4-12 特訓クエスト、無事終了!
昼食を終え、しばらくいろんな敵と戦った後、オレたちは最後の総仕上げとばかりに一体のレッサードラゴンと戦っていた。
「はっ!」
気合と共に、ベティちゃんが目にも止まらぬ速さで矢を三発続けて放っていく。
ドラゴンがそのうちの二発を火球で撃ち落とし、もう一発をデカい鉤爪で叩き落としたところに、リアが得意のナイフを投げつける。矢を鉤爪で身体の外側方向へと払ったことでウロコの薄い胸部があらわになり、そこにナイフがヒットすると赤い血しぶきが飛び散った。
少し怯んだドラゴンに向かって、ステラが大斧を振りかざしながら猛然と突進する。ドラゴンは火球を吐いて接近を阻止しようとするが、今度は逆にベティちゃんの矢が火の玉をことごとく撃ち落としていく。おお、スゲえ!
あっという間にドラゴンの正面までやってくると、ステラの斧が剣舞のように軽やかに舞う。おお、敵のでっかい鉤爪にヒビが入っていくぜ……!
ステラに噛みつこうとしたところに、いつの間にかドラゴンの懐に入ったリアが首元に一撃入れてすぐに離脱する。おお、ヒットアンダウェイってやつだな。動きが鈍ったドラゴンに、ステラが渾身の一撃を振り下ろす。
「はあぁぁぁあッ!」
大斧が、うなりを上げてドラゴンの左肩を直撃する。斧は硬いウロコを切り裂いて、一気にドラゴンの胸のあたりまでぶった斬った! うおお、スゲえ!
ダメ押しとばかりにリアがナイフをドラゴンののど元に突き刺すと、低くうめいてドラゴンの巨体が地面へと沈む。スゲえ、ホントにドラゴンをやっちまった……。
「あの二人の連携はさすがですね」
弓を下したベティちゃんが、オレの隣でぶっきらぼうにつぶやく。この子、ステラがドラゴンに近づいた時点で仕事は終わりとばかりに弓を下してたんだよな……。まあ、実際あとはあの二人がさっくり片づけちゃったんだけど。
リアがぴょんぴょん飛び跳ねながら、こっちにピースしてくる。
「やったー! ドラゴン倒したよー!」
「おう、スゴいぞ、二人とも」
ステラもふうと一息ついて額の汗をぬぐう。あいかわらずいいワキだぜ。
セルヴェリアさんも、オレたちをねぎらうようにパチパチと拍手した。胸の前でパチパチするの、なんだかかわいいな。
「皆さんおつかれさまでした。今日はここまでにしましょう」
「ホントですかー? やったー!」
特訓終了のお知らせに、リアが大声で叫ぶ。いやまあ、オレも叫びたい気分だけどさ。
こちらに戻ってきたステラが、セルヴェリアさんに一礼する。
「今日はご指導ありがとうございました。おかげでいろいろ勉強になりました」
「とんでもないです。こちらこそ、ステラさんの技を間近で見ることができて嬉しいです」
なんていうか、見れば見るほど似た者どうしだな、この二人……。まあ、キャラかぶりと言うには二人ともあまりに印象が違いすぎてるけど……。
てか、リアの奴が帰ってこないな。何してんだ?
そう思ってドラゴンの方へ目をやると、リアはドラゴンにまとわりついて何やらせっせとやってるところだった。何やってんだ? あいつ。
「おーい、お前何やってんだー?」
「んー? ちょっとねー」
両手を口元に当てて叫ぶと、あっちからも大声で返事が返ってくる。ちょっとって何だよ。
オレたちが近づくと、リアは何やらせっせとドラゴンを切り刻んでいるところだった。
「お前、何やってんの?」
「見ればわかるでしょ、ちょっといろいろいただいてるの。レッサーでもドラゴンの身体ってお宝の山だからさー」
そう言いながら、リアがドラゴンからウロコをはいだり歯を抜いたり目をくり抜いたりしてる。エ、エグい……。
「ステラー、この鉤爪持ってってもらっていい~?」
「ええ、いいですよ。これも貴重なものなんですか?」
「そだよ~、結構いい武器が作れるんだってさ。はい、ルイはこれ」
そう言いながら、リアが小さな水筒を手渡してくる。なんかビミョーに生暖かいな……。
「おう、なんだこれ?」
「それはドラゴンの血」
「ゲっ!?」
オレが思わず水筒を落っことしそうになったところを、リアがひょいとキャッチする。それからオレに不満げな視線を向けた。
「ちょっとー、貴重なものなんだから粗末に扱わないでよね」
「しょうがねーだろ! 急に変なモン渡すんだから!」
「変なモンじゃない! ドラゴンの血だって言ったでしょ!」
「だからそれが変なモンだろ!」
そう言いながら、今度はちゃんとリアから水筒を受け取る。うええ、生ぬるくて気持ちワリぃ……。
ある程度ほしいものを取り終えたのかドラゴンから離れると、何かを思い出したみたいにリアがあわててセルヴェリアさんにぺこりと頭を下げた。
「あ、すいません! セルヴェリアさんに許可を取ってませんでした! ドラゴンを倒して嬉しかったもので、つい……」
「構いませんよ。せっかく皆さんが倒したのですから、もらえるものはもらっていってください。それに、その方がリアさんのスキルの上達にもつながるでしょう?」
いつものかすれ声ながら、穏やかな調子で言うセルヴェリアさんに、リアも感激したようにぺこぺこと頭を下げる。
「は……はい! ありがとうございます! おかげでドラゴンをさばく練習もできました!」
「それは何よりです。盗賊のサポートはパーティー全体の戦略や戦術に大きな影響を及ぼしますから、ぜひ磨いていってください」
「は、はい!」
リアの返事にすこ~しだけ頬の筋肉を動かしたセルヴェリアさんは、槍をあっちの方に向けながらオレたちの顔を見回した。
「それでは帰るとしましょう。ギルドに到着するまでは、皆さんも気を抜かないでください」
「はい!」
元気に返事をすると、オレたちはドラゴンを倒した高揚感でウキウキしながら帰路についた。いや~、やっぱ強くなってんなオレたち。この調子でガンガンレベルアップしてやるぜ!
滞っていた返信がようやく書けました。大幅に遅れてしまいすみません。
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