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4-3 アンジェラって、実はスゴい!?





 オレは今、馬から落っこちないように王様の背中に必死にしがみついていた。王様の馬は猛スピードで大通りを疾駆していく。

 てか、ええ! ええよ、王様! 両サイドの風景がどんどん流れていくんだけど! ヘタしたら舌かんで死ぬ!

「ルイ君! そろそろギルドだよ!」

「ひゃ、ひゃい!」

 や、やっと着くのか! 早く降ろしてくれよ! もうオレ、限界……。

 間もなくギルドの正門に到着した。王様が馬を止める。

「到着ー! どう、どー!」

「はあ、はあ……」

 馬から降りるオレたちを、まわりの連中が何事かって感じで見てくる。後ろからハルミさんも馬で追いついてきた。

「さあ、中へ入りましょー!」

「う、うっす……」

 小さくうなずくオレの耳に、まわりの声が聞こえてくる。

「おい、誰かと思えばルイの奴じゃないか。ずいぶん派手な登場だな」

「なんだ? あのオッサン。寝巻のまま出てきたのか?」

「毎度お騒がせなヤツだな。今日は何をやらかしたんだ?」

「あんなメイドさん、うちのギルドにいたか……?」

「リアはどうしたんだ? さてはいよいよ見切りつけられたか?」

「マジかよ、じゃあ俺ステラちゃん誘おっと」

「バカ、俺が先だ! 誰がお前なんかに渡すか!」

「んだとコラ! やんのかオイ!」

 くっそ、黙ってれば言いたい放題言いやがって……。後でおぼえてろよ。

 好奇の目を無視りながらギルドの中に入っていくオレたち。まだちょいとばかり時間が早いからか、そこまで人はいない。

 と、いきなり王様が手をあげながら大声出し始めた!

「皆さーん、おはようございまーす! みんなの王様でーす!」

「な、なななっ!?」

 バカかこのオッサン、何大声で言ってんだ!? ただでさえ目立ちたくねーのに!

 案の定、ギルドのみんなの視線がこちらへと向かう。

「……誰だ、あのおっさん?」

「さあ?」

「国王陛下がそんなカッコでこんなところに来るかよ」

「ちょっと頭やられてんだよ、かわいそうに」

「あー、またルイが変なのつかまえたのか」

「あいつ、そういう才能でもあるんじゃないのか?」

 ……ちょっと待て、なんでオレが同情の目で見られてるんだよ!? いや、確かに被害者だけど!

 大声でまわりに手を振る王様に、オレも半分あきらめて受付の方へと向かう。

 受付ではアンジェラがお茶を片手に一息ついていた。オレたちに気づいたのかこちらを向く。

「まったく、朝から騒がしいわね……ぶうっ!?」

 そして、盛大にお茶を噴き出した。あわててハンカチで机の上をふく。

 と、王様がアンジェラを見て駆け出した。ちょっ、勝手に動き回んな!

「あー! こんなところにいたんだー! おはよー……」

 そんなことを言いながら、王様がアンジェラへと駆け寄っていく。え、何? 知り合い?

 そう思った瞬間、アンジェラが受付から飛び出してきた。てか、受付の机飛びこしてものスゴい勢いで王様の後ろをとったよ! って、ええええ!? 王様の首に腕まわしてはがいじめにしたあぁ!? そのまま王様の口をふさいじゃったぞ!?

「あ、あらおはようございます王様! お久しぶりね、うふふふふ!」

「もごっ、もが……」

 モガモガいう王様をガン無視して、アンジェラがギルドのみんなに大声で言う。

「みんな、この人は王様ってアダ名なのよ! ちょっと変な人だけど、私の知り合いだから気にしないでちょうだい! うふふふふ!」

 ま、まあ、誰もこのおっさんを本気で王様だとは思わないだろうけど……。てかアンジェラ、王様にそんなことしちゃって大丈夫なのか? ハルミさんが何もしないってことは、多分そういう仲なんだろうけど……。

 作り笑いを崩さずに王様の耳元で何かゴニョゴニョ言うと、アンジェラはようやく王様を解放した。

「そういうことですから、よろしくお願いしますね? 王様」

「ふぁ、ふぁい……。アンジェラちゃん……」

「はい、よろしい」

 うなずくと、アンジェラが受付へと戻る。今度はちゃんと机の脇から入っていった。てか、さっきのあの動きはいったいなんだったんだ……?

 アンジェラの受付に集まったオレたちは、さっそく彼女から質問を受ける。

「で、どうして陛下……王様がここに来ているわけ?」

「てか、アンジェラって王様と知り合いだったのか?」

「質問してるのは私よ?」

「ひっ! すいません!」

 きょ、今日のアンジェラ、なんかいつもと違う! よけいなこと言わないように気をつけないと!

「はいはーい! それは僕が説明しまーす!」

 わわっ、元気だな王様! 頼むから話をややこしくするのだけはやめてくれよ?

「今朝ルイ君が命を狙われたってお手紙をもらったので、僕は急いでハルミさんといっしょにルイ君の家へと直行したのです!」

「ええ、そこはわかるわ。ルイ君の件はギルドにも報告が上がってるし。で、どうしてあなたがここに来ているのかしら?」

 どうでもいいけど、アンジェラすっかり王様にタメ語になってるな……。

 王様が説明を続ける。

「それはですねー、これからルイ君にはリアちゃんやステラちゃんたちと同じ家でいっしょに暮らしてもらうので、その説明のために来たのです!」

「わー! わー、わー、わー!」

 なんだよその説明! 誤解を招くようなこと言うな! オレたちの護衛のためだろ! なぜ肝心なところを省く!?

 あわてふためくオレをアンジェラが冷静になだめる。

「大丈夫よ、ルイ君。どうせまた肝心なところをはしょってるんでしょうから」

「ア、アンジェラ……」

 わかってくれますか! さすがアンジェラ、大人の女!

「そんなわけで、僕はこれからリアちゃんたちが来るのをここで待つつもりなのです! ね、わかった?」

「はいはい、わかりました。それじゃお茶入れてくるから、あなたたち少しここで待ってなさい」

「ああ、サンキュー」

「はーい!」

「ありがとうございます」

 気がきくねえ、アンジェラは。とはいえ、仮にも王様を立たせっぱなしで待たせるっていうのは、アンジェラも肝がすわってるというかなんていうか……。


 そのあとしばらく、オレたちはお茶を飲みながら他のメンバーの到着を待った。どうでもいいけどあいつらびっくりするだろうなあ、ギルドで王様見たら……。




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