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2-7 久々に、城へ!





 今日は久々に城に行くことになった。

 なんでも、王様がじいさんがパーティーに入った感想を聞きたいんだとさ。

 ま、オレ的にもちょうどいいかもな。前々から作ってたマリ様のための歌、ようやくできたところだし。あと、一応王様のも。

 で、一階のロビーでくつろいでるオレたちは、ベティちゃんがやってくるのを待ってるわけだけど……。

「ベティ、大丈夫だったのかな……?」

「ま、まあ、大丈夫なんじゃないか……?」

 オレとリアは、ステラに聞こえないようにひそひそと話していた。この前、例の説教に出かけてたからな、ステラ……。

 そのステラは、セーラさんと何やら楽しそうに話しこんでる。ホント仲がいいよなあ、あの二人。

 ギルドに向かう住人の皆さんにあいさつしたりとかしていると、入り口に小さな人影が見えた。

「あ、ベティ。おはよ~」

「お、おはようございます」

 壁からこちらをうかがうように、ベティちゃんが顔を出す。

 それに気づいたステラが、立ち上がってベティちゃんにあいさつした。

「おはようございます、ベティさん」

「お、おはようございます!」

 ビシッと気をつけすると、ベティちゃんが妙に体育会系のあいさつをする。あー……。こりゃ、よっぽどしぼられたんだな……。基本強気でプライドの高いベティちゃんがここまで怯えるなんて、ステラいったいどんな説教したんだ……?

「ま、まあ、それじゃみんなそろったことだし、そろそろ城に行くか」

「そだね、あ、ベティはなんか飲んでく?」

「い、いえ、大丈夫です」

 若干こわばった表情で遠慮するベティちゃん。ああ、こりゃ重症かもな……。

 ちょっぴり心配しながら、オレたちは城へと向かった。






 城が近づくにつれ、今日は口数が少ないベティちゃんのセリフがさらに少なくなっていく。

 例によって、オレはリアとひそひそ会話する。

「ベティちゃん、大丈夫かな」

「多分さ、ステラのこともそうだけど、王様たちに会うのがストレスなんじゃないのかな」

「あ、そっか」

 今まで身分隠してたんだもんな。王様にウソつくとか、ベティちゃん的には死刑レベルの罪なのかも。

「あの王様がそんなことで怒るとは思えないけどな……」

「王様はそうでも、ベティ的には気が気じゃないんじゃない? ほら、正体バレた時だって自分を罰しろってガンコだったし」

「あー、たしかに。王様の前で同じこと言い出したら面倒だな」

 チラッとベティちゃんの顔を見ると、オレはリアに耳打ちする。

「てかさ、王様に対する罪のわび方って死刑以外にあんの? ベティちゃん的に」

「げっ、ひょっとしたらベティ、王様の前で死んでわびるとか言うつもりなのかな? 顔つきもやたら神妙だし」

「さすがにそれはないと思うけどな……」

 てか、思いたいけどな。でもあの子のことだからなー、どうだろうなー。

 そんな不安をいだきながら、オレたちは城へと向かった。






 城に着くと、いつもの門番さんに中へと入れてもらう。

 城の入り口では、ウェインさんが待っていた。

「こんにちは~、結構久しぶりですね」

「これは皆さん、お待ちしておりました」

 ぺこりと頭を下げると、ウェインさんはオレたちを城へ招き入れる。

 で、いつものようにウェインさんについていくと、もうすっかりおなじみの部屋までやってきた。

「まずは大将軍とギュスターヴ卿がお待ちです」

「大将軍?」

「ほら、前言ってたじゃん。リシュリューさんが大将軍様になったって」

「ああ、そういやそうだったな」

「もー、この前就任式にも呼ばれたじゃん。しっかりしてよ~」

「わ、わかってるよ」

 まだ慣れないんだよ、オレそういうのに疎いし。

 ノックして中に入ると、見慣れた二人がオレたちを出迎えた。

「よう、就任式以来だな」

「ども、お久しぶりっす」

「お久しぶりです」

 あいさつをすませると、リシュリューさんがベティちゃんにウィンクする。

「やっと言えたみたいですね、エリザベート様」

「は、はい……」

「え? リシュリューさん、知ってたんすか?」

「聞いたのはついさっきだけどな。ま、初めからわかってたぜ」

 それを聞いて、ベティちゃんが顔を赤くしてうつむく。すげえなオッサン、あっさり見抜いてたのか。

 と、ギュス様が驚いた顔でリシュリューさんとベティちゃんの顔を交互に見る。

「え? え? どういうことですか?」

「あのな、ここにいるベティは、ベルフォード公爵令嬢のエリザベート様なんだよ。つーか、お前も最初ベティ見た時におや? って思っただろ?」

「そ、そうだったのですか!? どうりでどこかで見たことがあると思ったわけです!」

 あ、あれはナンパじゃなくてそういうことだったのね……。ギュス様、勝手にチャラ男って決めつけてごめんなさい。

 ベティちゃんが、二人に向かい頭を下げる。

「お二人とも、今まで隠していて申しわけございません。これまでの非礼、どうかご容赦いただければと……」

「あー、そういうのはいいですよ。な、ギュス?」

「ええ、もちろんです。別にそれによって何か問題が起こったわけでもありませんし」

「で、でも、何もなかったからといってお咎めなしでは……」

「大丈夫ですよ、その分俺がクエストできっちりみっちりこき使ってやりますから」

 リシュリューさんがニヤリと笑みを浮かべる。じゃ、邪悪だ! この人、絶対よからぬこと考えてるよ!

「てか、それってもしかしてオレらがこき使われるってことっすか?」

「そういうことになるな。ま、連帯責任だと思ってあきらめろや」

 えー!? そんなー! だって、アンタ絶対遠慮なくコキ使いそうじゃん!

「そ、そんな! 罰ならわたしが一人で……」

「いや、それは気にすんな! オレら仲間なんだし!」

「いいんですよ、ベティさん。リシュリューさんもお考えがあってああおっしゃっているんでしょうし」

「そーそー、私らいつもいっしょでしょ?」

「み、皆さん……」

 おお、なんかちょっといい話みたいになってるな。セーラさんとギュス様もうんうんとうなずいてるよ。

「おいギュス、何ひとごとみたいにうなずいてんだ。面倒見るのはお前だぞ」

「え? 私ですか?」

「当たり前だろ、このタコ。ギルドとは別枠で、特別調査団としてのパーティーにはお前も入ってるだろが。お前、ちゃんとこいつらのおりしてやれよ?」

「そ、そうでした! 皆さん、この私が皆さんをおまもりしますから、大船に乗ったつもりでいてください!」

 ギュス様はあいかわらずマジメだね。この人といいベティちゃんといい、少しはリシュリューさんを……いやダメだな、このオヤジはマネするにはいろいろ危険すぎる。

 そんなギュス様にハハハと笑うと、リシュリューさんはベティちゃんにニヤリと笑いかけた。

「そういうわけで、普段は冒険者のベティとしてお前さんを扱わせてもらうぜ。文句はないな?」

「はい、よろしくお願いします」

 ベティちゃんがぺこりと一礼する。ほっ、これでここは大丈夫か。

 はあ、でもこの後は最大のイベントが待ち構えてるんだよなあ……。ベティちゃん、王様の前で妙なこと口走らなけりゃいいんだけど。

 そんな不安をかかえながらも、オレたちはしばらくの間ギュス様やリシュリューさんと語り合った。




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