4-15 気分よく打ち上げ!
お祝いの日、オレとリア、ステラは家のロビーに集まると、モンベールへと出発した。
大通りを歩きながら、オレたちは昔話に花を咲かせる。
「何だか初めてステラと待ち合わせした時を思い出すね~」
「ああ、懐かしいな。あの時は早めに行ったらステラが遅刻したんだったよな」
「す、すみません……」
「リアなんか、ヒマすぎて地面にらくがき描いてたもんな」
「ちょっと、ルイ! それはナイショでしょ!?」
「いや、あれはフツーに気づいてただろ。な? ステラ」
「は、はい……」
「そ、そうだったの!? べ、別にそんなに待ってなかったよ、うん!」
慌ててリアが顔の前で両手を振る。
「でも、セーラさんは早く来てそうだな」
「そうですね、もういらっしゃっているかもしれません」
「ベティは驚くほどぴったりの時間に来るよね~」
それから、互いに顔を見合わせた。
「あの話もしないとな」
「オッケーしてもらえるといいね」
「お仕事がお忙しくなければいいのですが」
「まあ、その時はその時だな」
そんなことを言いながら歩いていると、モンベールの前に立っている女性の姿が見えた。
「あ、セーラさん、もう来てる!」
「やっぱり早いですね」
「オレたちも行こうぜ」
ダッシュしてセーラさんのところへ急ぐ。
「こんにちは、皆さん」
「どうも、こんちはっす」
「こんにちは~」
「お待たせしてしまいましたね」
「いえ、私も今来たばかりです」
あー、これ絶対結構待ってたな……。オレらも早めに来てよかったよ。
セーラさん、今日はタンクトップにパンツスタイルか。ボーイッシュというか、活発そうなカッコだな。
「今日はお誘いありがとうございます」
「いえいえ! セーラさんにも祝ってもらえて嬉しいっすよ」
「ここで立ち話も何ですから、中に入りましょう」
「でも、ベティさんはいいんですか?」
「平気平気~。ささ、どーぞどーぞ」
そう言って、オレたちは中へと入っていった。
窓際に席を取り、とりあえずお茶を飲んでいると、鐘の音と同時にベティちゃんが店に入ってきた。
「皆さん、お早かったのですね」
「やあベティ、あいかわらず時間通りだね」
リアが手を振りながら、ここに座れと隣の席をバシバシ叩く。
全員そろったところで、おやつをいろいろ注文する。
ベティちゃんのお茶がやってくると、リアが手元のコップを手に立ち上がった。
「それではさっそく。ルイ、Aランクおめでとー!」
リアの音頭に続いて、みんながおめでとうございますとお祝いの言葉をかけてくれる。
「おう、サンキュー。でも、実感わかないけどな」
「実際全然強くなってないもんねー」
「うっせ!」
「でも、この後はAランクラッシュになるんじゃない? レベルだけで言えば、ステラ、私、ベティの順だよね」
「まさか、そのたびにパーティーやるつもりじゃないだろうな」
「え、当たり前でしょ? てゆーか、なんでルイだけを祝わなきゃならないのさ」
「まあ、そう言われてみればそうだけどよ」
そうこうやっているうちに、おやつが運ばれてきた。
ステラがそれを嬉しそうに見つめながら言う。
「それでは、いただきましょうか」
「そうですね、いただきます」
「いっただきまーす!」
みんな一斉におやつに手を伸ばす。それからいろいろとしゃべり出した。ヤバいな、こんなに女の子増えるとオレが入る余地がない……。
しばらく様子を見つつ、たまにオレを気にかけて声をかけてくれるステラに答えつつ、オレはおかしを食っていたけど。
そろそろタイミングかなと思い、リアに耳打ちする。
(なあ、そろそろ言わないか、あのこと)
(あ、そうだね)
ほらほら、とリアがせかしてくるので、オレはコホンと一つせき払いをして、左側に座るセーラさんの方を向いた。ちなみに、今オレは右にリア、左にステラという状況でお誕生日席の位置にいる。
「あの、セーラさん、おりいって話があるんすけど、いいっすか?」
「はい、なんですか?」
クッキーをかじっていたセーラさんが、ほとんど表情を動かさずにこってを向く。た、食べてるとこ、すいませんね……。
そんなセーラさんにビビることなく、オレは意を決して口を開く。
「あのですね、もしよければ、うちのパーティーに入りませんか?」
「え?」
オレの言葉に、セーラさんがぽかんと口を開ける。
この前、オレはリアとステラと三人で相談したのだ。セーラさん、決まったパーティーには入ってないって話だったし、だったらうちのパーティーに誘ってみようじゃないか、って。
ベティちゃんには昨日話したんだけど、彼女も全面的に賛成してくれた。そりゃこんなスゴ腕の冒険者が入ってくれれば安心だもんな。
セーラさんが、少し申し訳なさそうな顔で言う。
「誘ってくれて嬉しいんですけど、私いろいろとお仕事受けているのでなかなか参加できないかもしれないです」
「そ、そうっすよね! セーラさん、トップランカーですもんね!」
オレが頭をかきながら言うと、ステラが間に入ってきた。
「毎回クエストに参加しなくても、ゲストメンバーとして加入していただけるととても嬉しいんですが、どうでしょう? 都合のつく時だけでも大変ありがたいです」
「そうそう! 元々メンバーがフル参加するパーティーの方が珍しいんだし、参加できる時だけでいいんです!」
リアも必死に頼みこむ。さらにはベティちゃんも、セーラさんに頭を下げた。
「このパーティーも、間もなくシティギルド屈指のトップパーティーになるはずです。セーラさんにとっても、決して損な話ではないと思います」
「そ、そんな、こちらこそ光栄です。でも、本当にいいんですか?」
「もちろん!」
オレたちが即答する。それから、オレもがばっと頭を下げてお願いした。
「お願いします! セーラさんの力は、絶対オレらのパーティーの力になるっす! ホントたまの参加でいいんで、どうかパーティーに入ってください!」
オレたちの必死のお願いに、少し間を開けてセーラさんがぺこりと頭を下げた。
「もし、本当にいいんでしたら……こちらこそよろしくお願いします。参加できる日には限りがありますけど、私もぜひ皆さんといっしょにクエストしたいです」
それを聞いて、オレたちが一斉に立ち上がる。
「マ、マジっすか! おっしゃー!」
「やったー! セーラさんが入ってくれたー!」
「ありがとうございますセーラさん! これからもよろしくお願いいたします!」
「わたしもたくさん学ばせていただきたいと思います」
セーラさんも立ち上がって一礼する。
「私の方こそ、これからよろしくお願いします。皆さんのお力になれるよう、がんばりたいと思います」
「よし、祝おう! セーラさんが我らが『夜明けの詩』に入ってくれたことを祝して、ケーキを追加だ!」
「おー、ルイ、やるじゃん! よーし、私もこれ追加ねー!」
「私たちも負けていられません! セーラさん、どれを頼みましょう?」
「は、はい、それではこれを……」
「わたしもこれをお願いします」
にわかに盛り上がったオレたちは、店員さんに次々と注文を飛ばす。そんだけみんな気分がノッてるんだな。
ひょっとしたら断られるかなーと思ったけど、これでいよいようちのパーティーも最強に近づいてきたぜ! セーラさんも加わったところで、オレたちこれからもガンガン行くぜ!




