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2-2 人数、多くない?


 おお、れぇ……。ここが五十二階か……。

 五十一階も本格的なダンジョンだったけど、ここはさらに暗さがプラスされてるな。こりゃ明かりなしじゃまわりもよく見えないぜ。

「ランプでもつけるか。オレは演奏があるからムリだけど」

「ではわたしが……」

「ベティは弓があるし、前に出てきたら危ないでしょ? いいよ、私が持つよ」

 そう言って、リアがアンジェラからもらったランプを取り出すと明かりをつける。へえ、結構明るいんだな。

「さーて、それじゃ行きましょーかー」

 ずいずいと前を行くリアに続き、オレたちも後に続いた。おい、あんま速く歩くなよ。ここすべるんだからさ。


 もらった地図にしたがい、光りゴケがとれるポイントへと向かう。

「五十四階まではだいたい探索されてるんだよね~」

「まだ未探索のエリアも多いようですけどね。この階も、このあたりはまだ調べていないようですね」

「どれどれ、ああ、ホントだ。なんかゴニョゴニョってごまかしてるな」

「いいからルイは後ろに下がっててよ、危ないじゃん」

 ちぇっ、地図見るくらい別にいいじゃんよ。

 おとなしく後ろに下がると、オレはベティちゃんと並んで歩く。

 いつにもまして口数の少ないベティちゃんに、オレは話しかけてみる。

「今日はいつもの弓じゃないんだな」

「ええ、五十二階はせまいと聞きましたから。ショートサイズのものを持ってきました」

「へえ、いつものとは違うの?」

「はい、威力や速射性は少々落ちますが使い勝手は悪くありません」

「そっか、じゃあ活躍できそうだな」

「でも、ここは暗いですから。慎重に狙わないと危ないですね」

「へえ。まあ、ベティちゃんなら大丈夫だろ」

 あ、そういえばあれはどうなったんだろ。

「なあ、引っ越しの方はどうなってる? まだ準備手間取ってるのか?」

「そ、それはもう少しかかりそうです。すみません」

「いや、あやまる必要はないけどさ。もしイヤならオレから王様に言っといてやるけど?」

「い、いえ、そういうわけではないのです。わたしのことは気にしないでください」

 そう言ったまま、ベティちゃんは口を閉じてしまう。あー、失敗だったかな、この話題。


 で、しばらく無言でずいずいと洞窟を進む。暗いだけじゃなくて、ちょっと寒い。そういや王都も結構涼しくなってきたなあ。

 ランプで道を照らしながら、リアが道を先導する。ランプの明かりで、オレたちの影が洞窟の壁にくっきりと映し出される。

「なんかカビくさいよねー、ここ。ま、光りゴケ集めにきたんだから当然かー」

「そうですね」

 前の二人がそんなことを言いながら進んでいく。この階、意外と敵に出くわさないな。

「で、この先に壁があるから右に曲がって、と……」

 地図を見ながらリアがぶつぶつ言う。

 と、顔を上げたリアが首をかしげた。

「あれぇ? なんかおかしいな~」

「は?」

「ほら、あれあれ」

 そうリアが指さした先には、さっき言ってた壁があった。ランプの明かりに照らされて、オレたちの影が映ってる。

「何がおかしいんだ?」

「いや、なんか影がさ、人数多くない?」

「はあ?」

 あらためて前を見てみる。いち、に、さん、し……ご!?

 あわてて後ろを振り返るが、別に誰もいない。え、何コレ! 幽霊!?

 オレがうろたえていると、ステラとベティちゃんが武器を構えて鋭く叫んだ。

「違います! あの影が敵です!」

「あれがアンジェラさんが言っていたシャドウですね!」

 そう言うや、ベティちゃんがさっそく構えた小弓から矢を放つ。

 飛んできた矢を、影がひょいとかわす。あ、やっぱあいつ敵なのか!

 影はそのままするすると移動する。

「いけない、暗がりにまぎれられては目で追えません!」

「まかせて、私が照らすから!」

 リアがランプで影を追う。って、おい! なんか影の数増えてないか!?

「ルイ、あんたのも貸して! で、すぐに歌って!」

「お、おう!」

 ランプを取り出してリアにパスすると、オレも竪琴を構えて歌の準備をする。

 ええと、どの歌にしようかな。今リアは両手がランプでふさがってるし、ベティちゃんの弓も使いづらそうだし、ここはステラの応援歌でいくか!

「ステラ、オレステラの歌を歌うからよろしくな!」

「え、は、はい!」

 オレの声にステラがうなずく。

「それでしたら……」

 ステラは腰にあるもう一つの斧に手をかけると、それを構える。おお、例の二刀流か!

「頼んだよステラ、私が敵を照らすから~」

 そう言いながら、リアが両手のランプで敵を照らす。リアの明かりはまるでサーチライトのように敵を追い続ける。うわ、なんか名探偵アニメの犯人みたいなヤツだな、あの影。

「まかせてください!」

 鋭く叫ぶと、ステラがそのうちの一体に躍りかかる。

「せやああっ!」

 壁に映る敵に向かい、ステラがバツの字に斧をクロスさせる。敵の身体もバツの字に切り刻まれ、そのまま霧散していった。

 もう一体は必死に明かりから逃れようとしていたが、リアのランプがそれを許さない。壁から地面に移動した影がこちらに迫ってくるが、ベティちゃんが小型の弓をそいつ目がけて構える。

 キリキリと音を鳴らしながら弓を引くと、シュパッと矢を放つ。

 矢は空を裂きながら、寸分たがわず影の胸をつらぬく。と、そこを中心に影は散り散りになって消えた。おお、戦いにくいとか言ってたけど、全然いけるじゃん!

「ふー、なかなかやっかいな敵だったね~」

「そうですね、数が多いと面倒かもしれません」

「リアさんの手が埋まりますから、いつもより火力も落ちますしね」

 女性陣がさっそく反省会を始める。マジメだなあ、ステラとベティちゃんがそろうと。

「でも楽勝だったじゃん! やっぱスゲえなお前ら!」

「それはルイさんの歌のサポートがあるからですよ」

 おお、さすがステラさん、わかってる! リア、お前も少しは見習えよ?

「よーし、敵の特徴もわかったし、どんどん行こうか~」

 ランプを両手に持ったまま、リアがずいずいと歩き出す。おい、地図持たなくて大丈夫なのかよ。


 ま、でもこの調子ならあんまり心配はいらなそうだな。それじゃちゃっちゃと集めてくるか、光りゴケ!





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