4-11 みんなで昼食!
そろそろお昼にしましょう、というセルヴェリアさんの一言で、オレたちは昼飯を食うために場所を移動することにした。
いやー、まったく、オレたちも強くなったもんだぜ。この階の敵を、だいたいオレたちだけの力で倒すことができるんだから。デスサイズとかいう大カマキリのカマとステラの斧ががっちゃんがっちゃんいってたのはスゴい迫力だったぜ。
でも、弓兵が増えるだけでこんなに違うんだな。おかげで空の敵にも対応できるし、リアも前線に出たり後衛からナイフ投げたり、戦術がすごい多彩になったよ。
さすがにレッサードラゴンだけは危ないからって、セルヴェリアさんが片づけてくれたけど。あいかわらず強すぎだよこの人! ドラゴンが口開いて火を噴こうとしたころには、槍の乱れ打ちが決まって跡形もなくなってんだもんな。おまけにステラに向かって「あなたもどうですか?」とか言い出すし。ムリだよ、そんなモン! で、でも、いずれステラもあんな修羅のような強さになるのかな……。
そんなこんなしてる間に、見晴らしのいい開けた場所にやってきた。ここって、この前もお昼食った、セルヴェリアさんのお気に入りスポットだよな。
ステラとベティちゃんも、思わず感嘆の声を漏らす。
「わあ……。素敵なところですね、セーラさん」
「あたりが見渡せるから、敵に不意を突かれる心配もない……。さすがです」
照れているのか、無表情にこくりとうなずくと、セルヴェリアさんが荷物からレジャーシートを取り出して芝生の上にていねいに敷く。いや、レジャーシートって言うのかどうかは知らないけど。
オレたちもシートを出して敷いていく。セルヴェリアさんの隣にはステラ、さらにその隣にベティちゃん、そして向かいにはオレとリアが座った。
今日もセルヴェリアさんは背筋を伸ばして正座している。オレとリアもそれにならって慣れない正座をする。
ステラとベティが不思議そうな顔でオレたちを見つめてくる。
「不思議な座り方ですね。何かの修業の一環なんですか?」
「修行と言えば修行かな……。正座っていう座り方だよ」
まあ、こっちで正座っていうかどうかは知らないけどな。
「そうなんですか。では、私もやってみますね」
興味深げにそう言うと、ステラがオレたちのマネをして正座する。おお! 太もものお肉がムチッとして超イイ眺めだ! ビキニアーマー万歳!
ベティちゃんも興味をそそられたのか、同じように正座する。なんかお茶会みたいなフインキになってきたな……。
それぞれ持参した弁当を取り出すと、手を合わせていただきますとあいさつをする。あいかわらずセルヴェリアさんの弁当はかわいらしいな、くるんでる布とか……。
「私、今日はいっぱいお弁当作ってきたんです。よければ皆さん召し上がってください」
おお! ステラの手料理! 食う! オレ、食う食う!
オレが光の速さでステラの弁当に手をのばしていると、セルヴェリアさんも少し大きめの弁当箱を取り出した。
「私も多めに作ってきましたので、よければどうぞ」
「は、はい! ありがとうございます!」
「ありがたくいただきます!」
オレとリアは、お礼を言うとイモの煮っころがしみたいなヤツにフォークをさしていく。パクッと一口……うん、やっぱウマい。
セルヴェリアさんが聞いてくる。
「お味はどうですか?」
「ウ、ウマいっす……マジで」
「ホントだよね、不思議なくらいおいしいです」
それに興味を惹かれたのか、ステラもイモに手をのばす。
「私もいただいていいですか?」
「もちろんです、どうぞ」
セルヴェリアさん、無表情だけど顔が赤くなってる……。ちょっとかわいいかも。
ステラはイモを一個フォークにさすと、ゆっくりと口の中へ入れていく。セルヴェリアさんがめっちゃステラを見つめてる……。これは殺気じゃなくて緊張なんだよな、多分。さて、グルメなステラさんが何と言うか……。
じっくりと咀嚼すると、ステラはほうっ、と一つ息をついた。
「なんて優しい味……。しっかりとだしのきいた味つけ、ふわりと崩れたかと思うと、イモ本来の甘みがほのかに口内に広がっていく……。下ごしらえもていねいになされているのがわかります。作った方のお人柄がうかがえる一品です。セーラさん、素晴らしい腕前です!」
「確かにステラさんの言う通りですね。シンプルなだけに、作った方の技量がはっきりとわかります」
いつの間に食べたのか、ベティちゃんもうんうんとステラに同意する。うちのパーティーきってのグルメさん二人がこれだけ褒めるんだから、きっとホントにウマいんだろうな。
対抗心をくすぐられたかのように、ステラが自分のバスケットをまんなかに置く。
「私はクラッカーに合わせるジャムとペーストをいくつか作ってきました。さあ、どうぞ召し上がってください!」
「お、おう、サンキュー」
「う、うん、それじゃもらうね」
ステラの押しに何となく気圧されて、オレたちもクラッカーを手に取る。おお、確かにこのペースト、いい感じに塩っ気があってウマいな。オレ、別に弁当持ってこなくてもよかったかも。
セルヴェリアさんもステラのクラッカーに舌鼓を打ってる。
「どれもおいしいです、さすがステラさんです」
「そんな、セーラさんほどの腕をお持ちの方にそう言われると恐縮です……。今度私にもそちらのお料理を教えていただけませんでしょうか?」
「はい、喜んで! 私にもぜひこの料理の作り方を教えてください!」
仲がいいね、この二人……。初めからステラがいっしょなら、話は早かったんだろうなあ……。
ぽかぽかと暖かい草むらの上で、オレたちは先ほどまでの戦いがウソのようにのんびりと昼メシを楽しんだ。あー、オレ、ステラみたいに料理がうまい彼女とつき合いたいな~。




