閑話 王都で盆踊り!?
関東の夏ほどじゃないけど、こっちもそれなりに暑くなってきた。
そんなある日の夜、オレたちはマンションでとあるイベントの準備をしていた。
なんでも話によれば、こっちの世界にも盆踊りっぽいイベントがあるらしく、今夜はみんなでそれに参加しようという話になったんだ。おにぎりも知られてない世界のくせに、こういう日本っぽいイベントはなぜかちゃんとあるんだよな。
というわけで、浴衣に着替えたオレは一階のロビーでみんなを待っている。この世界、浴衣もちゃんとあるんだね。
しばらく待ってると、向こう側から浴衣に着替えたアンジェラがやってきた。赤い浴衣が赤毛にマッチしてるね。
「おまたせ、ルイ君。もうすぐみんなやってくるわよ」
「おお、アンジェラ浴衣似合うじゃん」
「あら、お上手なのね。ありがと」
「アンジェラもいっしょに来るのか?」
「ええ。大人がついていないとね」
「オレたちそんなにガキじゃないと思うんだけど。ステラもセーラさんもいるんだし」
てか、元々オレも成人してるし。
「正直に言えば、私もみんなと踊りたいのよ」
「それならもちろん大歓迎だぜ」
「あ、みんな来たわよ」
アンジェラが向こうの廊下へと視線を向ける。
オレもそっちを見ると、着替えを終えたリアとベティちゃんが二人なかよくやってきた。
ほほー、リアは黄色、ベティちゃんは水色の浴衣か。なかなか初々しいね。
「ねーねー、どう?」
「よう、結構似合ってるじゃん」
「でしょう」
謙遜のケの字もなくリアが胸をはる。あいかわらず平坦だな。まあ、あんまりでこぼこしてない方が和装は似合うとか聞くけれど。その意味では、三人ともよく似合ってるよ。
「こういう格好も、たまにはいいものですね」
「ベティちゃんもよく似合ってるぜ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
やや顔を赤くしながらベティちゃんがもじもじする。顔立ちが整ってることもあって気品を感じるね。
「楽しみだねー、謝霊祭」
「ベティちゃんははじめてなのかしら?」
「ええ、いつもは眺める方でしたから」
「へえ、それじゃ初心者同士よろしくな」
「まあ、踊り自体はおぼえていますので、あなたと同じではありませんが」
「そ、そんなこと言うなよー」
「何言ってんの、あんたはいっつも踊ってるじゃない」
しょげるオレに、リアがあきれ顔で言う。まあ、そうなのかもしれないけどさ。
と、リアが向こうへと手を振った。
「おーい、こっちこっち~」
そっちを見ると、ちょうどステラとセーラさんが談笑しながらこっちにやってくるところだった。
って、デ、デカい! ステラさん、むりやり浴衣に詰めこもうとして胸のあたりがエロい、じゃなくてエラいことになってる!
さっきはああ言ったけど、やっぱ浴衣だろうがなんだろうが、デカいに越したことはないよな……。うへ、うへへ……。
とその時、オレの足に激痛が走る!
「い、いってぇええええぇ!」
「ルイくーん、キミは今いったいどこを見てたのかなー?」
「い、いや別に!? どこも見てないっすよ?」
オレの足をわらじでグリグリ踏みつけながら笑顔で問いただしてくるリアに、オレは思わず敬語で返事する。だって、リアやベティちゃんだけじゃなく、アンジェラまでなんかコワい目でこっち見てるんだもん……。
「みなさん、お待たせしました」
「おおー、さっすがステラ、ナイスバデーだね」
「そ、そんなことはありません……」
「いえ、素敵ですよステラさん」
表情を動かさず、セーラさんがリアに乗っかってステラをホメる。そういうセーラさんも超似合ってるね、紫の浴衣。モデルみたいな体型だから、浴衣がバシッと決まってるよ。
時間が少しかかったのはやっぱステラがおっぱい浴衣に詰めるの苦労したからなんだろうなーとか思いながら、オレはリアたちにバレないようにステラの胸元をチラチラ見る。やっぱいいものはいいよね。
と、アンジェラがオレたちに集合をかける。
「さて、みんな集まったことだし、そろそろ会場に向かいましょうか」
「おう、早く行こうぜ」
「さんせー!」
「今年はみなさんと参加できてうれしいです」
「私もです、ステラさん」
「わたしもこうして人と踊るのははじめてですから、少し楽しみですね」
「それじゃ行くわよ。はい、これみんなのうちわ」
「サンキュー」
さすがアンジェラ、こういうところはホント準備いいね。
全員の準備が整ったところで、オレたちは盆踊り的イベントの会場へと向かうことにした。うーん、祭みたいで楽しみだぜ!
シリアスな展開に入る前に、季節のイベントで少しなごみたいと思います。
一応本編とはパラレルな話ということになっています。
次回は盆踊り後編になりますので、どうぞお楽しみに!




