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2-14 あれ、そうだったの?





「ルイくーん! もう一回、もう一回!」

「ええ~、もうこれで四回目っすよ?」

 アンコールをせがむ王様に、オレもさすがにカンベンしてくれと訴える。

 オレが王様に作ってきた歌、ずいぶん気に入ってくれたらしい。それは嬉しいんだけどさ、おんなじ歌ばっかぶっ続けで歌うってのはちょっとなあ……。いかんせん王様のアンコールだから、みんなももうやめろとは言いにくいみたいだし。

 オレの様子に、マリ様とハルミさんが王様をいさめてくれる。

「お父様、ルイさんをあまり困らせないであげてください」

「そうですよ、陛下。何事も腹八分目でございます」

「え~……。うん、わかった~。ルイ君、ごめんね~?」

「いや、その、なんかすいません……」

 しょんぼりしょげかえる王様に、思わずオレも申しわけなくなってしまう。中年が肩を落とす姿って、なんかやたら悲哀を感じちゃうんだよ。

 みんなの拍手の中、席へ戻ると、とりあえず王様にお礼を言う。

「まあでも、王様に喜んでもらえてよかったっすよ」

「うん、サイコーだったよ! カッコよく作ってくれてありがとー!」

 オレもよかったよ、延々リテイクを要求されたりせずにすんで。

 席に着こうとしたオレは、ふと思い出してベティちゃんに聞く。

「そうだ、ベティちゃん、オレの歌どうだった?」

「どうって、陛下や殿下……マリ様がおっしゃった通りです」

「いやだから、ベティちゃんはどうだった?」

「ですから……すばらしいと思います」

 少し顔を赤くしてベティちゃんがもごもごとつぶやく。あいかわらず素直じゃないなあ。

「そっか、よかったぜ。なんせ前はオレの歌のことボロクソに言ってたじゃん」

「な……?」

 ビックリした顔のベティちゃんに、オレは少し小声でささやく。王様あたりに聞かれるとメンドくさいからな。

「ほら、前にモンベールで言ってたじゃん。オレのこと道化だとか、みんな王様の前だからホメてるだけだとか。だから、ベティちゃんはガマンして聴いてたりするのかなーって」

「そ、それは……全部間違いです、あなたの歌はすばらしいです。あの時は本当に申しわけありませんでした」

「ああ、いや、別にいいんだよ。みんなに合わせてるだけだったら悪いなーと思ってさ。遠慮せずに言ってくれよ?」

「そ、そんなことはありません! あの時は、カッとなってあんなことを言ってしまったのです。どうか忘れてください、お願いします」

「ああ、わかったよ。悪かったな、変なこと聞いて」

「いえ、こちらこそお詫びが遅れてしまいすみません……」

 そう言ってうつむくベティちゃん。なんだ、そうだったのか。実はみんなホントに王様の前だからしかたなくホメてるのかと思ったりもしてたんで、それを聞いてホッとしたぜ。

「なになにー? ナイショの話ー?」

「なんでもないっすよ」

 ああよかった、首突っこんでくるのが話が終わったタイミングで。

 王様に返事すると、オレは元の席に戻った。




 それからは、みんなでおやつを食べながらいろいろと雑談をする。

「ベティさん、パーティーはいかがですか?」

「はい、とても勉強になっております」

「ベティが入ってからは、空の敵も楽々倒せるようになったんですよ~」

「まあ、さすがの腕前ですね。それでは次の弓術大会、目標は優勝ということになるのでしょうか」

「は、はい、次回はぜひ勝ちたいと思っています」

「そうですか。楽しみにしてますよ」

 へえ、優勝が目標か。スゲえな。でも、今のベティちゃんならできるんじゃないか? フサじいとかいう元Sランクにもホメられてたらしいし。

 続いてマリ様がセーラさんに声をかける。

「セルヴェリアさんとははじめてお会いしますね。これからよろしくお願いしますね」

「こ、こちらこそ……お招きいただき光栄です」

「そんなに固くならなくていいんですよ。お名前はセーラさんとお呼びした方がよろしいですか?」

「は、はい、お願いします」

 よかった、マリ様もセーラさんの話してることがちゃんと聞き取れてるみたい。後ろにひかえてるメイドさんたちは、セーラさんがしゃべるたびになんか真っ青になってるけど……。

「セーラさんのおうわさはかねてよりうかがっております。シティギルドでも最高の使い手としてその名が知れ渡っているそうですね」

「そ、そんなことは……恐縮です」

「いいのですよ。そんな方に『夜明けの詩』に参加していただけて、私はとても嬉しく思っています」

「と、とんでもありません。こちらこそ、私などをパーティーに加えていただいて感謝の言葉もありません」

「いえいえ、オレらみんな大感謝っすよ」

「そうですよ~、とっても頼りになります~」

「私も、セーラさんの戦いぶりは大いに参考にさせていただいてます」

「セーラさんがいらっしゃると、わたしたち後衛も安心して戦うことができます」

 口々に言うオレたちを見て、マリ様がセーラさんにほほえむ。

「よい仲間に恵まれましたね、セーラさん」

「はい……!」

 表情は動かないけど、セーラさんのほっぺがちょっと赤くなってる。あ、これはだいぶ喜んでるな。


 その後もマリ様の質問に、オレたちがあれこれと答えていく。あいかわらず答えやすい質問してくれるぜ、マリ様マジコミュ力高い!

 たまに王様の暴走もまじりつつ、オレたちはサイコーのお茶会を楽しんだ。





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