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3-11 かき氷って、そんなに大事なのか?





 氷の平原を抜け、リアの道案内にしたがってしばらく進んでいると、視界の向こうに洞窟が見えてきた。

「あれあれ、あそこの奥にあるんだってさ」

「おう、じゃあさっさと行こうぜ」

 微妙に風が冷たいってのもあって、オレたちは洞窟の中へと急いだ。


 洞窟の中はひんやりしていて、やっぱ寒い。そして、結構せまい。

「こんなとこだと、ステラやベティちゃんはやりにくいんじゃないか?」

「そうですね、いつもよりは斧を振るいにくいです」

 オレの問いかけにうなずきながらステラが続ける。

「でも、前に石像に不覚を取ってから、せまい場所でも戦えるように練習したんですよ」

「へえ、そうなのか?」

「はい、ですから安心してください。私、がんばりますから」

 そう言ってステラが軽く力こぶをつくる仕草をみせる。カ、カワイイ!

「ベティはどうなの? その弓、さすがに構えにくくない?」

「心配いりません。小型のものも用意していますから」

 いつの間にかいつもの弓を背中に背負っていたベティちゃんが、いつものより小さい弓を構えてみせる。

「おお、準備いいな」

「当然です」

 なんか一言で返されて会話打ち切られた。オレの心まで冷たくなってくるぜ。

「それじゃどんどん行ってみよっかー。あ、敵はっけーん」

 そう言ってリアが足元の石を拾い、ポイと向こう側へ投げつける。

 160キロは出てそうなその石は、向こうから出てきたモンスターにぶつかるとがしゃんと陶器が割れるような音をたてた。あれ、もう戦闘終了?

「アイススケルトンかぁ。このくらいの敵なら、ルイの歌がなくても楽勝だね」

「わたしが射るまでもありませんでしたね」

「あんなスカスカな相手だと、矢を当てるのも大変じゃない?」

「ご心配なく。わたしの矢はどんな的でも正確に射抜きますから」

「へ~、さっすが~」

 のんきなことを言いながら二人が進んでいく。この分ならあんま苦労せずにすみそうだな。

 ちょっと気になったことがあったので、オレはリアに聞いてみた。

「リア、お前さ、ああいうモンスターは怖くないの?」

「ああいうって? アイススケルトン?」

「そうそう。だってお前、オバケ怖いんだろ?」

「怖くない!」

 うわっ、急に大声あげんなよ! 洞窟中に鳴り響くじゃねえか! せまいんだから、ちったあ遠慮しろよ!

「ま、まあ、それはわかった。でも、こいつだってオバケみたいなモンだろ? ガイコツだぞ?」

「これがオバケ? あっはははは! ルイ、おもしろいこと言うねー!」

 なんで笑われなきゃなんねーんだよ! 腹立つな!

「だってそうだろ!」

「全然違うじゃん! これ氷だし、魔力で動いてるだけだし」

「魔力? あれ、魔法ないんじゃなかったっけ? この世界」

「あははは、そんなのあるわけないじゃん!」

「お前今魔力で動くって言っただろ!」

「あるよ、魔力」

 意味わかんねえ! 魔法ないのに魔力はあるのかよ! ……いや、こいつが勝手に自分にそう言い聞かせてるだけかもしれないな。オバケじゃなくて魔力のせい、って。どこぞのプラズマ先生かよ。

「ほら、どんどんいくよ~」

 そう言ってリアがベティちゃんと並んでどんどん進む。おいおい、前衛のステラより前に出ていいのかよ。まあ、あの二人なら大丈夫そうだけど。


 しばらく進むと、一面氷だらけのエリアに出た。空間も少しはひらけたな。

「うわ、寒そうだな」

「えー、ちょっとルイ気合足りないんじゃなーい?」

「うっせ!」

 お前今ブルってふるえてたじゃねーか! 人のこと言えねえだろ!

 足元も氷だけど、さっきもらったツメのおかげであんまりすべらずに歩ける。とりあえず雪がないことだけが救いだな。あったら絶対リアの奴が雪合戦始めるだろうし。

 てかさ、オレ思ったんだけど。

「もうこの辺の氷持ってきゃいいんじゃねーの? どうせかき氷にするんだし、誰もわかりやしないだろ」

「えー、それはさすがにどうかなぁ」

 オレの提案に、リアが渋い顔をする。お前、そういうとこはまじめちゃんなのな。

 と、前を行くベティちゃんがものスゴい勢いでこちらを振り向いた。

「ルイさん、あなた今、なんとおっしゃいました?」

「え? いや、この辺の氷ですませちゃえばラクじゃないかなーって……」

「言語道断です!」

「ひッ!?」

 興奮したベティちゃんの甲高い声が、ひらけたとはいえせまい洞窟内に響きわたる。ひええ、耳がキンキンする!

「このクエストは畏れ多くも国王陛下直々のご依頼なのですよ! しかも陛下が召し上がるかき氷の元なのです、こんな質の悪い氷など論外です!」

「わ、わかった! ごめん、あやまるから大声でどならないで!」

 見ればベティちゃんのすぐ隣にいたリアも、こりゃたまらんって顔しながら目をつぶって耳を押さえてる。スゲえ、まだ洞窟に声がこだまみたいに残ってるぜ……。これでモンスター倒せるんじゃね?

「し、失礼しました」

 周りの様子に気づいたのか、ベティちゃんがせき払いをして声を抑える。あー、でもめっちゃにらまれてるよオレ。てか、王様がらみの話になるとスゲーアツくなるな、ベティちゃん。まさかとは思うけど、ひょっとしてああいうおっさんが好みなのか?

「とにかく、これは大事な仕事なのですからきちんとやりとげなければなりません」

「そ、そうだな。わりぃ、ちゃんとやるよ」

「もー、これだからルイは」

 リアがやれやれって感じでため息をつく。くっそ、ムカつくなおい! いつもならむしろお前がまっさきに言い出しそうなことだろうが!

「では先に進みましょうか。私たちもそのかき氷をいただけるというお話ですし」

 ステラがいつになくはりきった調子で言う。ああ、これは美食家の血が騒いでるな……。てか、そんな寒そうなカッコでよくかき氷食いたくなるね。

「今日のシロップはいったいなんでしょうね。はちみつ? いちご? それとも、まだ見ぬ未知のフルーツでしょうか……?」

 氷を見てテンションが上がってきたのか、ステラさんのノリがなんだかおかしい。今にもスキップ始めそうなんだけど。おい、氷の上は危ないぞ?

「だ、大丈夫かな、ステラ……」

「そ、そうですね、お仕事をしっかりやろうとなさっているのですからいいのではないですか?」

 さっきまでカンカンだったベティちゃんも、どうやらステラの異様なフインキに飲まれてしまったようだ。ま、まあ、怒りが収まったならそれでいいか……。


 ウキウキしながら先へと進むステラにやや気圧されながら、オレたちは洞窟の奥へと進んだ。




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