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3-16 もしかしてこれ、マジでヤバい……!?





 楽しいパーティーもあっという間に終わってしまい、オレたちは帰るしたくをしていた。

「みんな、今日は泊まらないの?」

「は、はあ、今日は帰らせてください」

 クエスト終わったばっかで王様の相手をし続けるのはツラいしな。

「皆さん、今日はありがとうございました。本当に楽しかったです」

「こ、こちらこそ! チョー楽しかったっす!」

「お誘いありがとうございました!」

「大変貴重な時間をありがとうございます!」

 マリ様の言葉に、オレたちが口々に叫ぶ。あー、この部屋になら一生泊まってもいいのになー。

 もちろんそんなわけにもいかないので、今日のところはこのあたりでおいとまする。

「それじゃオレたち、そろそろ帰りますね」

「うん、今日はお仕事ありがとねー!」

「また遊びに来てくださいね」

「はい! もちろんっす!」

 マリ様に声をかけられると、つい大声になっちゃうぜ。

「いいなー、マリちゃんは元気に返事してもらえて」

 す、すいませんね。別に王様がキライなわけじゃなくて、男ってのはこういう生き物なんすよ。

 あいさつをすませると、オレたちは後ろ髪ひかれる思いでマリ様の部屋を出た。途中ステラが着替えるのを待ち、ウェインさんに案内されて城門までやってくる。

 ウェインさんにお礼を言って城を出ると、外はもうだいぶ暮れかかっていた。

「あ~、おいしかった~」

 リアがそう言いながら腹をさする。さすがに少しは学んだのか、今日はアホみたいに食いすぎることはなかったようだ。

「本当においしかったですね。ベティさんもいれば存分に語り合えたのですが……」

 ステラも残念そうにそんなことを言う。すいませんね、いっしょに語り合えるほどの語彙と味覚を持ち合わせてなくて。

「それはそうとルイさん」

 大通りを歩いていると、ステラが急にこっち向いてオレの目を見つめてくる。え、何? 告白?

 などということはなくて、なんだか少し怒ったような感じでオレに言う。

「王女様の前ではあんまり浮かれすぎないでくださいね? お顔もゆるんでますし、声もいつもより少し大きいですよ?」

「あー、それ私も思ったー。ルイってば、態度に出すぎー」

 う、その話か。事実なだけになんにも言い返せねえ……。リアまで乗っかってきやがるし。

 あー、でもふくれっつらのステラさんもかわいいなあ。これってやきもちか? いやあ、モテる男はツラいなあ。

「ルイさん、ちゃんと聞いてますか?」

「ひっ! ごめんなさい!」

 珍しく少し語気を荒げるステラに、オレは思わずマジ謝りする。と、年上のお姉さんって、怒るとええ!

 ふう、と一つため息をつくと、ステラはいつもの調子に戻って言った。

「まったく……。約束ですよ?」

「あ、ああ。オレも男だ、約束は守るぜ」

 実績はほとんどないけど。


 噴水のところでステラと別れると、オレとリアは家の方へと歩き出した。

「ステラが怒るなんてよっぽどだよ? ルイも少しは反省してよね」

「わ、わかってるよ」

 なんか理不尽な気もするんだけどな、あの怒られ方は。いや、モテてる感を味わえるからいいんだけど。てか、プリプリしてるステラがかわいいからむしろ嬉しいんだけど。

 まあ、人間関係が難しいってのは前のサークルでよく学んでるけどさ。嫉妬どころか二股三股、寝取り寝取られとエロゲもびっくりな奴らが何人かいやがったからな。おかげで周りのオレたちは苦労しっぱなしだったぜ……。

 ま、オレはハーレムつくるけどな!

「絶対反省してないでしょ、あんた……」

「え!? い、いや? 気をつける! オレめっちゃ気をつけるから!」

「ふーん……」

 なんだよ、その疑いの目は! まあそれもごもっともだけど! 肝心のオレが全然自信ないし。

 その後しばらく小言を聞いていると、少し話を変えるようにリアが言った。

「ところでさ、今日マリ様に謝るところあったじゃん。オレがほめたたえるとかキモいよね、ってやつ」

「ああ、あったな……」

 あんま思い出したくないんだけど、それ。てか、オレこれからこいつに「マジでキモいからやめてよねーああいうの、キモいから」とかギャーギャー言われるの? やだなー、早く帰りたいなー。

 しかしオレの予想に反し、リアは少し遠慮がちにぼそぼそとつぶやきだした。

「あのさ、ルイはあんな風に言うけれど、私は別にキモくないと思うよ」

「え?」

「私らの歌だっていつも真剣につくってくれるじゃん? だからその、ルイが一生懸命歌をつくるのって、みんな嬉しいんじゃないかな……」

 ど、どうしたんだ? かき氷食いすぎて頭まで冷えちまったのか?

 てか、すまんリア! お前の応援歌だけは、めっちゃ手抜きでつくった歌なんだ! こいつがそんな風に思ってたなんて、なんかスゲえ罪悪感が……。

「ちょ、ちょっと、なんか言ってよ」

「あ、ああ……サンキュー」

「ふ、ふんだ、ルイのことわかってくれる人間なんて私くらいなんだから、しかたなく言っただけだもん、しかたなく」

 そんなに繰り返さなくてもいいから。しかしこいつがそんな風に思ってたとはな……。すまん、お前の応援歌だけ手抜きで! 歌う時はいつも気合入れてるから許してくれ! 今度新しい歌つくってやるから!

 その後なんか変な空気になったままリアと別れ、オレは家へと帰った。




 そして、夜になった。昼間はクソ暑いけど、夜は結構ひんやりするんだよな。東京の夏とはエラい違いだぜ。

 さーて、そろそろ寝るか。今日はクエストと王様とでスゲー疲れたし。

 この家ってなんにもないけど、結構広いんだよな。いや、初めはなんじゃこりゃと思ったけど、こっち基準じゃなかなかなもんなわけよ。ルイ(こいつ)の兄ちゃんのシャルルがそれなりの冒険者だったからか、住環境にはわりと恵まれてる。

 ただなー。この頃ご近所の目が気になるんだよな……。朝っぱらから馬車が来たり真夜中に王様が来たりするからさあ。そろそろ引っ越しとか考えた方がいいのかもな……。

 それじゃ、寝る前にちゃんと明かりを消しておかないとな。火事になったら困るし。

「そうそう、戸締りと火の用心は大事だよな」

「わかってるっつの、言われなくたって」

 ホントいちいちうるさいな、お前は……って、リアがいるわけねーぞ、おい!? てか、男の声!?

 あわてて声がした方へ振り向くと、そこには壁にもたれかかってニヤニヤと笑う軽装の男の姿があった。しかも右手の上で、よく磨かれてるっぽいナイフをくるくる回してやがる。


 え……何? ウソウソ、ひょっとしてオレ、今超ピンチ!?



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