表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/204

4-16 これで我が家の警備も万全!




 その日、オレたちは朝からマンションのエントランスに集合していた。ベティちゃんも来てる。どうでもいいけど、ここって集合住宅だからマンションでいいんだよな? それともアパート?

 どこそこのごはんがおいしい、みたいな話をみんなでしていると、今日のお目当ての人がやってきた。

「皆さん、おはようございます」

「あ、おはようございまっす」

 入り口から入ってきたのは、私服姿のセーラさんだった。そう、今日は彼女がこのマンションに引っ越してくるのだ。

 普段着のセーラさんは、薄い長そでシャツに結構タイトなパンツをはいてる。なんかカッコいいな。

「今日はわざわざ集まってくれて、どうもありがとうございます」

「いやいや、同じ家の住人なんだし当然っすよ」

「私が引っ越しした時もみなさんには手伝っていただきましたし」

「私、がんばって手伝いますよー」

 オレたちが口々にセーラさんに声をかける。ベティちゃんもうんうんとうなずいてる。

 お、玄関に馬車が来たみたいだぞ。あれがセーラさんの荷物かな?

「それじゃちゃっちゃと運ぶか」

「そだね。セーラさん、どれから運びますか?」

「では、お二人にはこれをお願いできますか?」

「うっす、がってんっす」

 指示にしたがいながら。オレたちは机やらテーブルやらを馬車から降ろして運び始めた。しっかし、ステラとセーラさん、よく二人であんなしっかりしたベッドをひょいと持ってけるよな……。


 人数がいるおかげで、荷物運びはわりとすぐ終わった。ま、女の子の一人暮らしだしな。そんなに荷物も多くないし。

 一時間くらいで荷物を運び、その後女の子たちで部屋の中をやるからと、オレは外へ追い出される。扱いヒドいな!

 しょうがないので一階のカフェでお茶飲んで待ってると、さほど待つこともなく女性陣が上から下りてきた。やっぱこれだけいると早いね。

「あー、終わった終わった! セーラさん、お茶飲みましょう! ここのお茶、なかなかおいしいんですよ~」

「そうなんですか、では私も失礼します」

 リアに引っぱられて、セーラさんも注文のためにカウンターの方へ行く。なんだかいとこのお姉ちゃんを連れまわす小学生のガキんちょみたいだな。

 ステラとベティちゃんもお茶やおやつを買ってくると、みんなオレのまわりに集まってお茶会が始まった。

「まずはセーラさん、お引っ越しおめでとうございます」

 オレが音頭を取ると、みんなも口々にお祝いの言葉を述べる。セーラさんは表情を崩さないながらも、顔が少し赤くなった。

「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」

「もちろんっすよ、わかんないことがあったらいつでも聞いてください」

「ルイに聞いてもどーせわかんないでしょ。セーラさん、こんなのより私に聞いてくださいね!」

 こんなのってなんだ、こんなのって! がるるとうなり声を上げそうな勢いのオレを、ステラがまあまあとなだめる。

「ところで、ベティちゃんはまだ引っ越ししないのか?」

「え、ええ、まあ……。その、いろいろとありまして」

「ま、人それぞれだもんな、そんなに急がなくても大丈夫だろ」

 大人なところを見せるオレに、リアがぶーっと不満そうな顔をする。

「えー、ベティも早く来なよー。せっかくみんないるんだしさー」

「わ、わかってます」

「おいおい、そんなせかすなっての。ベティちゃんもいろいろ大変なんだろ」

「何、ルイ、もしかしてベティの好感度上げようとしてるの? うわー、やだー」

 露骨にイヤそうな顔をすると、リアがセーラさんにこいつには気をつけてくださいね、身の程わきまえないで口説きに来ますから、とか言いやがる。おい! オレを変なナンパ野郎扱いすんな!

 オレとリアがニラみあってると、窓の外を見つめながら、セーラさんがつぶやく。

「でも、本当にいいところにあるんですね、こちらのマンション」

「そうなんです。王都の中心地にあるので、私もギルドや街に行くのがとっても楽なんですよ」

「私は結構頻繁にギルドに行かなければならないので、ギルドから近いのは嬉しいです」

「さすがセーラさん、ギルドからも引く手あまたですもんね」

「い、いえ、そんなことは……」

 うーん、二人のやり取りを見てるとなかよし姉妹みたいだな。照れるセーラさんもかわいいぜ。

 お茶をずずーっとすすったリアが、でもさ~、と口を開く。

「このマンション、警備とかするまでもなく安全じゃない? 私たち以外にもAランクBランクの冒険者や軍人さんが結構いるしさ~。ここにちょっかい出すヤツって、相当な怖いもの知らずだよね~」

「あるいは、よほどの阿呆でしょうね」

 ベティちゃんが音もなくお茶を飲みながらうなずく。育ちの違いがモロに出ているな。

「もうさー、王都でここより安全なところってそうそうないんじゃない?」

「いやいや、そんなことはないだろ」

「あら、あながち間違ってはいないかもしれないわよ?」

 ちょっと離れたところから声が聞こえて、オレたちはそっちの方を振り返る。そこには、七分袖Yシャツにジーンズ姿のアンジェラが立っていた。

「おはよー、アンジェラ。それって、どういうこと?」

「言葉通りの意味よ。このマンション、シティやテンプルギルドの上位プレイヤーが結構住んでいるのよね。加えてセーラも来たことだし、武装勢力の百人や二百人に襲撃されたところでビクともしないどころか、あっさり返り討ちにしちゃうでしょうね」

 スゲえなそれ! ガチの軍隊でも差し向けなきゃ落ちなさそうじゃん!

「それに、ここにはいざとなったらとっておきの用心棒もいるらしいから、あなたたちは何も心配する必要はないわよ。ここより安全な場所なんて、せいぜい王様のまわりくらいでしょうね」

「そ、そんなになのか!」

 どんだけスゲえんだよ、このマンション! とりあえず、もう家で命を狙われる心配はなさそうだな。

 アンジェラも交えながらお茶してると、ステラが手を合わせながら言った。

「では、この後はお昼もかねて、セーラさんのお引っ越し祝いをみんなでしませんか? お店は『スタイリッシュ・バロン』がいいかと思うんですが、いかがでしょう?」

「あ、私さんせー。スタバって結局まだ行ったことないしね」

「わたしも賛成です」

「だそうなんですけど、セーラさんはどうですか~?」

 おい、オレの意見も聞けよ! いや、オレもそれでいいけどさ!

「あ、ありがとうございます、では、ぜひお願いします」

 セーラさんが若干申し訳なさそうにうなずく。遠慮なんかしなくていいっすよ。


 そんなわけで、セーラさんの引っ越しも無事に終わった。オレたちも、この家に見合うだけの働きをまわりの連中に見せてやらないとな!




一年以上続いた第三部も、これにて終わりとなります。ここまで長い間おつき合いいただきありがとうございます!


ベティ、セーラと新たなメンバーも増え、パーティーとしてもレベルアップしたルイたちの活躍を今後もどうぞよろしくです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←よければぜひクリックして投票お願いします! 『詩人』も参加中です!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ