3-3 前門のセーラさん、後門のギュス様!
五十三階は、五十二階と同じく薄暗い洞窟だった。
違うのは、天井がえらい高いことだな。壁と壁の間の幅も広い。広さ的には五十階に近いな。デカいドラゴンもいるらしいし。
「今回はリアさんとステラさんがセーラさんといっしょに前衛へ出てください。ルイさんとベティさんは私が守ります」
おお、ギュス様がオレたちを守ってくれるのか。それは心強いな。
「わっかりました~!」
「りょ、了解です」
「よろしくお願いしますね、セーラさん」
前衛チームも仲よさそうだな。リア、迷惑かけんなよ?
「で、ギュスターヴさん、今日のクエストってどんなのなんすか? オレあんまよくわかってないんすけど」
「はい、今日は特訓をしつつ、蛍光石を集めたいと思います。高級な武具からインテリアにまで使われる、価値の高い鉱石です」
「それ、やっぱオレが持つんすか……?」
「そうですね、私たちで持つとしましょう。安心してください、そんなにたくさん手に入るものでもありませんから、動けなくなるほど重くはならないですよ」
「そ、そっすかー」
よかったー、石集めっていろいろトラウマなんだよね、オレ。ギュス様が手伝ってくれるんなら安心だな。
「そのまままっすぐ進んでください。まずはここから一番近い採取ポイントへと向かいます」
「はーい」
先頭をまかされたリアが、ギュス様に返事をする。
「ベティちゃん、足もとに気をつけろよ。このあたりも結構すべるから」
「なっ!? い、言われなくても転んだりなんてしません!」
顔を赤くしてベティちゃんがニラんでくる。この前のこと思い出したんだろうな。
「これだけ空間が開けていると、ベティさんも弓が使いやすいでしょう。しっかり前衛を援護してあげてください」
「はい、まかせてください」
ギュス様、さすがのアドバイスだな。てか、この人が後ろに控えてるってのが頼もしすぎだよ。
大船に乗った気分で、オレたちはダンジョンをどんどん進む。
で、しばらく歩いたところで。
前を行くリアがこちらを振り返る。
「敵はっけーん。みんな、気をつけて~」
剣を抜きながら、ギュス様が聞く。
「リアさん、どんなモンスターですか?」
「えっとですねー、なんかキモいのが四匹!」
「キモいのってなんだよ、それじゃわかんねーよ」
「うっさいなあ、今教えるってば」
どうやらステラやセーラさんにはまだ見えてないらしい。そこはさすが盗賊ってところだな。問題は見たものを正確に伝える能力がコイツにあるのかってことだけど。
「えーとですね、でっかいムカデが二匹と、おっきなハチが二匹です~」
「鋼鉄ムカデとキラービーですね。キラービーの攻撃は絶対に受けないよう気をつけてください」
「わっかりました~」
リアが軽い調子で言う。お前、ホントにわかってる?
セーラさんが指示を出す。
「鋼鉄ムカデは装甲が硬いので、私とステラさんで対処しましょう。キラービーはなるべく接近させないように気をつけて、リアさんとベティさんで倒してください」
「わかりました!」
ステラが大斧を構える。おお、毎度のことだけど、あれならどんな敵でもぶっ倒せそうだな。
で、オレたちにも敵の姿が見えてくる。
うわ、ホントキモいな。特にあのムカデ。デカいよ! 足がウジャウジャいってるし!
で、あの空飛んでるデカいハチがキラービーか。なんかヤバい毒でも持ってるのかな。ま、人間、スズメバチに刺されても死ぬ時は死ぬしな。
「キラービーは主にベティさんが担当することになりそうですね。よろしくお願いします」
「はい、まかせてください。こういう時のための弓兵です」
ギュス様の言葉にベティちゃんがうなずく。おお、頼もしい!
さて、オレも歌わないとな。
「じゃあ、オレはパーティーの応援歌歌うから! ギュス様とセーラさんも入った特別バージョン!」
「おお! ルイさん、ありがとうございます!」
「わざわざすみません」
セーラさんが軽く頭を下げる。いやいや、そんな大したもんじゃありませんって。
敵が迫り、セーラさんが槍を構える。うーん、オレ、セーラさん一人で敵全部倒しちゃいそうな気がするんだけど気のせい?
竪琴を構えながら、オレはひとつ気合を入れた。あのギュス様やセーラさんが気をつけろっていうくらいのフロアだからな。みんながケガしないよう、オレは歌できっちりサポートしてやるぜ!




