3-3 私、こんなに受け取れません!
「さて、それでは……」
一つせきばらいをすると、おもむろにリアがティーカップを手に取る。
「新メンバーが増えた事を祝して……」
顔の高さまで上げて音頭を取る。
「かんぱーい!」
「おう」
「ふふっ」
みんなで乾杯。さすがにティーカップだからか、コツンとぶつけたりはしないが。てか、普通こんなカップで乾杯ってするもんなのかね。
「さーて、それじゃさっそく作戦会議しましょうか」
「おう」
「っと、その前に……」
そう言うと、リアはふところから小銭袋を取り出した。
「ああ、そうだった」
オレも荷物から袋を取り出す。今朝リアに言われて家から持ってきたやつだ。
「これ、この前のクエストの報酬だよ」
「合わせて100リルあるぜ」
「えええ!?」
目の前に差し出された小銭袋に、ステラが驚きの声を上げる。
「あ、やっぱ銀貨の方がよかった? それとも少なすぎる?」
「いえ! そんな!」
慌てて否定するステラ。
「私、こんなにいただくわけにはいかないです!」
「あ、そっち?」
申し訳なさそうな顔をするステラに、リアが事も無げに言う。
「いいんだよ、お仕事したんだし」
「ダメです、私石を運んだだけですし!」
「それ言ったら、ルイも石運んだだけだよ?」
「確かにそうですけど……」
おい! サラッとオレをディスんな! ステラも納得すんなよ!
「とにかくこれは、いただくわけにはいきません。すみません」
意外とかたくなに受け取りを拒否するステラ。結構頑固なのな……。う~ん、どうしよう……。
「あ、わかった!」
「え、何が?」
「今日の支払い、これでしようぜ!」
そう言いながら、小銭袋を手に取る。
「え?」
「そうすれば、ステラがオレたちにおごったようなもんだろ?」
「いや、ステラのお祝いで私たちがおごられちゃダメでしょ!」
「いいんだよ、どうせこのままじゃステラに受け取ってもらえないだろ?」
「まあ、そうだけどさ……」
「あ、あの!」
しばらく目を白黒させていたステラが口を開いた。
「それじゃ結局皆さんにおごらせてしまってますよね?」
「だからそれはいいんだってば。本来ステラの歓迎会なんだから、私たちがおごるのは当然なんだし」
「でも、私さっきトマトソース頼んじゃいました……」
「じゃあ100リルで収まらない分をステラが支払ってくれればいいさ。これで文句ないだろ?」
「でも……」
「よし、じゃあそれで決まりだな! どうしてもイヤって言うなら、ちゃんと100リル受け取ってもらうけどいいのか?」
ずいっと袋を差し出すオレに、さすがのステラも観念したようだ。少しためらった後、ペコリと頭を下げる。
「わかりました。それでは食事の支払いに使ってください」
「おお、わかってくれたか」
「たまにはルイもいい事言うね」
たまには余計だっつうの。
「そ、それじゃあ皆さんじゃんじゃん頼んでくださいね! ちゃんと100リル以上食べないとダメですよ!」
「お、ステラ、わかってきたね。それじゃあ私、砂糖とミルクもらっちゃおうかな?」
「それよりオレは食後のデザートがほしいね」
「あ、私もそっちにしようっと」
そういやこっちに来てから甘いモンって食ってないしな。ちょっと楽しみだ。
「で、これからの報酬の分け方なんだけど」
リアが切り出す。
「私としては、わかりやすく三等分がいいかなと思うんだけど」
「ステラはレベルが高いから、それじゃ足りないかと思ってよ」
オレたちの提案に、やや慌ててステラが答える。
「足りないなんてそんな! 気にしないでください!」
「あ、ホント?」
お、どうやらすんなり収まりそうだ。
「むしろ、新入りの私が皆さんと同じ額をもらっていいんですか……?」
「いいに決まってるよ! ステラはそれ以上の働きをしてくれるんだし!」
「そういう事だ。期待してるぜ」
お、今のオレのセリフ、ちょっとカッコよくね?
「一番使えないルイが、なーに気取ってんのさ」
ですよねー。って、オマエには言われたかねーよ!
「ちなみにさ」
リアが興味ありげにステラに聞く。
「ステラは今までクエストでどのくらい稼いでたの?」
「え、私ですか?」
ステラが口にしていた紅茶をテーブルに置く。
「私、今までソロプレイだったのであんまり難しい仕事はやってなかったんですけど……」
「ふんふん?」
リアが身を乗り出す。コイツ、こういう下世話な話好きなのね。
「だいたい一回のクエストで1000リルくらいです」
「高っか!」
思わず声をそろえるオレたち。おいおい、オレらなんて最近でさえ一人あたり200~300リルくらいなんだぞ?
「月に五回くらい働いていたので、一月で5000リルくらいでしょうか」
……報酬、ホントに三等分でいいんだろうか。




