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2-5 本気で、オレたちにあやまれよ!




 目のまわりを真っ赤にはらして、立ち上がったオレを見上げるベティちゃん。オレがどんな条件を出してくるのか不安そうな目をしてる。

 リアとステラもハラハラしながらみつめてくる。三人の視線を浴びながら、オレは口を開いた。

「条件は一つだ。ベティちゃん、モンベールでリアとステラをバカにしたことと、オレたちをだましてたこと、オレがいいって言うまであやまれ! そしたらオレは今までのこと全部ゆるしてやる!」

「え……?」

 ベティちゃんが、驚いたような顔でオレを見る。

 それから、遠慮ぎみに聞いてきた。

「あ、あの……そんなことでいいのですか?」

「そんなこととはなんだ!」

「ご、ごめんなさい。でも、わたくしはとてもゆるされないことをしてきたのです。除名はもちろん、この場で指をつぶして冒険者として活動できなくしたり、今後賠償金を支払い続けるくらいのことは覚悟しているのですが……」

「はあ?」

 オレだけじゃなく、リアもあきれたように声を上げる。

「あのねえ、私たちがそんなことするわけないじゃん。そりゃ私も、あの時はビンタの一発くらいはしてやりたいと思ってたけどさ」

「そうだぜベティちゃん、だいたいそんなことやってもオレたちに得なんて全然ないじゃん。せっかくのAランク級弓兵を失うわけにはいかないし。金ならこれからいくらでも稼げるしな」

 そう言って、オレはベティちゃんをまっすぐみつめた。

「それに、オレはいいって言うまであやまれって言ったからな。簡単にはゆるさないからな。覚悟しろよ、ベティちゃん」

「は、はい……」

 うなずくベティちゃんに、オレもうなずき返す。

 ベティちゃん、単にゆるしてあげるって言ってもずっと気にするだろうからな。こうしてしっかりあやまる場を与えた方が、彼女も性格的にすっきりするだろう。

 というわけで。

「それじゃベティちゃん、きっちりあやまってもらおうか」

「はい……」

 深呼吸すると、ベティちゃんが正座しなおしてオレたちに向き合う。

「皆さんを馬鹿にしたこと、今まですっと嘘をついていたこと、すみませんでした……」

「声が小さい! もっと大きな声で!」

「す、すみませんでした!」

「もっと!」

「すみませんでした!」

「もっと!」

「すみませんでしたぁ!」

 オレの声に、ベティちゃんも負けじと声をはりあげる。

 オレもすぐにゆるすわけにはいかない。彼女の声に、オレも必死に声を返した。

 こ、これ、意外とキツいぞ……。いや、ここで負けちゃダメだ、オレもがんばらないと。




 しばらくそんなことを繰り返した後、オレは息を切らせながら、同じく息を切らせるベティちゃんに声をかけた。

「ぜえ、はあ……。どう? ベティちゃん。少しはすっきりした?」

「ええ……」

 けほっ、と一つせきをしてから、ベティちゃんが聞いてきた。

「まだたりませんよね、わたくしはまだいけます」

「そうか、それじゃ次で最後にしてくれよ」

 オレの言葉に、ベティちゃんはすう、と息を吸った。

「皆さん、すみませんでしたぁぁぁ!」

「おっしゃ! オレはもうゆるしたぜ!」

 オレはぐいっと親指を立てて右腕を突き出してみせた!

「ベティちゃん、これで吹っ切れた?」

「え、ええ……。でも、わたくしはまだお二人にもつぐないをしなくては……」

「何言ってるのさベティ! 今のは私たちみんなに対しての謝罪でしょ? もちろん私もゆるしてるよ」

「そうです、これほど真剣にあやまっていただいたら、これ以上求めることなんてありません」

「で、でも……」

「くどいぜベティちゃん。さっきので十分だろ。最初に言った通り、これで全部おしまい、これからもよろしくだぜ!」

「そうそう! 期待してるからね!」

「私はあなたが成長していてくれてとても嬉しいです。頼りにしてますよ」

「み、皆さん……」

 また泣きそうになるベティちゃんの肩を叩く。

「ほら、もう泣くなよ! まだクエストがあるんだからさ!」

「は……はい!」

 よし、これでなかなおりだ! きっとベティちゃんも吹っ切れたはず!

 しばらくみんなでわいわいと笑い合っていたが、ふとリアと目が合って、お互い何かを思い出したかのように笑顔が固まる。

 それから、おそるおそるベティちゃんに声をかけた。

「あ、あの~……」

「ところで……」

「はい、なんですか?」

 不思議そうに首をかしげるベティちゃんに、オレたちは聞いた。

「オレたち、これからも今まで通りに口きいていいんですかね……?」

「そ、その、エリザベート様はとってもおえらいお方ですし……」

 卑屈に腰をかがめるオレとリア。

「い、今さら何を言ってるんですかぁ――っ!」

 ベティちゃんのかみなりが落ちた。




 で、ベティちゃんがどうしてもって言うんで、リアとステラもそれぞれケジメの罰を与えることになった。リアはさっき言ってたビンタ一発、ステラは今度一対一でおすすめの店をおごり&個別説教だってさ。

 てか、リアがアホみたいに本気でビンタしたのには正直ヒヤッとしたぜ。ベティちゃんのちっこい身体がくるくる回転しながらふっ飛んでくんだもんな。首の骨折れたらどうするつもりだよ。

 そして、ステラさんの「個別説教」ってのがなんか超コワい……。




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