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4-2 急に引っ越しとか言われても!





「ってわけなんで、オレは大丈夫っすよ」

「そうだったんだぁ、よかったぁ~」

 朝から全開の王様になんとか落ち着いてもらおうと、お茶を入れて説明すること数十分。ようやくわかってくれたのか、王様はほっと息をつきながらお茶をずずっとすする。はあ、オレもようやく一息つけるぜ。

「でもホント、ケンちゃんにお願いしておいてよかったよ~。ルイ君の危機にすぐ駆けつけるなんて、さすがケンちゃん!」

 王様が嬉しそうに言う。まあ、オレもマジ助かったけど。

 ただ、ちょっと気になることがあるんだよな……。

「王様、ちょっと聞きたいんすけど」

「ん~? なになに?」

「その、拳王さんにお願いしたって話っすけど、もしかしてオレって今までずーっと拳王さんに監視されてたんすか? てか、ひょっとしてご近所に住んでるんすか?」

 それが気になってたんだよ。だって来るの早すぎんじゃん! ヤダよオレ、今まで知らない奴にずっと監視されてたとか!

 だけど、王様は笑いながら答えた。

「ずっと監視~? あはははは、ないない! 別にケンちゃんはルイ君のそばにいるわけじゃないし、ご近所さんでもないよ!」

「え、でもだったらどうして……?」

「ケンちゃんは気の流れが読めるんだよ。だから何か異変があれば気で察知して反応できるんだって言ってた!」

 な、なんじゃそりゃあああ!? 気の流れを読むとかエスパーかよ! そういや、拳王もなんかそんな感じのこと言ってた気がするな……。ただの中二じゃなかったのかよ。

 ま、まあ、どうやら四六時中監視されてるわけじゃないらしいからいいんだけどさ。

「それよりも!」

「うおっ!? なんすか王様、いきなりデカい声出さないでくださいよ!」

「ルイ君! 実際に命を狙われたとあっては、これからはもっとちゃんとした警備をつけないといけないよ!」

 そう言うや、立ち上がった王様が大演説を始めた。

「このおうちも素敵だけど、警備するにはちょっと不向きだよ! ルイ君、そろそろ引っ越ししてもいいんじゃない? どこがいいかなー? そうだ! いっそお城の敷地にルイ君のおうち建てよっか! そうだ、そうしよう! そうすればみんなも警備しやすいよ! いや、いっそ僕が毎日ルイ君を守ってあげるからね!」

「いやいやいやいや! ちょっと待ってくださいよ!」

 勝手に話進めないでくれよ! てか、城の敷地に家建てるとか何言ってんだよ!

「そんなんダメっすよ! てか、オレの神経がもたねーし!」

「えー? そんなこと言わないでさー。マリちゃんだってきっと毎日遊びにいくよ?」

「マリ様が!?」

 ぐっ、それはちょっと、いや、チョー魅力かも? いやいや待て待て、だまされねーぞ。それ王様がそう言ってるだけじゃん。仮に王様がホントにオッケーしたとしても、王妃様がオッケーするとは限らんし。てか、どう考えてもアンタが毎日入り浸る未来しか見えねーよ!

「ダメダメ、ダメっすよ。オレはまだ半人前っすし、みんなだって納得しないっすよ」

「えー? そうかなぁ~? しょぼ~ん……」

 実に残念そうに、王様ががっくりと席に着く。ああ、なんだかすいませんね……。

 と思ったのもつかの間、王様がずいと身を乗り出してくる。ち、けーよ!

「じゃあさじゃあさ、城の外でいいからみんなで住めるようなおうちをつくってあげる! それならいいでしょ?」

「え、だからほら、そういうのは……」

「ダメだよルイ君! これは警備上の問題なんだから! キチンとしたセキュリティの家に引っ越してもらわないと困るし、関係者もなるべく同じ家に住んでもらった方が安全だから!」

 う……。安全のためって言われると、さすがに反論できねえ……。で、でも、わざわざ建ててもらうのはさすがにちょっと……。

「じゃ、じゃあ王様、こういうのでどうでしょう? オレたち同じ建物に引っ越しますから、そこを警備するってのは? なんかマンションやアパートみたいな物件があればプライバシーも守られますし」

 てか、いきなり女の子と同じ部屋ってのはハードル高いんだよ! 今朝の夢みたいなのはもっと経験値が上がらないとムリだって!

 王様も納得してくれたのか、うなずきながら言った。

「なるほど~。確かにそれなら悪くないね。うん、わかった! それじゃそうしよう! あ、物件探すのはこっちでやってもいい? 警備しやすいところの方がいいからね」

 はあ~、よかった、王様駄々こねなくて。あ、でもリアやステラに言わないでオレだけで決めるわけにもいかないよな。特にリアとか超怒りそうだし。

「じゃ、じゃあそれはお願いします。いくつか候補があると嬉しいかもっす。あ、でもリアたちにも相談しないと……」

「うんうん、わかってる! みんなにはこれから僕が説明するよ!」

「そっすか、あーよかった……って、僕が説明?」

 首をかしげるオレに、王様がすっくと立ち上がった。

「そう! これからギルドに行って、僕が直接説明します! さあルイ君、早く準備して! すぐに出発するよ!」

「えっ、ええええ!?」

 ちょっ、ちょっと待ってよ王様! 服は昨日着替えずにそのまま寝ちゃったからこれでいいとして、あとは竪琴を……。

「準備はいい? ルイ君!」

「ええ? ま、まあ一応大丈夫っすけど……」

「じゃあ行こう! さ!」

 そう言うと、王様はオレの手首をむんずとつかんで外へ連れていこうとする。え、マジでもう行くの!?

 外に出て、なぜかうちのカギを持っているハルミさんがカギをしめると、王様がうちの前に止まっていた二頭の馬のうち、黒い方に声をかける。

「黒竜号、スタンダップ!」

 王様の声に、馬が立ち上がる……って、デ、デケええええ! フツーの馬より二回りはデカいぞ、多分! オレ生で馬見たことないけど!

「ささ、ルイ君も後ろ乗って!」

 王様は意外にもひらりと身軽に馬に乗ったかと思うと、上から声をかけてきた。いやいや、こんなデカいのムリムリ!

「ム、ムリっすよ王様! どっからのぼればいいんすか!」

「あ、ルイ君馬ははじめて? それじゃ両手を貸して!」

 言われるがままに手を差し出すと、王様はひょいとオレを引っぱり上げて後ろへと乗せた。お、王様、意外とパワーあるな!

「それじゃいくよ! しっかりつかまっててね!」

「え、いや……ぎゃああああ!」

 オレが口を開きかけたとたん、馬が猛然と走り出した! ひいいいいい! ええ! けえ! ええ! オレは必死に王様にしがみついた! これ、落ちたら死ぬ!

「ハイヨーハイヨー! さー、走れ黒竜号ー!」

 王様は楽しそうに馬を走らせてる! 誰か助けて! オレ、このままじゃギルドに着く前にチビっちゃうよ!





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