2-10 久々に、マリ様と会える!
ふう、いきなり王様が来た時にはどうなることかと思ったけど、どうやら無事に切り抜けられたっぽいぜ……。
ベティちゃんも無事王様に正体打ち明けることができたし、これでもう心配ごともなくなったかな。
オレたちがベティちゃんを囲んでワイワイやってると、王様もこっちにやって来る。
それから、ニコニコしながらだいぶさみしくなってきた自分の頭を指さした。
「ベティちゃん、それはつけたままでいくんだねー」
「はっ!?」
どうやらカツラをつけてることをすっかり忘れてたらしい。あわててはずそうとするベティちゃんを、王様がいいよいいよと止める。
「みんなといっしょの時はベティちゃんとして活動してるんでしょ? だったら普段通りでいいよ! いちいちつけたりはずしたりするのも大変でしょ?」
「し、しかし……いえ、それではお言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます」
何か言おうとしたベティちゃんが、思い直したように王様のすすめにしたがう。うんうん、ずいぶんと素直になったな、ベティちゃん。
と、王様がまたデカい声を上げる。
「さて皆さん! そろそろ僕の部屋に行きましょー! マリちゃんも待ちくたびれているころなのです!」
「おお!」
そうだ! この後マリ様に会えるんじゃん! テンション超上がる!
歓喜の雄叫びを上げるオレに、リアが冷たい視線をぶつけてくる。
「なに、あのテンション……」
う、ステラも心なしか冷ややかにオレを見つめてる気がするな……。こいつら、なんでオレがテンション上がると怒るんだよ……。
ち、ちなみにセーラさんは……いつも通りの無表情か……。
「それではさっそく行きましょー! ギュス君、ウェイン君、案内をよろしくなのです!」
「御意」
王様のテンションに引きずられることなく、ギュス様とウェインさんがうやうやしく扉を開いてオレたちを先導する。
「リシュリューさんは来ないんすか?」
「ああ、俺は仕事があるからな。こう見えても忙しいんだぜ?」
「わかってるっすよ」
いくらオレでも大将軍様がヒマじゃないくらいのことはわかるよ。軍務大臣だかも兼務するらしいし。
「それじゃリシュリューさん、オレら失礼しますね」
「失礼しま~す」
「おう、楽しんでこいや」
そう言いながら手を上げるリシュリューさんにあいさつすると、オレたちは隊長室を後にした。
あれこれと雑談しながら、オレたちは廊下を歩く。
「ギュスターヴさん、調査隊長のお仕事はどうですか~?」
「ええ、そちらは今までの仕事の延長なので問題ないのですが、新たに就任した文化科学庁長官の仕事が大変でして……」
「それは大変ですね」
あー、なんかこうして見てると、ギュス様ナチュラルに女はべらせてるように見えるわ。別にいいけどさ。
「次の大将軍にはギュス様がなるんすか?」
「どうでしょう。レナード卿もいらっしゃいますから」
「あれ? でも、調査隊長の方がエラいんじゃないんすか?」
「調査隊長と近衛隊長は同格なんですよ。ですので、年次が上の者が格上になります」
「へー」
なんかややこしいんだな。てことは、今はリシュリューさん、レナードさん、ギュス様の順番でエラいのか。軍のナンバー3とか、なんかカッコいいな。
ステラがギュス様に話しかける。
「ギュスターヴさんは、中央ギルドから正式に軍に移られたんですよね」
「はい。調査隊長にもなりましたし、仕事も忙しくなりましたので。まあ、ここ最近はギルドにはほとんど行ってませんでしたしね」
へー。そういや、剣聖のレナードさんも元中央ギルドだっけか。我らが拳王サマも中央ギルドにいたらしいし、やっぱスゴいのね、中央ギルド。
と、突然王様が振り返ってオレに迫ってきた。
「そうだ! ルイ君、僕の歌できた?」
「え? ああ、はいはい。ちゃんと作ってあるっすよ」
てか、作んないとうるさいじゃん、アンタ。
それを聞いて、王様がガキんちょみたいに喜ぶ。
「やったー! 後で聞かせてね? ね? ね?」
「わかってますって! ちゃんと歌いますよ!」
ああもう! あいかわらずメンドくさいオッサンだな!
そうこう言ってる間に、部屋に着いたみたいだ。ウェインさんが扉の前で止まる。
部屋の中と何やらやり取りすると、ウェインさんがオレたちに言った。
「それでは皆さん、殿下がお待ちです。どうぞお入りください」
うおおお! 久しぶりにマリ様に会えるぞ! オレも気合入れて歌作ってきたし、ここはいっちょいいとこ見せたるぜ!




