、食うの早いな……。まあ、リアはよくしゃべってたし、そりゃ時間もかかるわな。
「じゃあ次回のクエストは、仕事の前に二十階あたりで少しいろいろ試すって事でいい?」
「はい」
「おう」
どうでもいいが、サークルで飲み会とそれまでのヒマつぶしを打ち合わせてるようなノリだな……。一応命の危険があるんだぞ?
「ところでさ」
「ん? なんだ?」
「ルイっていろんな曲弾いてるけど、どうしてあんなにいろいろ思いつくの?」
「あ、それは私も聞きたいです」
お、意外な所に食いついてきたな。オレの話がどこまで理解してもらえるのかわからんが、聞きたいって言うなら話してやるか。
「そうだな、例えばリアの応援歌あるだろ?」
「うん」
オレと向かい合っているリアが、正面からオレの顔をみつめる。
「私、あの歌すごい好き」
うっ!? なぜ満面の笑み? カワいいじゃねーか!
「コホン、えーと、あれはだな、ロックっていうジャンルなんだよ」
「ろっく?」
「そう、ロック。オレもあんま考えてやってるわけじゃないけど、四拍子で結構速めのテンポで、ギター……竪琴を激しくギコギコやる感じかな」
「あー、そうなんだ。私あんな激しいの聴いた事なかったもん」
感心したようにリアが言う。
「で、ステラに歌ったのがバラード。まあ、ゆったりした感じってくらいしかわかんないけどな」
てかロックとかバラードって、説明しろって言われると難しいな。
「他にもいろいろあるぜ。ロックよりもっと激しいメタルとか。そうそう、こないだなんて中島がヴェルディのレクイエム? だかをメタルアレンジしたり、ノーザンオールメンバーズの歌を三拍子ジャズに謎改変したり……」
「へえ……ルイって、いろいろ知ってるんだね。すごいよ」
「ずい分あるんですね、勉強になります」
二人が口々にオレを褒める。ちょ、オレ褒められ慣れてないから超気恥ずかしいんだけど……。特にリアには。
「いや、今のはオレの友達の話だぜ? 次回はまたオリジナル書いてくよ。そうだな、演歌みたいなのもやってみるか」
「えんか?」
「ゆったりした曲で……あれ、バラードと何が違うんだ? ああそうそう、歌にコブシがあるんだよ。今度実演してやるよ」
「そうなんだ、おもしろそうだね」
「楽しみにしてますね」
なんだかんだで話が弾む。やっぱ女の子に音楽トークは鉄板なのかね。中島は女子にHR/HM熱く語って引かれてたけど。
「ね、そろそろデザート頼まない?」
「あ、いいですね!」
リアの提案にステラが反応する。てかすごい嬉しそうだな、おい。
「ルイも頼みなよ、おいしいよ」
そうだな、そうするか。てかそもそもデザート食いたいって言ったのオレだし。女性陣はすでにメニューをのぞいている。
「あ、タルトおいしそー」
「本当ですね、あ、クッキーもあります」
「へえ、アップルパイもあるのか」
「あとはお茶も頼もっか。あ、すいませーん」
リアが片手を上げて店員を呼ぶ。やってきたお姉さんにそれぞれ注文し、再び雑談……作戦会議を続ける。




