3-7 最強コンビ、マジでスゲえ!
オレが地震に足を取られ演奏が止まった瞬間を狙い、ドラゴンが巨大なカギ爪をセーラさんへ向かって振り下ろす。
「ヤバい!」
「きゃあああ――っ!」
「セ、セーラさん!?」
オレたちが叫ぶ中、ガッキイイーンと轟音が響き渡る。
思わず目を閉じたオレがおそるおそる目を開くと、そこにはセーラさんをかばうように立ちはだかるギュスターヴさんの姿があった。
「ギュ、ギュスターヴさん!?」
「大丈夫ですか!?」
リアとステラの声に、ギュスターヴさんが返事する。
「平気です、この程度でやられるほどヤワではありませんよ!」
カギ爪を剣で受け止めながら、ギュスターヴさんがそれを押し返そうとする。が、逆にじりじりと押しこまれていく。
「ル、ルイ、歌、歌!」
「お、おう!」
リアに言われ、オレはあわてて演奏を再開する。
とたんにギュスターヴさんがドラゴンの爪をぐいぐいと押し返し始める。や、やっぱオレの歌が効いてるのか!
「今です、セーラさん!」
「はい!」
爪を押し返されて胸部があらわになったドラゴンに向かい、セーラさんが腰を少し落としたかと思うと、文字通り矢のように飛び出していく。
「はあああぁぁっ!」
矢というよりもはやミサイルみたいな勢いで、セーラさんがドラゴンの胸目がけて突っこむ。
渾身の力で繰り出された槍は、アースドラゴンの頑強な肉体を突き破り、工事現場の破砕音のような轟音を立ててそのまま奥まで突き刺さる。
ドラゴンの胸にはトンネルでもできたのかというほど大きな穴が開き、緑色の液体が噴き出してきた。巨竜が苦しげなうめき声をもらす。
そこへすかさずギュスターヴさんが躍りかかる。やみくもに振り回される太い両腕を軽くさばきながら、セーラさんに目くばせする。
ギュスターヴさんのフォローで生まれたスペースにもぐりこむと、セーラさんは猛然と槍を連続で突きこんだ。
「ああああぁぁ!」
出た! セーラさんの必殺技! あのバカデカいドラゴンの胸部が、さっき開いた大穴を中心にみるみるけずられてく!
「食らいなさい!」
ベティちゃんが叫ぶと、暴れるドラゴンの左目に矢が突き刺さった! おお、ナイス攻撃!
ドラゴンは口から岩を吐いたり、シッポを払ってまわりのものをこちらへ投げつけたりと悪あがきを続けるが、ギュスターヴさんとステラがそれを防ぎ続ける。
そして、徐々にドラゴンの抵抗が弱まってきた。さすがにセーラさんの攻撃が効いてきたようだ。
「これで、トドメです!」
そう叫ぶと、セーラさんが一際深く踏みこむ。
そして繰り出された一突きは、ドラゴンの身体の奥深くへと突き刺さった。
地鳴りのような断末魔とともに、ドラゴンの動きがついに止まる。お、おお、あのバケモンをホントに倒しちまった!
「ス、スゲー!」
「た、倒したー!」
「まさか、本当に二人だけで……」
「お二人とも、大丈夫ですか!」
オレたちが口々に叫ぶ。ギュス様とセーラさんも、こっちに手を振ってくる。よかった、特にケガはないみたいだ。
って、ケガなしなのかよ! あんなデカいドラゴン相手に無傷とか、ホント人間じゃねえなあの二人!
ギュス様とセーラさんが、なかよく談笑しながら戻ってくる。
「それにしてもセーラさん、うわさ以上の槍の冴えでした。あのアースドラゴンにあれほど効果的にダメージを与えていくとは」
「とんでもないです。ギュスターヴさんの方こそ、その守りはまるで鉄壁のようでした」
いや、ホントスゴかったよね、二人とも。どっちかっていうとセーラさんは攻撃が、ギュス様は防御が得意なのかね。
こっちにやってきた二人に、オレたちが口々に賞賛の言葉をあびせる。
「二人とも、マジスゴかったっすよ!」
「セーラさん、まるでベティの矢みたいにビュンビュン飛んでましたね! カッコいいです!」
「ギュスターヴさんの剣さばき、私もとても参考になりました。すばらしいです」
「お二人とも、さすがは王都にその名を知られた最上位プレイヤーです。勉強になります」
「いえ、皆さんが後ろからしっかり支援してくれたからですよ」
「ギュスターヴさんの言うとおりです」
またまた~。あんたらマジで強いんだから、謙遜なんかいらないっすよ。
「でも、無傷とかマジスゴいっすね」
「それはルイさんの歌のおかげですよ。私もアースドラゴン相手にこれほどスムーズにケリがつくとは思いませんでした」
「そうですね。ルイさんの歌は、本当に身体が軽くなって力がわいてきます」
「セーラさんもですか? 私もなんですよ。やはりルイさんははかりしれない力の持ち主です」
「本当ですね」
いやいや、どう見たってあんたらが強すぎるだけっすから。あんまオレの話に持っていかなくていいよ、というか持ち上げないでよ、なんか変な感じがするから。
「でも、私たちアースドラゴンを倒したことになるんですよね……」
「そうだよね、倒したのは二人だけど」
「違います、私たちみんなで倒したんですよ」
「セーラさんのおっしゃるとおりです。リアさんとベティさんの牽制も効果的でしたし、ステラさんが後ろにひかえてくれていたから私たちも安心して戦えたのです」
「そして、何といってもルイさんの歌ですね」
そう言いながらセーラさんがオレの方を見る。
「そうですよね、私たちもルイさんの歌には助けてもらってばかりです」
「ですね、それは誰も否定できません」
「私もルイの歌にはなんだかんだでお世話になってるしね~」
お前らまでそんなにホメなくていいよ、あんまホメられるとなんかこう、背中がかゆくなってくるから。
でも、なんにせよオレたちあんな怪物を倒しちまったんだな。よーし、このまま石を集めてさっさと打ち上げといこうぜ!




