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2-3 ベティちゃんがコケ……ええええ――っ!?




 暗くてジメジメした洞窟の中を、オレたちは光りゴケの採集ポイントめざしてえさこらと歩く。

「うわ、マジですべるな」

「転ばないでよ、あんたどんくさいんだから」

「ほっとけ!」

 右足がずずいと前にすべってコケそうになったオレを、リアがあきれた目で見る。

「でも、本当に注意した方がいいですね。特に戦闘中はいつものようには動けませんから」

「えー、全然そんなふうに見えないよ? ステラ、あの二刀流すごいね」

「ありがとうございます、リアさんがヒントをくれたおかげです」

 いやー、マジでスゴいんだよな、ステラの二刀流。例の犯人風影モンスターもばったばった切り裂いていくし。

「あ、また出たよ、お化けキノコ」

 リアがランプを向けた先には、幼稚園児くらいの大きさのでっかいキノコが三体あらわれていた。下の方には細い触手みたいなのが何本も生えている。

 あー、でも、あの触手がステラにニュルニュルするところも少し見てみたいな~。って、それどころじゃないな、オレも歌わなきゃ。

「要は、こちらに近づけなければいいのです」

 そう言いながら、ベティちゃんが構えた弓から矢を放つ。

 ビュンと飛んだ矢が、まんなかのキノコに突き刺さる。ばふっと粉みたいなのを吹きながら、キノコはその場にしぼんでいった。あの粉が危ない胞子なんだよな。

「じゃあ私もー」

 ランプを足元においたリアが、ナイフをシュバッと投げつける。右のキノコに命中して動きが止まってる間に、もう一体のキノコをベティちゃんがしとめる。

「では、最後は私が!」

 そう叫ぶと、ステラも手にした斧をキノコへと投げつけた。うおっ!? バフンって粉吹きながらキノコが粉々になったぞ!? あの斧、投げつけることもできるのか!

 敵を一掃すると、胞子がおさまるのを待って斧とナイフを回収する。

「さーて、先を急ぐよ~」

 ランプを持つリアに続いて、オレたちは先を急いだ。






 で、さらに奥まで来たんだけど。

「うわ、前にもましてすべるな」

「最初のポイントで必要な分集め切れるといいですね。次のポイントまで行くのは骨が折れそうです」

「だよね~。みんな、足元すべるから気をつけてよ~」

 先頭を行くリアが注意を喚起する。これ、油断したらマジでコケそうだな。

 てか、意外なことにベティちゃんが少し遅れている。こういうすべる場所が苦手なんだな。

「ちょ、ちょっと、そんなに先に進まないでください……」

 後ろからそんな声が聞こえる。前からは二人とも転ばないでね、というリアの声が飛ぶ。オレもセットなのかよ。

 と、後ろから悲鳴が聞こえた。

「わ、わ、わ! きゃあああぁ!」

 かと思うと、どってーん、という音がした。あーあ、ベティちゃん転んじゃったかー。こりゃリアにバカにされるぞー。

「大丈夫か? ベティちゃん」

 そう後ろを振り向いたオレの目の前には、茶色いベティちゃんの頭が……あれ? 茶髪のおさげの髪しかないんだけど?

「って、ええええ!?」

 これ、カツラじゃねーか! あわてて顔を上げると、視界の先ではリアよりちょっと長いくらいのショートの金髪の子がうつぶせに倒れていた。

「ちょっとベティ、だいじょー……ええええ!?」

「ベ、ベティさん!?」

 悲鳴に振り返ったのだろうリアとステラも驚きの声を上げる。そりゃビビるよな、ベティちゃんがズラだったんだもん。そうか、だからちょっとだけ頭が大きく見えてたのか。

「いつつ……」

 ベティちゃんが服を払いながら、身体を起こす。よかった、どうやらどこも打ってはいないようだけど……。

「ベ、ベティちゃん、これ……」

「は?」

 顔を上げたベティちゃんが、ぽかんとした顔でオレの手にあるカツラをみつめる。

 それから、我に返ったのか、あわあわと目や口を震わせながら自分の頭をぺたぺたとさわり始めた。

 んー、てか、なんかどっかで見おぼえのある顔だなあ……。いや、そりゃベティちゃんの顔なんだから、よく見知った顔に決まってるんだけどさあ……。

「あれ、なんか引っかかるなあ……」

 オレの隣にやってきたリアも、何か感じたらしく首をひねる。あれ、お前も見おぼえあるの? 見ればステラもそんな顔だ。オレたちが共通で見知ってる人物で、背が低めで金髪ショートカットで……。

「あっ、ああああ――――っ!」

 オレとリアは、同時に叫び声を上げた! そうだ、いたよ! 金髪ショートで、どなると声がキンキンして、すんごいお上品なふるまいをするヤツ!


 オレたちの前で女の子座りしながらおろおろとこちらを不安そうに見つめる金髪ショートの女の子……それは、以前喫茶モンベールで一悶着あった大貴族ベルフォール家のお嬢様、公爵令嬢エリザベート・ド・ベルフォールその人だった。




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