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2-12 王様に文句言ってやる! ……って、あ、あれ?





 席に着くと、メイドさんたちがおやつやら飲みものやらをいろいろと持ってくる。おお、今日のおやつもウマそうだぜ。

 と、突然王様が大声を上げた。

「ああーっ! 忘れてたー!」

「うわっ!? なんすか、王様!?」

「まだそっちの子にちゃんと自己紹介してなかったー!」

 そう言って、王様がセーラさんの方を見る。ああ、そういえば初対面なのか? さっき王様が乱入した時にあいさつだけしてたと思うけど。

 立ち上がると、王様は声を張り上げて自己紹介する。

「はじめまして! 僕はアンリ、この国の王様をやっています! これからよろしくね!」

 セーラさんも、無表情ながら少しあわてた様子で立ち上がる。ビシッと気をつけすると、腰からしっかりとお辞儀した。か、かっけえ! お辞儀がこんなにカッコいい人、オレ見たことねーよ!

「こ、国王陛下におかれましてはごきげん麗しゅう存じます。私はシティギルド所属、セルヴェリアと申します。希代の名君と誉れ高き賢王アンリ四世陛下に拝謁する機会を賜り、まことに恐悦至極に存じます」

「あー、いーよいーよそういうのは。ルイ君みたいに気軽にやってよー」

「は、はあ……」

 そうそう、オレみたいに……って、オレ、もしかして無礼っすか!? す、すいません……。

 ぽかんとするセーラさんに、ステラが何かを耳打ちする。きっと、王様の扱いのコツでも教えてるんだろうな。

「セルヴェリア……セーラちゃんでいい? セーラちゃんってスゴい強いんでしょ? うわさでそう聞いてるよー!」

「きょ、恐縮です。一応Aランクの冒険者として登録させていただいてます」

「セーラさん、すっごく強いんですよー! こう、ドラゴンをドカーンって一発でやっつけちゃうんですから!」

 リアが横からセーラさんのスゴさを説明する。うんうん、マジで強いよな。

 王様もうれしそうにうんうんとうなずく。

「そっかー! それじゃセーラちゃん、僕と一本勝負しようよ!」

「え?」

「僕、とっても強いんだよー! なんてったって、昔は剣皇けんおうアンリって呼ばれてたんだから!」

 あー、また始まったよ、王様の病気が。やめとけって、マジで死ぬから。

 立ち上がろうとする王様を、ハルミさんが頭から押さえこむ。

「そんなことより、セルヴェリア様のお話をうかがった方がよろしいかと思いますが」

「う、うう……。セーラちゃん、『夜明けの詩』は楽しい?」

「はい、それはもう」

 セーラさんがちょっとだけ表情をゆるめる。おお、そう言ってもらえるとなんかうれしいね。

「臣も次回のクエストでセーラさんとごいっしょさせていただく予定です。今から楽しみにしております」

「えー! いいないいなー! 僕も行くー!」

 ヤだよ! なんで王様のお守りまでしなきゃなんないんだよ!

 ジタバタしていたかと思うと、ケロッとした顔で話を変える。

「そうだ! みんな、ニコちゃんはどうだった?」

「ああ、それそれ!」

 オレは語気を荒げて王様をニラんだ。そうだよ、それ、文句言ってやりたかったんだよ!

「何がキュートでプリティーだよ! 筋肉ダルマのジジイじゃねーか! 変な期待させんじゃねえ!」

「えー!? 僕間違ったこと言ってないよね? キュートでプリティーだったでしょ?」

 納得いかないって顔で、王様がリアたちの顔を見る。あ、ずっり! まわりを味方につけるつもりかよ!

 リアたちも、どこか冷たい視線をオレに向けてくる。

「仮にキュートでプリティーな女の子だったとして、それがどうだってのさ」

「ニコちゃんは十分にキュートでプリティーなお方だったと思いますが」

「陛下のお言葉の通りのお方でした」

「え、えーっ!?」

 じいさんに会ってないセーラさんをのぞく全員が、王様の味方につく。えー!? おかしいだろ、それー!

「そっかー! よかったよかった! ニコちゃん、腕はにぶってなかった?」

「とんでもない! 信じられないほどのお力でした!」

「セーラさんと同じくらい強かったですよー!」

「え、セーラちゃんってニコちゃんくらい強いの? それはスゴいねー!」

「なんともうらやましい……。臣もぜひニコラウス猊下のおともをさせていただきたいものです」

「オッケーオッケー、今度僕がセッティングしておいてあげるよー」

 なんか、オレをおいてけぼりにして話が盛り上がっていく……。てか、王様もうオレの歌のこと忘れてない? 聴きたいんじゃなかったのかよ……。

「ところでルイさん、以前お話した、私の歌の件なのですが……」

「は、はいはいっ!」

 マリ様、おぼえててくれてた! マジ天使!

「もちろんできてます! 今日は歌を聴いてもらうためにやってきたって言っても過言じゃないっす!」

「まあ……ありがとうございます」

 少し顔を赤らめてマリ様がほほえむ。うおお、カワイイ!

 遠慮がちに、上目づかいに、マリ様がオレに聞いてくる。

「そ、それでは……さっそく聴かせていただいてもよろしいでしょうか……」

「喜んで! マリ様のためなら、全力で歌わせていただきます! ……げほ、げほっ」

 興奮のあまり絶叫して、そのまま少しせきこんでしまう。ふっ、ちと我を忘れてしまっていたぜ。

 でも、ようやく披露する機会がやってきたぜ。マリ様、聴いてくれ。オレの渾身の一曲を!





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