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4-6 いよいよお引っ越し!





 引っ越しの日。オレは荷馬車と共にマンション? の前にやってきた。


 荷馬車と引っ越しのお手伝いさんは王様が手配してくれたみたいだ。おかげでオレはちょっと指示出すだけで終わっちゃった。元々大してものがない家だったしな。

 さてどうしようかと思っていると、オレが来た方の道から荷馬車がやってくるのが見えた。

「ルイー、おはよー」

「ああ、お前も来たか」

 荷馬車と並んで歩いてきたリアが手を振ってくる。今日はまずオレとリアが引っ越す手はずになっていた。

 それにしても……。

「私たち、こんな家に住んでホントにいいの……?」

「だ、だよな……」

 目の前にそびえる建物を前に、二人して弱気なことを言う。

 ここ、王城への大通りとギルド前の大通りが交差する地点から少しギルド寄りにあるんだけど……。ここってスッげえ一等地だよな……。交差点のいつもの噴水がすぐ向こうにあるし。

 そして、この建物……。スゲえ高そうな石造りの建物なんだけど……。五階建てでスゲえデカいし……。壁がなんか白く光ってる。入り口には衛兵っぽい人までいる。こりゃ警備もバッチリだよ。

 オレたちがビビって建物の前でしばらく突っ立っていると、中から赤毛のお姉さんが出てきた。

「あら、あなたたち、いらっしゃい」

「って、アンジェラ!?」

「なんでアンジェラがここにいるの~!?」

 驚くオレたちに、アンジェラがウィンクしてみせる。

「私、住みこみでここの管理人をすることになったのよ。これからはよろしくね」

「ええーっ!?」

 いつの間に!? てか、聞いてねーぞそんな話!

「で、でもギルドの仕事はどうするんだよ?」

「もちろん続けるわよ。でも、半分あなたたちの専属スタッフに近い形になるわね。ここの管理人も私一人だけじゃないし」

「へえ、そうなんだ……」

「今後はお城からのお知らせもこちらに来ることになるし、私がいる時なら簡単な打ち合わせくらいはこちらでできるわよ」

「それは便利だな」

 てか、これも王様のしわざなのかね? 便利になるっぽいからいいけどさ。てか、知り合いがみんなここに集まってるな。

 立ち話もそこそこに、アンジェラが建物の二階を指さした。

「ほら、それじゃ引っ越しをすませちゃいなさい。二人とも二階よ。それじゃ、また後でね」

「おっす」

「はーい」

 うなずくと、オレたちは引っ越しの荷物を部屋へと運び始めた。


「ルイ~、引っ越し終わった~?」

「ああ」

 しばらく前に引っ越しを終え、とりあえずテーブルでお茶を飲んでると、扉を開けてリアがひょこっと顔を出した。だからノックくらいしろよ。

「すっごいよね~、この家。壁なんかピカピカだよ」

 ずかずかと部屋に入ってくると、当たり前のようにイスに座る。まあ、いいけどさ。

「でも、ルイの部屋はなんにもないね~。せっかく広いのに」

「ほっとけ!」

 マジで広いんだよな、この部屋。てか、1LDKくらい? この部屋十二畳くらいあるのにイスとか棚くらいしかないからホントにスッカスカなんだよな……。ふとんは隣の部屋だし。

「お前こそ、ずいぶん時間かかってたな」

「そりゃ女の子だもん、いろいろ運ぶものがあるんですよーだ。あ、ルイは絶対入ってこないでね?」

「行かねーよ」

 てか、お前は勝手に入ってきてるのに不平等条約にもほどがあるだろ。

 そんなオレの目を完ペキにスルーしながらリアが脚をばたつかせる。

「この家さー、お風呂もおっきいんだよね~。ルイも見た?」

「ああ、見た見た。一階の大浴場だろ? あんなの城以外にもあったんだな」

「だよね~。あ、言っとくけどルイ、のぞいたら殺すから」

「のぞかねーよ!」

 まあ、男女間違えてラッキースケベはあるかもしれないけどな。うっかりステラの入浴中に入ったら、えへ、えへ、えへへ……。

「……ホントに殺すからね?」

「……はい……」

 見たかったなあ、ステラさんのおフロ。

「それにしても、ホントにいいのかなー。この家、一人暮らしにはリッパすぎるんだけど」

「だよな。オレ、あっちの寝室だけで十分なんだけど」

「この部屋なら家族で暮らせるよね~」

 そう言いながらなんにもないオレの部屋を見回していたリアが、棚の上で目線を止めた。

「あ」

「どうした?」

「ルイ、あれ……まだかざってくれてたの?」

「え? ああ、あれか」

 オレもそっちを見てみると、そこにはちょっとユニークな人形がちょこんと乗っかっていた。以前リアが誕生日にくれた、オレがモデルの人形だ。

「あれなら前からずっとかざってたけど? お前も見てたろ」

「そ、そうだったの? 片づけるのが面倒だからずっとほったらかしてるだけだと思ってた……」

「お、お前なあ……」

 これでもちゃんと手入れはしてたんだぞ? てか、そうしないとお前怒るだろ!

 そうツッコもうと思ったが、恥ずかしそうにもじもじするリアを見てその気がしぼんでしまう。

「べ、別にもう無理しないで捨ててもいいよ? こんな立派な部屋にあの人形じゃ、ルイも恥ずかしいでしょ?」

「いや、別に全然? むしろ毎日見てたら愛着わいてきたくらいなんだけど」

「そ、そうなんだ」

「それにせっかくお前からもらった誕生日プレゼントなんだし、捨てる気なんて全然ねえよ」

「そ、そう……」

 なんかリアが顔赤くしてうつむいてる。あれ、これってオレに処分してほしいってことなのかな? 人形の出来に満足いってないとか? うーん、オレはなかなかいいと思うんだけどなあ。

「もしかして、こうしてかざられると困るのか? でもオレあの人形捨てたくないし、どうしてもイヤなら人目のつかないところにしまっておくけど?」

「いや! かざっておいて! 手入れもしっかり!」

「あ、そ、そう、わかった」

 リアがビシッと手のひらを突き出す。うーん、あいかわらずこいつの考えてることはわかんねえ。

「まあでも、いつまでもあいつ一人ってのもちょっとさびしいよなあ。もしよかったら、また人形つくってくれよ」

「え? あ、うん、ヒマがあったらね。今度はどんなのがいい?」

「そうだな、あいつがオレなんだから、次はやっぱお前かな」

「え、わ、私!?」

 ガタンとテーブルを鳴らし、リアが自分を指さす。いや、他に誰がいるってんだよ。

「普通にいけばそうじゃないか? つくるのリアなんだし」

「で、でも、私でいいの? そ、その、ペアなんだよ? 他にもステラとかベティとかいるじゃん」

「ああ、それもいいな。この人形がだんだん増えていくのか。でもだったらやっぱ次はお前だろ。最初はオレとお前の二人だったんだし」

「そ、そっか……」

 両手の人さし指をいじいじしながらリアがつぶやく。あ、次はなんか動物でもつくるつもりだったのかな?

「じゃ、じゃあヒマがあったらつくってみるね。ヒマがあったらだよ? いつできるかはわかんないから」

「ああ、じゃあ気長に待ってるよ」

 オレが答えると、リアはイスから立ち上がって人形の方に近づいた。人形に手をのばすと、その頭をなでなでしながら笑う。

「よーし、それじゃ今度はキミの友だちを連れてきてあげるからね~。待っててね、ルイルイ~」

「ちょっと待て、そいつそんな名前だったのか?」

「そうだよ、知らなかったの?」

「知らねえよ! てか、名づけるのはオレじゃないのかよ!」

「あさってはステラが来るんだよね。引っ越し手伝ってあげないと」

 オレの言葉をスルーし、リアは部屋の扉へと歩いていく。

「それじゃ、またね」

「ああ」

「ルイルイもまたね。それじゃ、おじゃましました」

 ぺこりと頭を下げると、リアはパタンと戸を閉めて帰っていった。


 ……あいつがオレん家でちゃんとあいさつして帰るなんて、初めてじゃないのか? やっぱ家がリッパになったからかねえ……。





この話も、初めてウェブに投稿してから二年が経ちました。


当時はこのサイトの存在も知らず、こんなに長く続けることになるとは夢にも思っていませんでしたが、皆さんのご声援のおかげでここまで来ることができました。


これからも応援してもらえると嬉しいです。

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