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4-13 誤解しててすいません!




「ステラさんはいつこちらに移られたんですか?」

「もう半年くらい前になりますね。クエストで危ないところをルイさんとリアさんに助けていただいて、それ以来パーティーに加えてもらっています」

「そうだったんですか。ステラさんほどの冒険者の危機を救うなんて、噂通り素晴らしい冒険者なんですね」

「はい、それは間違いありません。お二人にはいつもお世話になっています」

 ぽかぽかあったかい五十階を、ステラとセルヴェリアさんが仲よく並んで歩いていく。二人とも盛り上がってるね。てか、お世話になってるのは確実にオレの方だけどね。オレといっしょに荷物持ってくれるし。

 オレたち三人も、後ろであれこれと今日の話をする。

「今日のベティちゃん、スゴかったな。ワイバーンをバシバシ撃ち落としてくんだもん」

「あ~、あれはすごかったね~。私もナイフでがんばったけど、ベティは一撃だもんね」

「わたしは弓兵ですからね。リアさんのナイフに負けるわけにはいきません。そういうあなたこそ、今日はずいぶんと目まぐるしく動いていたではないですか」

「そうだね~、前にステラがいて、後ろにベティがいると、私もすごく動きやすかったよ」

「おまけに竜まで倒すんだもんな。今度こそ、ホントに強くなってきたんじゃないか? オレたち」

「そうかもしれないね~。セルヴェリアさんも褒めてくれてたし、だいぶ成長してるかも」

 お互いにうんうんとうなずいていると、ベティちゃんが前に出た。

「では、わたしはセルヴェリアさんに講評をいただいてきます」

 そう言って、前を行く二人の方へと行ってしまった。

「まじめだな、ベティちゃん」

「だね~」

 結構踏み心地のいい草原の地面を踏みしめながら、オレとリアは並んで歩く。

「それにしても、セルヴェリアさんって本当にいい人だよね~」

「だな、メチャ強いし、指示も的確だし、料理も上手だし」

「うまくできたら褒めてくれるしね」

 ひゅう、とリアが一つ口笛を吹く。

「しっかし、まさかステラと知り合いだったとはな」

「ホントホント、びっくりだよ。しかもそれが昔ステラが話してたセーラちゃんのことなんだもんね」

「オレ、てっきりもっとキャピキャピした子なのかと思ってたよ」

「私も私も~」

「てか、そこからがんばって最年少でAランクになるとか、普通想像できないよな」

「すごすぎだよね、ステラを追い越して強くなっちゃうなんてさ~」

 ひとしきり褒めまくったあと、オレたちは少しうつむきがちになって声をひそめた。

「オレたち、この前はめっちゃ失礼だったよな……」

「だよね……。私なんか、ずっと前から怖がってばっかりだったし」

「前の時も、きっといろいろと気をつかってくれてたんだよな……」

「何度もこっち見たり声かけてくれてたもんね……。それを全部睨んでるとか威嚇してるとか思っちゃってさ……」

 次第に足取りがとぼとぼとなっていったオレたちは、お互い顔を見合わせると、前を行く三人のところまでダッシュした。

 三人の前に回りこむと、セルヴェリアさんの前に並ぶ。

 そして、二人同時にがばっと頭を下げた。

「セルヴェリアさん、今まですみませんでした!」

 異口同音にあやまるオレとリアに、セルヴェリアさんが驚いたようにつぶやく。

「どうしたんですか、急に?」

「オレたち、今までさんざん失礼な態度をとってすいませんでした!」

「せっかく気にかけてもらってたのに、勝手に誤解してごめんなさい!」

「話もろくに聞かないで怖がってばっかりで、気分悪かったっすよね? マジですいません!」

「なんだか自分がやってたことが、まるでイジメみたいで……。そんなつもりじゃなかったんです……」

「二人とも、少し落ち着いてください」

 ひたすらあやまるオレとぐじぐじと泣きべそをかきはじめたリアに、セルヴェリアさんが少しだけあわてたような様子を見せる。

「別に私は気にしていません。怖がられるのはいつものことだし、私に原因があることはわかっていますから」

「でも、でもぉ……」

 べそをかくリアの頭を、セルヴェリアさんがやさしくなでる。

「お二人のお気持ちはわかりました。これからは普通に接してもらえると嬉しいのですが、それでどうですか?」

「は、はい! それはもちろんっす! よろしくお願いします!」

「わ、私も、よろしくお願いしますぅ……」

 笑顔……ではないけど、セルヴェリアさんがこくりとうなずく。うう、なんていい人なんだ……。

「よかったですね、お二人とも」

 笑顔でステラが小首をかしげる。その隣ではベティちゃんもうんうんとうなずいてる。

「では、さっそくなのですが」

 ようやく落ち着いたオレとリアに、セルヴェリアさんが迫力のある視線を向ける。は、はい、なんでしょう?

「これからは、よければお二人も私のことをセーラ、と呼んでくれないでしょうか。お友だちにはそう呼ばれていましたから。ベティさんもいかがでしょう」

 ちょっと恥ずかしそうにセルヴェリアさんがお願いしてきた。か、かわいいかも。

「い、いいんすか? もちろんオーケーっす!」

「わ、私もです! よろしくお願いします!」

「もちろんわたしもです。よろしくお願いしますね、セーラさん」

「ありがとうございます。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 そう言って、セルヴェリアさん……セーラさんがぺこりと頭を下げる。

 ステラが嬉しそうに言う。

「私もまだまだ未熟者ですが、これからもよろしくお願いしますね、セーラさん」

「こ、こちらこそ!」

「よかったですね、みんなとお友達になれて」

「……はい!」

 セーラさんがかすれ声で叫ぶ。あ、なんかとっても嬉しそうな顔してる気がする。オレたちも友だちになれて嬉しいっすよ。てか、ギュス様に続く最強の友だちだよな。

 それからはみんなでわいわいと楽しくしゃべりながら、ぽかぽか陽気なダンジョンの中をオレたちは帰っていった。




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