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3-7 新たなクエストは……?





 今日も元気にクエストを終えたオレたちは、詰所からゲートを抜けてギルドへと戻ってきた。

「今日の薬草はクサくなくてよかったね~」

「そうですね。ニオイヨモギなどは手袋をしていても手に臭いがついてしまいますから」

「ルイも今日はラクだったんじゃない? 量も少ないしさ」

「ああ、いつもに比べりゃとーってもラクだったぜ」

 オレは手ぶらのリアにイヤミたっぷりに返してやる。そう思うならせめてステラの分くらい持ってやれよ。ま、ステラは申し出ても断るんだけどさ。コイツ、オレの方には絶対来ないし。

「ベティなんか最初イヤがったもんね、薬草集め。やっぱり手が大事なの?」

「そうですね。弓兵ですから」

「ふ~ん。てっきり昔怒られて草むしりばっかりやらされてたからトラウマなのかと思っちゃった」

「そんなわけないでしょう! 草むしりなんて、やったこともありません!」

「へえ、そんなにおりこうさんだったんだ、ベティって」

「ま、まあ、そういうことです」

 へー、さすがだな。オレなんかガキの頃は常にゲンコツ飛びかってたのに。

「その点、ルイは名人の域だもんね~、草むしり。おじさんたちに怒られない日なんてあったっけ?」

「うっせ!」

 やっぱルイ(こいつ)もなのかよ! そんな気はしてたけど!

「ステラは……自分からやってそう」

「やっぱそうなのか?」

「ええ、小さい頃はよくお手伝いしてました」

「さすが……」

 なんか完全に劣等生二人対優等生二人の構図が定着してきたな、この頃……。今までオレとリアが多数派だったから気づかなかったけど、やっぱダメな人なのね、オレたち……。


 受付に戻ると、アンジェラがねぎらいの言葉をかけてくれる。

「おつかれさま。今日はどうだったかしら?」

「楽勝楽勝~。ほら、依頼の品だよ」

 って、オレの手からひったくんな! もう少し気遣えよ!

 ステラも袋を手渡し、アンジェラがパパッと中身をチェックする。

「はい、OKよ。おつかれさま。それじゃあレベルも確認しておく?」

「するするー」

 いつもの流れでレベルをチェックしていく。今回も誰もレベルアップしなかったけど。なんかこの頃レベル上がんないな。

 リアがつまらなそうにぼやく。

「なんだかこの頃レベル上がんないねー」

「それはそうよ。もうあなたたちはAランクに近いのだから、そんなに簡単に上がる方がおかしいでしょう。レベルを上げたいのだったら、この前の特別クエストのようなクエストを積極的にこなすことね」

「げっ……!」

「ひッ……!」

 この前の『氷帝』とのクエストを思い出し、オレとリアが同時に硬直する。

「ま、まだレベルは上がらなくてもいっかなー。そ、そんなに急いでるわけでもないし? ね、ルイ?」

「あ、ああ、そうだな。人間、一歩一歩着実に成長していくことが大切だよな」

「あら、珍しいわね? 二人ともあんなにレベルアップを楽しみにしていたのに」

 オレとリアのリアクションに、アンジェラが首をかしげる。

「別に遠慮する必要はないのよ? なんだったら、私からセーラにお願いしてあげても……」

「いやいやいやいや!」

「結構! 結構だから!」

 アンジェラの提案に、オレとリアはそろって全力で首を横に振る。冗談じゃないぜ! あんなコワい思い、しばらくはゴメンだよ!

「そ、そんなことより、次のクエストの予定でも立てようよ! ね、ステラ!」

「え? ええ、そうですね」

 急に話を振られてとまどうステラをよそに、リアは話を強引に切り替えようとする。

「アンジェラ、どんなクエストがある~?」

「あ、そうそう、思い出したわ」

「え、何?」

「あなたたちに渡すものがあったのよ」

 そう言うと、アンジェラが手元をガサゴソやって何かを手に取る。どうやら手紙、というか巻物のようだ。

「これ、お城の方が持ってきたのよ。ルイ君に渡すようにって」

「え……」

 お城から……。イヤな予感しかしないんですけど……。まさか、『氷帝』との特訓クエスト……? ヤバい、なんだかまた震えが……。

 震える手で巻物を受け取ると、オレはゆ~っくりとそれを開いていく。ヤダなあ、読みたくないなあ……。ええっと、どれどれ……?



 拝啓 『夜明けの詩』のみなさんへ!


 みんな、こんにちは~! 元気かなあ? 僕はとっても元気だよー!

 新しい仲間も増えて、僕はとっても嬉しいです! 今度はいつ遊びに来てくれる? あらかじめ伝えてくれれば、みんなが驚くようなサプライズを用意しておくよ~!



 ヤバい、なんだか頭痛と目まいがしてきた……。これ、間違いなく王様だよな……。この国の文字もいまだによくわからんけど、王様の字ムダに丸っこくてかわいらしいな……。マリ様の字とか言われたら信じそうだぜ。

 てか、用件はなんなんだよ……。あ、これか……。



 さて、今回はみなさんにおりいってお願いがあるのです! それは……デレデレデレデレっ、ジャーン! みなさんには、四十八階の奥にある、スペシャルな氷を取ってきてほしいのです! その氷でかき氷作ると、本当においしいんだよー! みんなにも食べてもらいたいから、それを取ってきたらまたおやつパーティーをしましょー!


P.S 詳しいことは後でまた伝えるね!


 みんなの国王・アンリ四世!



 ……来たよ、ついに……。オレが恐れていた、王様のシュミのクエスト……。

 しかもこれ、絶対にヤバいヤツだ……。氷ってことは、きっとクソ寒いんだろ? 氷持つのはどうせオレだろうし……。カンベンしてくれよ……。

 てか、手紙の中でデレデレとか書いてんじゃねえ! なんだよ「みんなの国王」って! あと、いくらなんでも「!」が多すぎだ! 少なくとも名前にはいらねーだろ! どう考えても!

「ねーねー、私たちにも見せてよー」

 オレの後ろから、リアがひょこひょこ首を伸ばしてくる。ほれ、見たいなら勝手に見ろよ……。オレは投げやりに手紙を手渡す。

「えーと、なになに……?」

 興味しんしんといった様子で手紙を読み始めたリアが、すぐに無言になる。

「……うん、いつもの王様だね……」

 心なしかげんなりした顔で、リアがステラに手紙を渡す。その手紙の内容に、さすがのステラも苦笑しながらベティちゃんへと手渡す。おいおいベティちゃん、王様の手紙だからってそんなにうやうやしく受け取らなくてもいいんだぞ? どうせ書いてる内容はアレなんだし。

 一通りみんなで手紙に目を通すと、オレとリアはお互い顔を見合わせてため息をつく。

「はあ……」

「やるしかないんだよね……」

「そりゃな……」

 どうやらオレたちの次のクエストは、王様が食べるおやつを取ってくるってので決まりのようだ。まあ、オレたちも食えるみたいだけど。

 はあ……。命がけのかき氷かあ……。なんだかなあ……。




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