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3-5 王国、真の実力者!?






 チョコをつまみながらお茶を飲み、オレたちは王様やリシュリューさんたちにベティちゃんを紹介していく。てか、オレらもまだ知らないことだらけなんだけどな。

 主にこの前のクエストでのベティちゃんの活躍を説明したりしてると、わりと時間が経ったようだ。ハルミさんが王様になにやら耳打ちすると、王様が残念そうな声を上げる。

「えぇ~、もう時間~? もっとお茶したいよ~!」

「駄々をこねないでください。この後もお仕事がありますので」

「は~い……」

 思いっきりテンション低く王様が言う。こうしてうなだれてるとこ見ると、なんだか中年の悲哀みたいなものを感じるな……。

 渋々立ち上がると、王様がオレたちに向かって言った。

「ごめんね~、今日は僕、まだお仕事が残ってるから。みんなはゆっくりしていってね~」

「う、うっす。仕事がんばってください」

 そう言いながら、オレたちは王様に一礼する。

 と、扉まで行ったところで何か思い出したように王様が振り向いた。

「あ、そうだ!」

「な、なんすか?」

「リシュリュー君、もう話は終わったんでしょ?」

「ええ、俺はもう終わりましたよ」

 それを聞いて、王様がオレたちに嬉しそうに言った。

「じゃあさ! ルイ君、マリちゃんに会ってあげてよ! マリちゃんも会いたがってたしさ! ベティちゃんも紹介できて一石二鳥でしょ?」

「えええ!?」

「い”!?」

 マジすか王様! マリ様、オレに会いたがってるんすか! って、なんて声上げてるんだよベティちゃん! いや、そりゃ驚くだろうけどさ!

 浮かれるオレに、リアとステラが両側から耳打ちしてくる。

(ちょっとルイ、あんた王様の言葉バカみたいに真に受けないでよ?)

(そうですよ、そんなだらしない顔をしないでください)

 二人とも何不機嫌そうにしてるんだよ。モテる男はツラいぜ。てか、リアはともかく、ステラまで頬をふくらませてるし。ぷりぷり怒るステラさんもカワいいぜ。

 そんなことを思いながらも三人立ち上がってリシュリューさんたちにあいさつしようとしていると、ベティちゃんの様子がなんだかおかしい。イスから立ち上がると、お腹のあたりを左手で押さえてる。

「ベティちゃん、どうかした?」

「す、すみません、少々お腹が……」

 オレの問いに、ベティちゃんがやや青ざめながら答える。大丈夫か? トイレでもガマンしてたのかね。

 その様子を見て、王様が大声を上げた。

「ええ――っ!」

 うっせえよ王様! いちいち声デケえんだよアンタは!

 そんなオレの内心などいざ知らず、王様は言葉を続ける。

「大丈夫!? ベティちゃん! あ、トイレガマンしてたの? 大きい方でしょ! 大きい方なら、トイレはあっちにあるよ!」

 バ、バカかこのオヤジはぁぁぁ! 言いにくいことを大声で言うんじゃねえぇぇ! よりによってデカい方とか! 見ろ、ベティちゃん、真っ赤になってうつむいちまったじゃねーか!

 なおも何か言おうとする王様を、オレはギロリとニラむ。

 と、次の瞬間、オレたちは信じられない光景を目の当たりにした。

「ダメだよ、女の子だからって大きい方をガマンしちゃ……ふぃっ、ふぃれれれ!」

 ええ――っ!? ハ、ハルミさんが、王様のほっぺを思いっきりつねったぁぁぁ! そのままほっぺを上へとつまみ上げて、つま先立ちになった王様の顔を見上げながら言う。

「陛下、いけません。よりによって大勢の殿方がいらっしゃる前で、そのようなことを大声でおっしゃっては」

「ふ、ふぃまへん……」

 今にも泣きそうな声で、てかもう半ベになりながら、王様がハルミさんに謝る。

 その壮絶な光景をオレたちが唖然としながら見つめていると、いつの間にそばまで来ていたのか、リシュリューさんがオレたちに向かって言う。

「ああ、お前らは見るの初めてか」

「初めてって、お、王様にあんなことしちゃって大丈夫なんすか!?」

「ああ、ハルミさんは王妃様から命を受けているからな。王様がなんかやらかした時はちゃんとおしおきするようにって」

「そ、そうなんすか……?」

 リシュリューさんの言葉に、オレたちは驚きの声を上げる。マジか、ハルミさんって王様の身の回りの世話や護衛してるだけじゃなく、そんな監視役みたいなこともしてたのか……。

 ようやくほっぺを解放されて手でさする王様を見つめていると、リシュリューさんが嬉しそうに言う。

「お前らラッキーだぞ。俺たちでもそうは見ることのできない光景だからな」

「え、王様って普段は意外としっかりしてるんすか?」

「違う違う、いつもは電光石火で王妃様の手が伸びるんだよ」

「ああ、なるほど……」

 そういやこないだも王妃様につねられてたっけ、王様……。自業自得とはいえ、なんかちょっとだけ王様に同情してきた……。

「陛下、わたくしめなどにではなく、ベティ様にきちんとお詫びなさってください」

「うう、ごめんなさい、ベティちゃん……」

「い、いえ、もったいなきお言葉です……」

 ほっぺをさすりながら謝る王様に、ベティちゃんがえらく申し訳なさそうに頭を下げる。そりゃこんなエラい人に謝られたら、誰だってリアクションに困るわな。

 それから、ベティちゃんが申し訳なさそうな顔のままオレたちに言う。

「すみません、少し胃のあたりが痛くなってきてしまいまして……。申し訳ありませんが、わたしはこのあたりでおいとまさせていただけないでしょうか……」

 あ、ウンコじゃなかったのね、ベティちゃん。

 ベティちゃんの言葉に、王様が露骨に残念そうな顔をする。

「えーっ! マリちゃん、どんな子かって楽しみにしてたのにー!」

「も、申し訳ございません、陛下……」

「あ、ううん、ベティちゃんを責めてるわけじゃないんだよ? ご、ごめんね?」

 あわてて王様が謝る。今のは半分、ハルミさんにビビってってのもあるんだろうな……。ハルミさん、手が一瞬ピクッてなってたし。

「仕方ないですよ、陛下。嬢ちゃんの腹が痛いんじゃ、殿下も心配でならないでしょう」

「そっかー、そうだよね。うん、じゃあまた次の機会に会ってあげてね?」

「は、はい……」

 もごもご言いながらベティちゃんがうつむく。ま、しょうがないよね。だって腹痛いんだもん。なんかずいぶん急に痛がりだした気もするけど。そしてなんかチョイ悪はベティちゃんにウィンクしてるし。いいタイミングで助け舟出しただろう? 的な感じで。嫁さんにチクるぞ?

 ウィンクには気づいているのかいないのか、オレたちに向かってベティちゃんが言う。

「それではすみませんが、王女殿下には皆さんでお会いになってください。わたしはここで失礼させていただきたいと思います」

「うーん、それは仕方ないよね」

 リアがそう言うと、ステラが言葉を続けた。

「ベティさんがこの状態ですし、今回は私たちもこのあたりで失礼した方がいいかもしれませんね」

「え!?」

 思わず声をもらしてしまう。えーっ! 王女様と会わないで帰るのー!?

「そうだねー、ベティ一人で帰らせるわけにもいかないし……」

「わたしなら大丈夫です。皆さん、どうぞお気遣いなく……」

「そうそう、ベティちゃんはギュス君たちに送ってもらうから大丈夫だよ」

「皆さんにご面倒をおかけするわけにはいきません。ベティさんは私たちのパーティーですから、私たちが責任をもって面倒をみませんと。ですよね、ルイさん?」

「え!? あ、ああ、もちろんだぜ!」

 急に話を振られ、オレもあわててうなずく。くっ、王女様に会えないのはチョーもったいないけど、確かにベティちゃんを一人にするわけにはいかないもんな……。

 それを聞いて、王様も残念そうに言った。

「そっか~。残念だけど、仕方ないよね。それじゃマリちゃんにはそう伝えておくよ。みんな、また遊びに来てあげてね?」

「は、はい! もちろんです!」

「今回は本当に申し訳ありません!」

「むしろオレはいつでも王女様に会いたいっすから!」

 言ったとたん、リアとステラにギロリとニラまれる。ひ、ひぃぃ! ごめんなさい! てか、なんでニラまれてんの? 俺。

 一方の王様はと言えば、オレの言葉になぜか上機嫌になっていた。

「ホント? やったー! マリちゃんもきっと喜ぶよ! ルイ君が会いたくて会いたくてしょうがないって言ってたって伝えとくね!」

 いやいやいやいや! オレそこまで言ってない! 脚色しすぎだから! もちろん、オレ的にはそれで何一つ間違っていないけど! なんなら今すぐにでも会いたいけど!

「皆さん、本当にすみません……」

「私たちは大丈夫だよ、ね、ルイ?」

「あ、ああ、もちろん! 仲間にはかえられないからな! マリ様もきっとわかってくれるさ!」

「王様、本当にすみませんでした」

「いいのいいの! また元気な時に会ってくれれば! マリちゃんには僕からしっかり言っておくから!」

「あ、ありがとうございます」

 お礼を言うと、オレたちは王様とリシュリューさん、ギュス様にあいさつをして部屋を出た。それから衛兵さんにしたがって外へと出る。

 城を出てある程度歩いたところでベティちゃんがここで大丈夫と言ってきたので、彼女とはそこで別れる。リアが家まで送るって言ったんだけど、それはかたくなに拒んで帰っていった。前も思ったけど、やっぱ家にあるのかね、BL本。


 その後はオレたちも寄り道せず、そのまま家へと帰った。王様、マリ様にしっかり言っておくとか言ってたけどさ、いったい何をしっかり言っておくんだろ……。なんか不安しか感じないんだけど……。





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