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2-11 さ、さすがマリ様……!




 マリ様が待つ部屋に到着し、オレも思わず胸がドキドキしてくる。ひ、ひさしぶりで緊張するぜ……。

 ウェインさんが扉を開いてオレたちを部屋の中へと招いてくれる。

「さあ、皆さん、どうぞ」

「やっほー! マリちゃん、みんなを連れてきたよー!」

「お、おじゃまします」

「し、失礼しまーす……」

 大声を上げる王様に続き、オレたちも中へと入る。

 いつもの『夏の間』とは違い、今日の部屋は少し落ち着いたフインキだ。なんか、部屋の片隅でクラシックの四重奏とかやってそうな感じ……。

 ああ、そうか、オレが新曲作るって言ったからそれ用の部屋にしたのか。微妙にプレッシャーだな。

 日当たりのいい部屋には何人もメイドさんがひかえ、奥の方に大きな長方形のテーブルがある。

 そして、その奥の席にはあいかわらずキレイなオレたちの王女様が座っていた。うおお! やっぱマリ様カワイイぜ!

 オレたちが入ってくると、マリ様が立ち上がって微笑する。

「皆さま、お待ちしておりました。どうぞこちらへおかけください」

「こ、こんにちは! おひさしぶりっす!」

「こ、こんにちは!」

 オレたちも次々にあいさつする。

「今日はわざわざお越しいただいて、本当にありがとうございます」

「いえいえ! こちらこそ呼んでくれてありがとうございます!」

 そんなことを言いながら思い切り頭を下げる。

「あら?」

 頭を上げると、マリ様が意外そうな顔でベティちゃんを見ていた。

 彼女が口を開こうとする前に、マリ様がにっこりとほほえむ。

「おひさしぶりです、エリザベート様。この前のお茶会以来ですね」

「は!? はい、おひさしゅうございます殿下!」

 いきなり名前で呼ばれ、あわてて返事するベティちゃん。え? マリ様、知ってたの?

 リアも同じことを思ったのか、思わず質問する。

「あ、あの、マリ様はもうベティのことご存知だったんですか?」

「ベティ? ああ、皆さんのお仲間ですよね。え? エリザベート様がそのベティさんだったのですか?」

「い、一発で見破ってたぁ――!」

 オレとリアが異口同音に叫ぶ。やっぱわかる人にはわかるのか!

「よ、よくわかりましたね、ベティちゃんがエリザベート様だって」

「それはそうですよ。お友だちのお顔はおぼえておりますから。エリザベート様とは幼いころから仲よくさせていただいておりますし」

「で、ですよね……」

「も、もったいないお言葉です……」

 感極まったと言わんばかりの顔で、ベティちゃんが頭を下げる。

「で、殿下、わたくし、殿下に身分を偽っておりました。赦されないことであるのは承知しておりますが……」

「あら? いったい何がですか? あなたはエリザベート様でしょう?」

 ベティちゃんの言葉をさえぎるように、マリ様が続ける。

「その姿とベティという名は、冒険者としてのあなたなのでしょう? 別に問題などありませんよ」

「で、ですが……」

「それに、そのご様子ですとすでにお父様と同じようなやり取りをなさっているのでしょう。でしたら、その話はもう解決済みですよ」

「殿下……ありがとうございます、嘘をついて申しわけありませんでした!」

 うんうん、今度は素直に言えたな、ベティちゃん。マリ様もお心が広いぜ。

 と思った矢先、急にマリ様が眉間にしわを寄せてベティちゃんに迫る。え!? やっぱ怒ってた!?

「ところでエリザベート様……ベティさん」

「は、はい!」

 ベティちゃんもビクッとして気をつけする。

 マリ様は若干不満そうな表情でベティちゃんをみつめる。おおっ、こんな時になんだが、フキゲンそうなマリ様もカワイイ!

「ルイさんのパーティーのメンバーには、私のことを名前で呼ぶようにお願いしています。あなたが『夜明けの詩』のメンバーであるならば、ちゃんと名前で呼んでくださいね? ベティさん」

「は……はい! マリ様!」

 ああ、そういうことか。マリ様も、彼女のことをベティちゃんとして扱うつもりなのね。

「ねーねー、もう座ろうよー! 早くルイ君の歌聴きたいよー!」

 しびれを切らしたのか、王様がジタバタとダダをこねる。うっせえな! アンタはおやつもガマンできないダダっ子かよ!

「あー、はいはい。ちゃんと歌うから安心してくださいよ」

「ホント!? やったー!」

 やれやれとオレが席に着くと、王様がバンザイして喜ぶ。ホント自由なオッサンだな……。

 へへっ、オレはちゃっかりマリ様の真向かいをゲットしたぜ。ま、元々ここがオレの席っぽかったんだけど。これで王様がマリ様の隣じゃなきゃカンペキだったんだけどな……。

 オレの両隣にはいつものようにリアとステラが、さらにその隣にはベティちゃんとセーラさんが座る。

 マリ様たちの方は、席を一つ空けてギュス様とウェインさんが座った。王様の真後ろにはメイドのハルミさんが立っている。ま、いつも通りの配置だな。

「よーし! それじゃさっそく、パーティーを始めましょー!」

 王様がノリノリで宣言する。よっぽど楽しみだったんすね、王様。

 もちろん、オレもチョー楽しみだったぜ! よっしゃ、今日はマリ様のために、いっちょ命がけで歌ってやるか!





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