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1-4 な、なんだ、このじいさん……!?




 突如オレたちの前に現れたかと思うと、クエストについていくとか言い出した謎のじいさん。おい! 勝手に決めんな!

 オレはじいさんのガタイにビビりながらも、思わず声を上げた。

「お、おい、じいさん! そんな話聞いてねーぞ! か、勝手についてこられても困るんだよ!」

「はて? お主らには話がいってるとアンちゃんから聞いておったんだがの?」

「だからそのアンちゃんって誰だよ! オレたちは今日ニコちゃんっていうカワいい女の子とクエストする約束してるんだよ!」

 いきがりながらもだんだん小さくなるオレの声に、じいさんは軽く首をかしげてみせた。

「はて? お主らアンちゃんとは仲がいいんじゃろ? 先日もアンちゃんが直接わしのことを紹介したと聞いておるんじゃが……」

 その言葉に、リアがオレの袖を引っぱってくる。

「ね、ねえ、もしかして……」

 うん、オレも今その最悪の可能性に思い至ったところ。

 そんなオレたちの心中を代弁するように、アンジェラが口を開いた。

「あの、もしかしてお師様が彼らの助っ人なんですか……?」

 それを聞いて、じいさんは満面の笑みでうなずいた。

「おうとも! 世界を巡っての修行の成果、存分に見せてやるぞい!」

「いやぁぁぁぁあああ!」

 そんなぁー! ヤダヤダ! オレのニコちゃんを返してくれよ!

 オレが真っ白に燃え尽きていると、ステラがアンジェラにたずねた。

「あの、アンジェラさんはこの方とお知り合いなのでしょうか? 先ほどから『お師様』とお呼びしていますが……」

「えっ!? え、ええ、それはその、そうなのよ! この人、いろんなことにくわしくてね、私もいろいろ習ったのよ! おほほほ!」

 なんだか妙にあわてながら答えると、アンジェラは受付から出てじいさんの隣に並んだ。

 じいさんが目を細めて笑う。

「久しぶりじゃのう、お主も少しは……むぐぐぐぐ!」

「えーえ、私はとっても元気よ、お師様! せっかくだから、クエスト終わったらゆーっくりとお話しましょうねー! おほほほ!」

 出た! アンジェラのヘッドロック! あのガタイのいいじいさんが、アンジェラの細い腕で今にも落ちそうになってる!

 王様の時みたいに耳元で何やらボソボソつぶやくと、アンジェラはじいさんを解放した。おい、なんだかヒィヒィ言ってるぞ? そのじいさん……。

「というわけなのよ! お師様もお元気そうで何よりね!」

「ごほっ、げほっ……。そ、そうじゃったか、うむ。ま、まあ、よろしく頼むの、アンジェラちゃん」

 じいさんがオレの太ももくらい太い首をさすりさすりしてると、アンジェラが紹介し始めた。

「みんなは初めてでしょうから紹介するわね。こちらはニコラウスさん、こう見えてもランクはAランク、腕ききの僧兵よ。どこのギルドにも属さずに長い間ずっと旅をしていたはずなのだけれど、お師様、もしかしてうちのギルドに登録するのかしら?」

「うむ、そのつもりじゃ。でないとパーティーとやらに入れないのじゃろ?」

「まあ、基本的にはそうなるわね。それじゃ手続きは帰ってきてからでいいかしら。そんなわけで、どうやらこの人が王様の手配していた助っ人らしいから、みんなよろしくね?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。私はステラと申します。ニコラウスさん、どうぞよろしくお願いします」

「リアで~す、よろしくお願いしま~す」

「おう、ピチピチじゃのう、ピチピチ! よろしく頼むぞい、めんこいお嬢さん方」

 状況を飲みこんだステラとリアが、いち早くじいさんへとあいさつする。じいさんも調子いいな、おい。

 と、何やらずっと考えこんでいたベティちゃんが、おそるおそるといった感じでじいさんに問いかけた。そりゃビビるよな、こんな筋肉ダルマジジイだもん。

「あの、失礼ですが、あなたさまはもしや、かつてアンリ四世陛下と共に世界各地を巡り、その後は修行のためにお一人で旅立たれ歴史の表舞台から姿を消したと言われている伝説の聖人、『孤高の大僧正』ニコラウス猊下であらせられるのでは……」

「ふむ? その聖人やら大僧正やらは知らんが、アンちゃんといっしょに旅をしたニコラウスなら多分わしのことじゃろうな」

「えっ、えええ――っ!?」

 じいさんの言葉に、ベティちゃんだけでなくステラも、そしてリアまでもが大声を上げる。え、何? このじいさん、そんな有名人だったの? てか、「アンちゃん」って王様のことかよ!

 と、ベティちゃんがいきなりじいさんにひざまずいた! わっ、ステラもひざまずいてるよ! ちょ、このじいさん、そんなにエラいお方なのかよ! え、何? これ、オレもひざまずかないといけない流れ?

 権威とかにはめっぽう弱いベティちゃんが、メチャクチャかしこまりながらじいさんにこうべをたれる。

「まさか伝説の聖人とまで謳われる猊下のご尊顔を拝することがかなうとは……。このエっ……いえ、この国の民としてまことに恐悦至極に存じます」

「わ、私も先ほどは出すぎた口をきいてしまい申し訳ございません。数々のご無礼、どうかお許しください。猊下のご活躍、私も幼少の頃より叙事詩や英雄列伝を通じて聞き及んでおります」

 リアもあわててベティちゃんのマネしてひざまずくと、じいさんに向かって口を開いた。

「わ、私もニコラウス様のお話なら小さい頃から聞いてます! まさかホンモノだなんて、ご、ごめんなさい!」

 オレもひざまずかなきゃダメかなー、と思っていると、じいさんが目を細めながら笑った。

「ほっほっほ、わしゃただのジジイじゃよ。お前さんたち、顔を上げなさい。せっかくのめんこい顔が見えんじゃろ」

 じいさんにうながされ、ベティちゃんたちがおそれ多そうに顔を上げる。

 アンジェラも、後ろから声をかけてくる。

「ほら、あなたたち、お師様もこう言ってることだし。いつも通り、普通に接してあげればいいのよ。ね、お師様?」

「そうじゃそうじゃ。そんなに固くならずに、フツーに接してくれればいいのじゃよ、フツーに」

「で、ですが猊下……」

「その『猊下』というのもやめじゃ。そうじゃな、これからは仲間なんじゃ、お主らもわしのことはニコちゃんと呼ぶがよい!」

 や、やめてくれえぇぇ! オレの中のニコちゃんをこれ以上汚さないでくれえ!

「で、ではお言葉に甘えて……よろしくお願いします、ニコちゃん」

「ス、ステラが言うなら私も……ニコちゃん、よろしくお願いしま~す」

「あ、あなたたち、そんな簡単に……!」

 あっさりニコちゃん呼びする二人に、ベティちゃんの顔が青ざめる。ホントだよ! そんなあっさりそのアダ名で呼ぶなよ! オレの精神にダメージ来るだろ!

 そんなオレの手を、じいさんがギューッと握ってくる……って、痛い、痛い、痛い!

「ルイといったの? これからは仲間じゃ、よろしく頼むぞい!」

「痛い、痛い、痛い!」

「なんじゃ、ひよわいのう。お主もわしのことはニコちゃんと呼ぶんじゃぞ?」

「呼ぶ! 呼ぶ、呼びますから! お願いだから放して! ニコちゃん!」

 オレがそう悲鳴を上げると、じいさんは満足げにオレの手を放す。ひっ、手が真っ赤になってるよ! 骨折れなくてよかった!


 こうして、オレたちはじいさん……ニコちゃんといっしょにクエストに向かうことになった。





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