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3-12 なんだ、この生き物……?





「もうすぐで着くみたいだよ~」

 リアが地図を見ながら言う。結構長いんだな、この洞窟。

 って、それはいいんだけどさあ……。

 さっきからステラといっしょに並んで歩いてるあの生き物は何? 子供くらいの背の変なペンギンみたいなんだけど……。

 リアが見つけてすかさず石を投げようとしたら、ステラが「あの子は敵じゃありません」って制止して、それからずっと並んで歩いてるんだよな……。ま、敵じゃないならいいんだけどさ。

 リアがペンギンもどきに声をかける。

「ねーペンペン、ペンペンもいっしょにかき氷食べたいの?」

「バーカ、ペンギンに言葉が通じるわけないだろ」

 そう言うと、リアがギロリとオレをニラむ。いや、だってそうだろ。

 と、ステラがこちらを振り向きながら言う。

「かき氷ではないでしょうけど、あそこの氷は格別だそうですよ」

「えっ!?」

 何ソレ!? そのペンギンが言ったの!?

「ステラ、ペンペンの言ってることがわかるの!? てゆーか、ペンペンって言葉しゃべれるの!?」

「ふふふ、言葉を話してるわけではないですよ。ただ、言いたいことはなんとなくわかります」

「そういえば、ステラってちょくちょく動物とふれあってるよね~。あれも言ってることわかってたの?」

「ええ、おおよそですが」

 何その謎スキル! タダの動物好きかと思ってたけど、そんな特殊能力持ちだったのかよ!

「もしかして、オレらの考えてることもわかったりするの?」

「まさか。人の心まではわかりませんよ」

 ま、そりゃそうだよな。てか、知られてたとしたらオレもう生きていけねーし。オレ、ステラで何度エロいこと考えたかわからんし。今日の今この瞬間も含めて。

「わかればよかったんですけどね……」

 そんなことをつぶやきながら、オレの方をチラリと見た気がする。ヤバっ、実はエロいこと考えてたのバレてる!? でも、そんなビキニアーマーでおしりプリプリされるとオレは目が離せないんだよう!

 きっとバレてないと祈りつつ、オレは前を行くステラとペンギンもどきに続いた。


 洞窟の最奥らしきところまで歩き、入り口のようにぽっかりあいている穴をくぐる。

「おお~」

「ここか」

 中はただの洞穴というにはちょっと神秘的な、青みがかった空間になっていた。氷がいい感じに柱やおしゃれな壁みたいになってる。

「なんかペンペンが道案内始めてからモンスター出なくなったね」

「そうか? たまたまじゃねえの?」

 ガラの悪そうなマヌケづらっていうの? 変な顔でオレをニラみつけてくる。はいはい、お前のおかげですよ、お前のおかげ。

「ペンペンさん、どうもありがとうございました」

 ステラが律儀におじぎする。てかペンペンで決まりなのね、そいつの名前。

「あのあたりの氷をとればいいんだってさ。はい、これ持って」

 そう言うと、リアが袋から道具を取り出してオレたちに配っていく。

「ほら、こうこうこうやって、こうやってやるんだってさー」

 説明書を見せながらリアがよくわからんことを言う。大丈夫だよ、お前がしゃべるよりそのマンガみたいな説明書の方が百倍わかりやすいから。

「さて、それじゃやりますか」

「ええ」

「おう」

「がんばりましょう」

 かけ声とともに、オレたちは部屋の奥の氷にノミをふるい始めた。

 トンカン、トンカン……。

 あ~、すっげえ地味な作業だな……。氷を崩しては入れ物に詰め、崩しては詰め……。

「なあ、リア」

「なになに、どうしたの?」

「別にこの通りに崩さなくても、テキトーに崩して詰めればよくね? 結構メンドくさいぞこれ」

「えー、何言ってんのさー。ダメに決まってんじゃん」

 こいつ、こういうところはムダに融通きかねーな。いいだろ別に。

 とか思ってると、オレたちの両サイドにいた二人が血相を変えて立ち上がった。

「ルイさん! あなた何度言えばわかるんです! 陛下の勅なんですよ! 陛下の! 畏れ多いにもほどがあります!」

「いいですか、料理というものはほんのわずかな扱いの違いが大きな差になってしまうんですよ? そんな雑な作業など考えられません!」

「ひっ! す、すいません!」

「ごめんなさい!」

 二人ともめっちゃ怒ってる! ベティちゃんはともかくステラまで! 食の話になるとキビしい! なぜかオレに注意してたはずのリアまで謝ってるし。

「さあルイさん、やりますよ! 私がお手伝いしますから」

「は、はい!」

「リアさんはこちらです、わたしを手伝ってください」

「了解です!」

 やたらとやる気な二人に怒られないよう、オレとリアは必死にサポートするのだった。


「容器もいっぱいになりましたね」

「そうですね。陛下もお喜びになられましょう」

 ステラとベティちゃんが、入れ物にいっぱいに詰まった氷を見てる。一仕事終えたって感じの満足した表情だ。

 そんな二人の横で、オレとリアは背中を合わせながら脚を伸ばして座りこんでいた。二人とも、マジ働きすぎ……。

「や、やっと終わった……」

「だな……」

「あの二人、本気すぎ……」

「お前がクタクタになるくらいだもんなあ……」

「氷集めるだけの仕事で、どーしてこんなに疲れるんだろ……」

 てか、リアがクタクタになるような仕事を曲がりなりにもこなしたオレって実はスゴくね?

「さあ二人ともへばってないで、氷が融けないうちに帰りますよ」

「そうですね、時間が経てば食感も変わってしまうでしょうし早く帰った方がいいですね」

「は、は~い……」

 ちょっと休ませて……とか言える感じじゃねえ……。しょうがねえ、行くしかねえか……。

 オレたちが立ち上がって部屋を出ようとすると、例のアイツがやってくる。

「あ、お前見送ってくれんのか?」

「ペンペン、ここまでありがとー」

 なんだかエラそうにうなずくと、ペンペンはステラに近づいて口をパクパクさせた。

「また遊びに来てください、氷関係で困った時にはお手伝いできるかも、だそうです」

 ホントスゲえな、そのスキル……。「氷関係で困った時」ってどんな時なのか謎だけど。

「それじゃペンペン、またね~」

「さようなら」

「おう、またな」

 あいさつして出ていくオレたちに向かい、ペンペンが手だか羽だかわからんものを振ってる。なんでコイツ人間のあいさつ知ってるんだよ。

 謎のマスコットキャラと別れると、オレたちはやや急ぎ足でギルドへと戻ることにした。



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