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1-6 バケモンかよ、このじいさん!





 五十階でオーガやワイバーンの群れに出くわしたオレたち。いつものようにステラとリアが前に出ようとすると、それより前にじいさんが出る。

 どうしようかと少し迷うオレたちに、じいさんが声をかけてきた。

「そこのオーガどもはわしがまとめて引きつけておくわい! その間にお主らは他の奴らを始末するんじゃ!」

 ああ、いわゆる壁役とか盾役ってヤツをやってくれるのか。確かにあのガタイならそういう役目に向いてるかもな。ま、職業は僧兵らしいけどさ。

「わかったぜ、じゃあステラとリアはあのカマキリを、ベティちゃんはワイバーンを倒してくれ!」

「え? あ、うん、わかった!」

「わ、わかりました!」

「それがよさそうですね」

 オレの言葉にうなずくと、三人はさっそく行動に移った。オレも早く歌わないと。

 竪琴を準備したオレは、パーティーメンバーが増えてきたんで作った新曲を歌い始めた。その名もズバリ『夜明けのうた』、オレたちの公式パーティーソングだぜ!

 オレがイントロを奏で出すや、先頭に立ったじいさんが驚きの声を上げる。

「うおおっ!? な、なんじゃこれは? ち、力がみなぎってくるぞい!」

「それがルイさんの歌の力です!」

 とまどうじいさんに、ステラが簡潔に説明する。そういやギュス様の時もこんなだったな。

「なんと! お主、そんな力を持っておるのか! ようし、こっちはわしにまかせとけい!」

 そう叫ぶや、じいさんはオーガの群れへと突っこんでいった。こう見えても歴戦の強者らしいし大丈夫だとは思うけど、あんまムリすんなよ?

 と、オレのすぐそばでヒュンと音がしたかと思うと、空に向かって放たれた矢がワイバーンの胴体をとらえた。おお、ベティちゃんさっそくやる気だな。あいかわらずの精度で、空の魔物を淡々と撃ち落としていく。

 リアとステラはカマキリ二匹相手にちゃかちゃか戦ってる。リアが一匹を牽制してる間にステラがもう一匹をしとめる流れだな。あの凶悪なカマを軽々とさばいていくんだから大したもんだよ。

 さてさて、こっちは順調だけど、じいさんの方ははたして大丈夫かねえ。オレはちょっとだけ心配しながらオーガの群れの方へ目を向けた。

「おりああ!」

 グシャッ! うええ、気合の声と共にスッゲぇ音が聞こえてきたよ!

 音のなった方を見ると、じいさんが例のブツを振り回しながらオーガの頭をぶっつぶしたところだった。げえぇっ、グロっ!

 丸太みたいな棍棒を振るいながら襲いかかってくるオーガたちに、じいさんはあの棒を振りかざして鬼神のごとき強さで次々と魔物をぶっ倒していく。

 てかおい! アンタ壁役担当じゃなかったのかよ! もう一人で全部片づける勢いだろ! 十匹くらいいたオーガがもう半分になってるし!

「ほれほれ、早くこっちを助けにこんかい! 先にこっちが片づいちまうぞい!」

 ムチャ言うなよ! アンタが強すぎるんだよ! あ、ステラまず一匹しとめたな。

 ベティちゃんはワイバーンが吐いてくる火の玉を撃ち落としつつ、一匹ずつ確実に敵を倒している。うーん、安定感あるなあ。

 なんだかリア・ステラ組とじいさん、どっちが先に敵を片づけるか競争みたいになってきたなあ。ベティちゃんもそろそろ終わりそうか?

「てやああぁぁぁ!」

 ステラが気合のかけ声とともにカマキリを一刀両断した! おお、やったぜ!

「ぬおおおおお!」

 あっちからも雄叫びが聞こえてきたぞ! 振り返ると、あのでっかい棒でオーガを三匹まとめてぶっ飛ばしやがった! ひええ! オーガの巨体がグニャグニャに曲がって、手やら足やらがありえない方向向いてるよ!

 気づけば、ベティちゃんも一仕事終えたといった顔でふうとため息をついてる。どうやらこれはみんな同着かな? それにしてもハンパねえな、この人ら……。

「ニコちゃん、今行きます……あら?」

 カマキリを片づけてじいさんの方へ駆け出そうとしたステラが、無残に叩きつぶされて転がっているオーガたちと、その真ん中で仁王立ちしてるじいさんの姿を見て驚いた顔をする。リアなんか目が飛び出しそうになってるぞ。

「おお、そっちも終わったかの。待ちくたびれたんで全部片づけちまったぞい」

 何事もなかったかのように、じいさんがこっちへと手を振ってくる。手にした棒の太い金属部分にオーガの血やら何やらがべっとりくっついてて、なんだかスゲえ怖いよ……。

 のっしのっしとこちらに戻ってきながら、じいさんが大笑いする。

「がっははは! 久々にダンジョンに入ったが、まだまだ身体が動くのう! ルイ、お前さんの歌は大したもんじゃ! おかげで若い頃を思い出したわい!」

 アンタ若いころはどんだけバケモンだったんだよ! これより強いとか、もう考えたくもないわ!

 戻ってきたリアとステラも、口々にじいさんをホメたたえる。

「す、すごいですねニコちゃん! 私が昔読んでたお話どーり、メチャクチャ強い!」

「さすがですニコちゃん、あれだけのオーガをたった一人で片づけるとは、『孤高の大僧正』の名にたがわぬ素晴らしい腕前です。わ、私ごときが言えることではありませんが……」

 いやいや、どこが『孤高の大僧正』の名に違わないんだよ! どう見たってそんな徳の高そうな光景じゃねえだろ、これ! 絶対『鮮血の大僧正』とか『撲殺僧正』とかの方がピッタリだろ!

「わたしも感服いたしました。さすがはニコラウス猊下……ニコちゃん、その戦いぶり、ぜひ参考にしたいと存じます」

 やめて! こんなの絶対参考にしないで! ヤダヤダ、イヤだい! カワいいベティちゃんがあんな殺人肉ダルマになるだなんて!

 オレの心中など当然察することもなく、じいさんが気楽な調子で笑う。

「がっはは! これからはこのじじいが盾になってやるぞい、大船に乗ったつもりで頼るがいい!」

「はい!」

 リアたちも、目をキラキラさせながらじいさんの顔を見上げて返事する。ま、まあ、強さ的には申し分ないどころかこっちが引くレベルだけどさ。

 それにしてもウチのパーティー、ギュス様にセーラさんにこのじいさんと、どんどんヤバい人たちが増えていくなあ……。





今回から少し投稿ペースを早めたいと思います。


8日間隔で投稿しますので、おおむね月に4回のペースになります(今月は3回ですが)。

本編完結に向けて少しだけ執筆速度を上げようと思いますので、どうぞ今後もよろしくお願いします!

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