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4-1 朝からいったい何事!?





「ルイ~、ごはんできたよ~」

「おう、今行く」

 リアに呼ばれ、オレはふっかふかのソファから身を起こして食卓へと向かう。

 東京都港区のタワーマンションに住んでるヤツが使ってそうなオシャレなテーブルの上には、すでにウマそうなサラダやらステーキやらスープやらワインやらが並んでいた。

 テーブルのそばにはエプロン姿のリアとステラが立ち、オレが席に着くのを待っている。着てるものもユナイブラックで売ってそうなカジュアルな夏物だ。裸エプロンとまではいかなかったが、なかなかにナイスな眺めだぜ。

 オレがイスに座ると、両脇からリアとステラがはしで食べ物を差し出してくる。

「はいルイさん、あ~んです」

「お、おう、あ~ん……」

「も~、こっちが先だよ~。えい」

「ぐっ!」

 おい、むりやり横から詰めこんでくんな! 危ねーだろが! ああ、でもウマいな、むぐむぐ……。

「もう、リアさんったら。はい、もう一度です。あ~ん」

「あ~ん……」

 おおおおおっ! ステラさんの「あ~ん」! マジ女神! ウメえ、ウメえよ!

 デレデレしながら二人に交互にあ~んしてもらってると、いつの間に現れたのか、リアたち同様に今風のオシャレな着こなしをしたベティちゃんとアンジェラ、そしてマリ様がオレの脇に立っていた。

「よかったわね、ルイ君。私からも、はい、あ~ん」

「デレデレして、みっともない……。し、しかたないですね、わたしも一口ぐらいは差し上げてあげなくもないです。あ、あ~ん……」

「ルイ様、わたくしも、よ、よろしいでしょうか……。あ、あ~ん……」

 うっひょー! 天国! マジ天国! パラダイス! どうしたオレ!? マジ勝ち組すぎるんだけど! ハーレム万歳!

 と、ステラがかがんでもじもじしながら上目づかいに聞いてくる。

「あ、あの、ルイさん、もしよければ私の……く、くちびるも召し上がってみませんか?」

「く、くち!?」

「あー、ステラずるーい! 私が先ー!」

「ダメよ、まずは大人の女性が教えてあげるべきだわ」

「くっ、これ以上遅れをとるわけにはいきません! わたしが先です!」

「わ、わたくしだって負けません!」

 うおおお!? なんだコレ!? みんなが我先にと争うようにオレにキスしようとしてるぞ!? よ、よっしゃ! オレも男だ、まとめて相手してやるぜ! は、初めてだからやさしくしてね?

 そ、それじゃ、目をつぶって、むちゅぅ~……。といいつつ、ちょっとだけのぞいちゃお。女の子がキスする時の顔って、ど、どんななのかな……。

 大いなる期待に胸躍らせながら、うっすらとまぶたを開いたオレの目に飛びこんできたのは……迫りくる王様の顔面だった。

「ぶっちゅ~ぅ……」

「ぎゃああああああぁぁああああぁぁぁぁ!?」


 ガタッ! オレは思わず上半身を跳ね上げる! ……って、夢……!? 体中汗でべっとりだぜ。し、死ぬかと思った……。

 と、うちの扉がドンドンと叩かれる!

「ルイ君! ルイくぅ~ん!」

「ぎゃああああぁぁぁああああ!」

 やっぱ夢じゃなかったのか!? 王様が来てる! コワい! 王様マジコワい!

「ちょっ、ルイ君!? 今の悲鳴は何!? ハ、ハルミさん、緊急事態だ!」

 って、あれ? なんだ、何がどうなってる? マジで王様が来てるのか? なんで?

 そう思った次の瞬間、スゲえ音を立ててうちのドアがぶち破られた! えーっ!? 今度は何事!?

「ルイ君! だ、大丈夫!?」

 玄関に目をやると、そこにはドアを蹴破った姿勢のままのハルミさんと、めっちゃ心配そうな顔の王様の姿があった。

 って――ええええ!? アンタたち、何いろいろとやってくれちゃってんだよ!? オレはあわてて立ち上がると玄関へと向かった。

 扉のない玄関から外を見れば、案の定ご近所さんやら通りすがりの野次馬やらがこっちを見てる……。王様、馬で来たこともあってスゲー目立ってるし……。

「またあの家か」

「あの人、こんな時間から大声上げて……」

「あの女、扉を蹴破ったぞ? こんなところであんなカッコして、何者なんだ?」

「オッサン、朝っぱらからうっせえよ……」

 ああああ……。なんか二人の見た目も相まって、カオス度がより一層増幅されてる……。ハルミさんはいつものメイド服だし、王様はなんか昭和のお笑いで大御所芸人さんが着てそうな、白いオヤジタイツみたいなの着てるし……。

「ねえ! ルイ君……」

「と、とりあえず! 二人とも中に入ってください! 中で話しましょ! ね!」

「え! ルイ君のおうち、入っていいの!? わーい、おじゃましまーす!」

「それでは、失礼いたします」

 何が楽しいんだか、王様が心底嬉しそうに家の中へと飛びこんでくる。近所の目を気にしながら、オレも中へと入った。


 冷静に考えてみると、こんなところに王様を入れちゃっていいのか……?

 一応そこそこ掃除はしてるけど、ホントになんにもない家だし……。幸か不幸かエロ本やエロビデオはこの世界にはないっぽいから、万一王様が部屋を荒らしだしてもイケナイものを発見される心配はないけどな。

 とりあえず王様にはイスに座ってもらって、オレは今お茶の準備をしてる。ハルミさんは壊した扉の修理をしてるところだ。なんでもできるんだな、あの人。

「王様、お茶できたっすよ」

「わーい! ルイ君が入れてくれたお茶だー!」

 何がそんなに嬉しいんだよ、この人……。まあいいけどさ。

 お茶を注いで席に着くと、オレは王様に聞いた。

「で、今日はなんの用なんすか?」

「そうだった!」

「うおっ!?」

 なんだよ王様! 声デケーよ!

 驚くオレなど気にもとめず、王様が身を乗り出した。

「ルイ君、昨日命を狙われたって聞いたよ! 大丈夫?」

 はて、命……? 昨日はなんかあったっけ……? そういや確か寝る前に……。

「ああああ――っ!」

「ひゃあぁ!」

 オレの大声に、思わず王様がイスごとひっくり返る。ヤ、ヤベ!

「お、王様、大丈夫っすか?」

「へーきへーき、ちょっとびっくりしただけ」

 いたた……と腰をさすりながら身を起こし、王様がイスに座りなおす。腰大丈夫かな……。ちょっとだけ心配だ。おっさんだし。

 てか、夢のインパクトがデカすぎてすっかり忘れてたよ! そうだ、オレ昨日殺されかかってたんだった! なんとか助かったけど、疲れでそのまま寝ちゃったんだよな。

「王様、なんで知ってるんすか?」

「今朝早くに手紙が届いてたんだよ、ケンちゃんから」

「ケンちゃん?」

 首をひねるオレに、いつの間に戻ってきたのかハルミさんが教えてくれた。

「ケンちゃん、というのは拳王殿のことです」

 拳王のことかよ! フレンドリーすぎんだろそのアダ名!

「で、急いでここにやって来たんだよー!」

「だからそんなカッコなんすか……」

 着替えてくれよ、頼むから! 恥かくのオレなんすから! あんだけ騒ぎになったらもう手遅れだけど!

「ま、まあオレはその拳王さんのおかげで無事だったっすけどね」

「ホントによかったよー!」

「うわぁっ!?」

 王様がオレに抱きつこうとしてまたイスごとひっくり返る。一瞬今朝の夢がフラッシュバックして、背筋がぞぞっとした。

 すっころんだまま、王様が半ベソかきながら言う。

「ルイ君にもしものことがあったら、僕もマリちゃんも悲しいよー!」

「だから大丈夫っすから! ちょっと落ち着いてください!」

「ぐすん……」

 ハルミさんに手伝ってもらいながら、王様が再度イスに座りなおす。まったくこの人は……。


 そんなわけで、オレは朝から困った客人の対応に追われることになった。




お待たせしました、第四章の始まりです。

人数も増えてきたルイ一行もとい『夜明けの詩』一行を、より魅力的に書いていければと思います。


今後は仕事の関係で投稿ペースがゆっくりになりますが、どうかおつきあいいただければ幸いです。

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