3-15 かき氷と、マリ様との大事な約束!
そうこうしているうちに、お待ちかねのかき氷がやってきた。
メイドさんたちが、オレたちの前に一つずつていねいに置いていく。さすがに手際がいいな。そしてメイド服もイイ!
目の前のかき氷は、前に食ったヤツよりも気持ちふわっとしている、ような気がする。自分たちで取ってきた氷なだけに、なんとなくうまそうだな。
「ベティも来れればよかったのにね~」
「本当に残念ですね」
リアとステラが残念そうに言うと、マリ様もそれに同調する。
「わたくしもベティさんとはお会いしたかったのですが、残念です」
「すいません、連れてこれなくて……」
「いえ、用事がおありなのですから仕方ありません。お気になさらないでください」
うおお、マリ様チョーやさしい! エラい人だったら「わたくしの誘いを断るなんてとんでもない! 死刑!」とか言い出してもおかしくなさそうなもんなのに! ま、王様もそういうこと言うタイプじゃないしな。
「僕はベティちゃんと会いたかったよー! 今度は連れてきてよー!」
……ま、チョーめんどクセえ人だけど。
「さあ皆さん、どうぞ召し上がってください。とけてしまってはいけませんから」
そんな王様の隣で、マリ様が優しくかき氷をすすめてくる。くぅ~、気がきくお嬢さんだぜ! さて、それじゃおっさんはほっといて食うとするか。
「そんじゃお言葉に甘えて、いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます」
あいさつをすませると、オレたちはスプーンをかき氷へとのばした。シャクッて感触がたまらんな。この暑い季節、冷たいものが食えるなんてたまんないぜ。
さて、それじゃ一口……!?
「ウ、ウメぇ!?」
「何これ、すっごくおいしい!」
「こっ、この口どけは……!?」
三者三様に驚きの声を上げるオレたち。なんだコレ!? ホントにかき氷か!?
「シルクのようになめらかな舌触り、そしてふわりと舌の上に乗ったかと思うとふっと消えて口内の熱を優しく奪っていくこのなんとも言えない食感……。まったく未知の味です!」
「おおー、どうやら食通のステラちゃんの舌をうならせることができたようだね! 二人はどう?」
「ウメえ! ウメえっす!」
「甘い、とっても甘いです!」
オレたちも夢中でスプーン動かしてるよ! 例によって、リアはかき氷かっこんで頭キンキンさせてはまたかっこむのを繰り返してる。ホント学ばないヤツだな、こいつは。まあ、気持ちはわかるけどな。
「この蜜は、はちみつと……もしやメイプルですか?」
「そのとーり! 北の方からお取り寄せしてるんだよ!」
へえ、こっちにもメイプルシロップあるんだ。話の流れ的に、なんか結構高そうだけど。そんな話聞いてたら、なんかホットケーキ食いたくなってきたな。
「マリちゃん、お味はどう?」
「はい、大変おいしゅうございます。皆さん、本当にありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして!」
くぅ~、マリ様にそう言ってもらえると、オレたちがんばったかいがあるぜ!
そんなおいしいかき氷をみんなで食ってると、マリ様がオレに声をかけてきた。
「ルイさんは、いろんな歌をご存知なのですよね?」
「は、はい、結構いろんな歌や曲を知ってるつもりっす」
「ご自分で曲をつくられたりもされているのですよね」
「そうっすね、オリジナルもちょくちょくつくってます」
「まあ……。凄いですね……」
そう言ってマリ様がオレに熱いまなざしを送ってくる。こ、これっていわゆる「尊敬のまなざし」ってヤツじゃね!? 好意の先にある、凡人にはなかなかたどり着けないやつ! スゲえ、今オレマリ様に尊敬されてるぜ!
ここはちょっと、がんばって好感度アップめざそうかな……。
「あの、マリ様」
「はい、なんでしょう」
「前も少しそんなお話しましたけど、もしよければ、マリ様の歌を一曲つくりましょうか?」
「わたくしの曲……ですか?」
少し驚いたような顔でマリ様が言う。もう、いちいち言動がかわいいな!
「はい。オレ、クエストの関係でこの二人にも応援歌をつくったりしてるんですけど、よければマリ様のための歌もつくってみようかなーって思いまして。応援歌ってのも変なんで、マリ様の美しさや素晴らしさをたたえる感じの曲にしようかなー、と……」
「そ、そんな、たたえるだなんて……」
「そ、そうっすよね! すいません! オレなんかがほめたたえるなんてキモいっすよね!」
ヤバい、調子に乗りすぎた! そんな軽はずみなこと言っちゃいけないっすよね! お願いだからキライにならないで!
あわてて謝るオレに、マリ様が困ったような顔で言う。
「ち、違います! たたえるというのがなんと言いますか、大げさに感じただけですので! わたくし、ぜひともルイさんに曲をつくっていただきたいです!」
なんだ、キモがってたんじゃなかったのかあ。あー、よかった~。しかしマリ様、ずいぶんとあわててるように見えるな。急いでオレの誤解を解かなきゃって思ったのかな? マリ様、やさしいからなあ。
「よ、よかったっす。それじゃオレ、今までで一番の曲を書き上げてきますね!」
「ありがとうございます、それでは楽しみにしています」
そう言ってマリ様がにっこりと笑う! ヤバい! カワイイ!
「よかったねマリちゃん、ルイ君から歌のプレゼントもらえるなんて」
「はい」
「ルイ君、僕の応援歌はまだつくってくれないんだよ? いいなーマリちゃん、僕も歌つくってほしいなー!」
そう言って王様がオレに歌をせがみ出した! アンタは駄々っ子かよ! まったく、こりゃこっちも約束するしかねーな!
「わかった、わかりましたよ王様! それじゃ王様の歌もつくっときますよ。でもマリ様の歌が先っすからね?」
「ホント? やったー! 僕の歌、なるべくカッコよくつくってね!」
「はいはい、わかってますよ」
王様のリクエストを雑に流すと、オレはマリ様に聞く。
「マリ様は、曲のリクエストとかありますか? 歌詞とかフインキとか」
「そうですね、雰囲気ですか……。すべてルイさんにお任せします。ルイさんがお感じのわたくしのイメージをそのまま曲にしていただけると嬉しいです」
「なるほど、わかりました! 必ずマリ様のイメージにピッタリな歌をつくってきます!」
気合十分にオレが胸を張る。言ったからにはちゃんとしたものつくらないとな!
その後も、オレたちとマリ様(あと王様)の楽しいひと時はしばらくの間続いた。




