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4-9 や、やっぱりコワいなあ……





 『氷帝』がまさかのステラの知り合いだと判明し驚くオレたち。

 受付のカウンターでは、そのステラと『氷帝』が何やら昔話に花を咲かせていた。

「驚きました。セーラさん、こんなにご立派に成長されていたんですね」

「それは……はい、目標がありましたから」

「目標?」

「はい……私も、あなたみたいな冒険者になりたいと思って……」

 え、マジで!? 今の『氷帝』があるのはステラのおかげってこと? ウソだろ!? ステラさんってそんなスゴいお方だったのか!

「あの日あなたに会った日からがむしゃらにがんばったんです。でも、ずっと一人でやってきたせいか、人と話すのが苦手になっちゃいまして。お話しないから声もあんまり出なくなっちゃいました」

 そ、そうなの? 声が出ないとかいうレベルじゃない気がするんだけど。

 でも、そう考えると初めて会ったころのステラに近い感じなんだな……。それを百倍くらい極端にしたらこうなるんだろうか。

「そうだったんですか。今ではセーラさんの方がずっとご立派ですもんね。今日はいろいろとご指導お願いします」

「いえ、そんな! 恐縮です! こちらこそよろしくお願いします!」

 ぶるるっ! しゃべってることがわからなかったら、めっちゃうなって威嚇してるようにしか見えねえ! し、しかし、こんなに謙虚な人だったんだな、『氷帝』さん……。

 そこに、アンジェラが口をはさんだ。

「昔話もいいけれど、そろそろクエストに向かったらどうかしら? 他の子たちが退屈してるわよ?」

「あ、そうですね、皆さんすみません!」

「い、いえいえとんでもない!」

 あわててこちらに頭を下げる『氷帝』――セルヴェリアさんに、オレたちも反射的に頭を下げる。だって、やっぱコワいんだもん!

 それでも、オレはおそるおそる聞いてみる。

「あ、あの~、今日はどちらに向かうんでしょうか……?」

「はい、もしよろしければ、前にお約束した通り五十二階に皆さんをお連れしますけどどうしましょうか」

「いや、ムリムリムリムリ!」

 セルヴェリアさんの言葉に、オレとリア、そしてベティちゃんまでもが首を左右にブンブンと振る。いや、確かにアンタがいれば一人で片づけちゃうんだろうけど!

 オレらの気持ちをくんだのか、ステラがセルヴェリアさんに提案する。

「それでは、私たちだけの力でも戦えそうな階はどうでしょう? 前回はほとんどセーラさんが倒してくれたと聞いてますので、今日はセーラさんをお手本に私たちが戦ってみるというのがいいかなと思うんですが」

「あ、確かに前回は私が何かとしゃしゃり出てしまいましたね。皆さんすみません」

「いえいえ! ぜーんぜんお気になさらず!」

 無表情ながらめっちゃ申し訳なさそうに言うセルヴェリアさんに、オレとリアが声をそろえて言う。てか、前回はオレらにまかされてもムリだったから!

「では、どの階に行きましょう? セーラさんの見立てではいかがですか?」

「そうですね……。前回のお二人の戦いぶりと、ステラさんのお力、そして弓兵のベティさんの存在を考慮すれば、この前の五十階がちょうどいいのではないでしょうか」

「いやいやいやいや!」

 どこをどう見ればそういう判断になるんだよ!? あの階メチャヤバかったじゃねーか! アンタ、絶対ステラの力を自分並みと思って計算してるよな!?

 でも、ステラは笑顔で頭を下げた。こ、これはイヤな予感……。

「ありがとうございます。あなたがそうおっしゃるなら、間違いないでしょうね」

「それについてはわたしも同感です。どうぞよろしくお願いいたします」

 って、えー―っ!? ベティちゃんも賛成するのー!? こ、これじゃ断りにくい……。

「あの、ダメでしょうか……?」

「え!? いえいえ、全然問題ないっすよ! オッケーオッケー!」

「ちょっ、ルイ!?」

 無表情に問われ、オレは思わずオッケーしちゃった! ニラむなよリア! だって、やっぱコワいんだもん!

 セルヴェリアさんに見つめられ、リアもあわてて「わ、私もそれがいいと思ってたところなんですよー! あははははー!」とか言ってる。な? メチャコワいだろ?

 オレたちからの承諾(?)もとれ、ステラが嬉しそうに言う。

「では決まりですね! 特訓、みんなでがんばりましょう!」

「そうですね、わたしも腕の見せどころです」

「そ、そだね……えい、えい、お~……」

「えい、えい、お~……」

 すっかりやる気のステラとベティちゃんを前に、オレたちも二人で覇気のないえいえいおーをやってみる。うう、マジで行くのかよ……。

 アンジェラが受付から顔を出して声をかけてくる。

「セーラがいるから心配はしてないけど、気をつけるのよー」

「は~い……」

「はい、ありがとうございます」

「それでは行ってきます」

 口々に言うと、オレたちは例の五十一階行きゲートの方へと歩き出した。うう、オレとリア、これじゃまるっきり劣等生だよな……。


 そして、例のゲートに近づくにつれてヤな空気が伝わってくる……。

「やっぱ、行くんすよね……」

「はい、皆さんのお力なら大丈夫です」

 オレのつぶやきに、セルヴェリアさんがニコリともせずに言う。悪気があるわけじゃないってわかったけど、なんかビクっちまうなぁ……。

「皆さん、がんばりましょうね」

「あ、ああ……」

 ステラ、ホントにやる気だな……。まあ、嬉しそうだからいっか。セルヴェリアさんと会えてよっぽど嬉しいんだろうな。

 ベティちゃんも、ビビリつつもトップランカーといっしょにクエストできるのが楽しみっぽいし……。1,5メートルくらい離れつつも、少し尊敬の目でセルヴェリアさんのこと見てるよ。

「オ、オレらもがんばるか……」

「う、うん……」

 オレもリアと顔を見合わせてうなずく。オレたちだけやる気ないってわけにもいかないもんなぁ。よーし、やってやるか!


 分厚い扉を開けると、オレたちはセルヴェリアさんに続いてゲートへと入っていった。




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