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2-5 女って、マジでわからん……






「いやー、疲れた疲れたぁ」

 ゲートのある詰所へ向かう帰り道。一仕事終えたとばかりにリアが声をあげた。

「何も持ってないヤツは楽でいいよな」

 リアのお気楽な声に、げんなりしてオレが毒づく。そりゃお前は石持ってないんだからいいだろうがよ、石運んでるオレたちはギルドに着くまでが仕事なんだよ! だいたいステラに手伝ってもらってるとは言え、オレは多分20キロ以上も石背負ってるんだぞ! これホント、ステラがいなかったらどうなってたんだよ!

「何さー、その分私が敵を追い払ってんじゃない。さっきだってちゃっちゃと片付けたでしょ?」

「あーそうですねー」

 棒読みで生返事しておく。まあ、確かにバトルでも逃げ回らずに済んでるけどさ。


「でもさステラ、バトルの時、すごいでしょ?」

 オレなど存在しないかのごとく、リアはステラに話題を振った。

「は、はい! あんな感覚、初めてでした」

「でしょう。ルイの歌聴くと、なぜかすごい体が動くんだよねー」

 そうなのだ。あの後三回ほどバトルがあったんだが、リアはいつもの事として、ステラの強い事強い事。

 さっきなんてリザードマンが八匹というありえない数で出てきたんだが、トカゲ人間の首を斧の一振りでまとめて三つぶっ飛ばした時には唖然とした。木こりが使いそうな柄の長い両手斧を片手で軽々と振り回しているビキニちゃんの図ってのは、天国なのか地獄絵図なのかオレにはもうわからん。

「てか、ステラはいつもあのくらい強いんじゃないの?」

「いえいえ! 私あの斧片手でなんて振るえませんよ!」

「じゃあやっぱりルイの歌が原因だろうね」

 やっぱそうなのか? 今までは確信が持てなかったが、リア以外の第三者もそう言うんならそうなのかもしれないな。

「ルイさんの歌って、私たちの力を増してくれるんですか?」

 ステラが驚きの表情を浮かべながらオレを見る。

「いや、まあ、多分なんだけどな」

 てか、オレも今の話を聞いてそう思った所なんだが。

「ルイさん、凄いです……」

 ちょっ!? なんでそこで顔赤くしてオレを見つめる? やっぱこのコ好感度MAXになってね? オレ心の準備ができてないっての!

「えー、コホン」

「あ、す、すみません……」

 わざとらしくリアがせき払いをする。遠慮したのか、ステラがオレから少し離れた。ほっ、助かったぜ……。今回に限ってはナイスなタイミングだったわ。オレも空気を変えようと話題を振る。


「じゃあ次回はいろいろ試してみようか」

「お、ルイにしてはいい事言うね」

 よかった、ヘソを曲げているわけじゃなさそうだ。てか、これからはリアのご機嫌も考えていかなきゃならないのかよ……。マジで大変だ。女ってマジでわからねえ……。

「で、どんな事やってみるの?」

「そうだな……うーん……」

 オレの歌も結構ストックできてきたし、いろいろやってみようかとは思うんだが、いろいろありすぎてなんか考えがまとまらねえ。実験用の曲も用意したいし……。

「すまん、パッとは思いつかない、てかたくさんありすぎるわ。少し考えさせてくんない?」

「ああ、そうだよね。それなら何やるかゆっくり考えた方がいいかも」

 そのまま考えこんでいたリアが、ふと顔を上げた。

「そうだ!」

「なんだよ急に」

「だったら、今度みんなで集まって作戦会議しようよ!」

「作戦会議?」

 聞き返すオレにリアがウィンクする。くそ、かわいいな。

「そう! ステラもメンバーになるんだし、いろいろと打ち合わせも必要でしょ? 今日はバタバタしちゃったし、クエスト中だと落ち着かないから、親睦会も兼ねて打ち合わせしようよ!」

「リア、お前たまにはいい事言うじゃねーか!」

「たまにはは余計でしょ」

 軽くオレの脇腹を小突く。うっ、さっきの痛みの記憶が……。

「ステラもそれでいいよね?」

「はい、でも私のためにそんなお手間を……」

「違う違う、ステラのお祝いって名目で私たちが騒ぎたいってだけだし。それにこれはあくまで『作戦会議』だから、ね?」

「そ、そういう事でしたら私も喜んで!」

「よーし決まり! それじゃあ次回は女子会だー!」

 おい! 言ったそばから主旨が変わってんぞ! てか何で女子会なんだよ! オレはのけ者かよ!

「そうと決まれば後は日時だね! あさってのお昼の鐘の頃あたりに、喫茶モンベールでお昼でもどう?」

「あ、モンベール! いいですね!」

 モンベールとかいう店の名に、突如ヒートアップする女性陣。女のツボはマジでわかんねえ……。てかモンブランみたいだな、店の名前が。それにしても、二人の会話がこんなに弾むのは初めてじゃなかろうか……。あの……、女の子同士で意気投合するのはいいんだが、オレを置き去りにしないでほしいんですけど。


「なんだよその店、そんなに流行ってる店なのか?」

「流行ってるなんてものじゃありません! モンベールは女子の憧れのおしゃれスポットなんですよ?」

 うっ、ステラがものすごい勢いで力説してる……。趣味の話になるとキャラ変わる系のコなのか? てかそんなにずいっと詰め寄られると、む、胸が……。

「彼女いない歴十七年のルイには永遠にわからない世界だろうけどさ、モンベールはホントにいいお店だもん、ねー!」

 リアもいっしょになってそのモンブランみたいな名前の店を褒め称える。てかコイツ、どさくさにまぎれて言いたい事言ってやがんなおい! それと一ついい事を教えてやる! オレは現実世界では彼女いない歴二十一年だ! ……死にたい。

「まあ、ルイみたいなハイパーモテないクンはモンベールの場所なんて知ってるはずもないだろうから? 私がいっしょに連れてってあげるよ」

「ほっとけ! だいたい、オレがいなきゃ作戦会議の意味ねえだろが!」

「感謝しなさいよ? 私のようなスーパー美少女といっしょにモンベールに入ることができるなんて、世の男たちの羨望の的なんだから」

 人の話聞けよ! てかお前それ、自分で言ってて恥ずかしくないのかよ!

 そんなくだらないやりとりに突然、ステラが大声で割って入ってきた。

「あ、あの!」

「は、はい?」

 ステラの剣幕に、リアが思わず引きぎみに返事する。

「先に着いても、二人で入っちゃダメですよ!」

「え?」

「絶対ですよ!」

「あ、うん、わかった……」

 勢いに気圧されて、わけもわからずリアがうなずいた。こういう風にリアが人の意見を受け入れるってなんか意外だな。てかステラ、なんであんな必死なんだ?

「それじゃあさってのお昼にモンベールの前で待ち合わせ、それならいいよね?」

「はい、それでお願いします」

「オレもそれでいいよ」

「じゃあそういう事で! みんなよろしく!」

 まあ、こうやってみんなで集まってわいわいやるのはオレにとってもすごい久しぶりだしな。かわいい女の子に囲まれておしゃれスポットとか、これようやくハーレムルートに入ったんじゃね? 実はオレ、密かにすっげえ楽しみだわ。







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