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if もしもクリスマスがあったなら

一日遅れましたが、クリスマスのお話をお送りします。本編とはパラレルな世界での一日です。どうぞご覧ください。







 すっかり寒くなってきたとある日の夜、オレたちはとある店に集まっていた。

 なんだか妙にカップルが多い店内で、オレたちは席について料理を待っている。

「こっちにもクリスマスってあるんだな……」

 諦め声でぼやくオレに、隣のリアがけらけらと笑いながら言う。

「よかったじゃんルイ。いっつも一人きりのクリスマスすごしてるんだからさ」

「余計なお世話だ!」

 どうせお前だっていつも一人なんだろ!人のこと言えた義理か!

 そう、今日はあの忌むべき日、クリスマスなのだ。なんでこのイベントあるんだよ。あれってキリスト教関係の日なんだろ? こっちにキリスト教ないじゃん。ま、日本でもキリスト様関係なしに盛り上がってるけどさ。

 で、今オレたちはちょっとだけめかしこんでギルド近くの喫茶店にやってきたわけだ。

 今日はリアとステラに加え、なんとアンジェラまでいたりする。こうした場でごいっしょするのは初めてだな。

 ステラもアンジェラもあったかそうなセーターを着ているが、なんというか胸の盛り上がりぐあいが全然違うな……。てか、ステラのはヤバいよ。セーターだとヤバいくらい強調されるぜ。

「私がおじゃましてもよかったのかしら?」

「もちろん。いつもお世話になってるんだから、いっしょにお祝いして当然でしょ」

「そうですね、いつもありがとうございます」

「あらあら、ありがとう。それじゃ今日は楽しませてもらうわね」

「ああ、存分に楽しもうぜ」

「調子いいこと言っちゃって。まあ、こんなに女の子に囲まれるクリスマスなんて初めてなんだろうし? 浮かれて鼻の下伸ばすのも仕方ないけどさ」

「ほっとけ!」

 ホントこいつはよぉ! わかってるよそれくらい!

 オレたちがそんな漫才をしていると、ステラが少し頬を赤らめてつぶやく。

「私も誰かとクリスマスをすごすなんて本当に久しぶりです。お誘いありがとうございます」

「何水くさいこと言ってるのさー。みんなで祝った方がいいに決まってんじゃん」

「そうだぜステラ。仲間だろ? オレたち」

「あ、ありがとうございます……」

 少し目が潤んでるっぽいステラ。あー、美人だぜ。来年のクリスマスは二人きりですごしたいなあ……。

「まーたよからぬこと考えてたでしょ」

「え!? そ、そんなことないぜ!?」

 ホント鋭いなコイツはよ!

 次の瞬間には、オレの存在などなかったかのように壁のお品書きをながめ始める。

「さーて、何頼もっかなー」

「やっぱり鳥の丸焼きははずせませんよね」

「モモ焼きもよ、ステラちゃん」

「もちろんケーキもね」

 あー、女が三人も集まると騒がしいね……。オレが入る余地ないや。




 しばらくして、料理がテーブルに並べられる。おお、こりゃウマそうだ。

「スゲえなこりゃ」

「本当ですね」

「早く食べよ、早く!」

「リア、少し落ち着きなさいな」

「わかってるって。それじゃみんな、メリークリスマース!」

 リアの音頭であいさつをすませると、みんな思い思いに食事に手を伸ばす。うん、普通にウマいな。

「ねーねー、ケーキもおいしいよー」

「本当ですね、クリームもとてもおいしいです」

「こんなのを食べられるのも、クリスマスくらいだものね」

 そんな調子で食事をしていると、リアが急にデカい声を出した。

「さて、それじゃお楽しみのプレゼントこうかーん!」

 ああ、そういやそんなこと言ってたな。一応オレも買ってきたぜ、プレゼント。てか、プレゼント交換なんてするような年か? オレたち。

「それじゃ持ってきたプレゼントを、後ろで順にとなりに回していってね~」

「あいよ」

 じゃあオレも、買ってきた手袋を出すとしますかね。みんなどんなの持ってきて……って、デカっ! なんだステラのあの包み!? 5キロ入りの米袋くらいあるぞ? 何持ち歩いてるのかと思ったら、それプレゼントだったのかよ!

「ちょ、ちょっとステラさん?」

「はい? なんでしょう」

「その包み、いったいなんなのかな~って」

「これですか?」

 不思議そうに小首をかしげながら言う。かわいい。

 そして、少しはにかみながら言った。

「もらってからのお楽しみです」

「ぐはっ!」

 カワいすぎる! もういいや、あの中身がなんでも。オレ的にはもうプレゼントもらったから。

 そしてオレたちは後ろに手を回し、プレゼントをとなりに送り始める。あ、これはステラのだな……。てか、送るたびにあからさまに渡すの苦労してる組は、あの包みを渡してるんだろうな……。

「じゃあこのへんでいっか。交換終了でーす」

 そう言ってリアが終了を宣言する。あ、ステラのはアンジェラのところか。てか、これ単にぐるぐる回してるだけだから誰のがどこにいったか丸わかりだよな。

「それじゃ開けてってみようか。まずは私からー」

 そう言って包みから取り出したのは、お、手袋か。オレと同じだ。

「おー、かわいい手袋だね」

「それは私のね。よければ使ってね」

「へー、ありがとアンジェラ。さっそく使うねー」

 そう言いながら、さっそく手にはめる。いやいや、今つけなくてもいいだろうに。

「それじゃ次はアンジェラね」

「え、ええ……」

 そう言われて、アンジェラがやや困惑ぎみに包みを開く。何入ってんだろ、あれ……。

 デカい包みの中から現れたのは、でっかいネコのぬいぐるみだった。な、なんか迫力あるな……。

「え、ええと、これは誰のかしら?」

「私です」

 アンジェラの問いに、ステラが満面の笑みで答える。

「今王都でも人気の『とらねこ』ちゃんです。ぜひかわいがってあげてください」

「え、ええ、ありがとう。大事にかざらせてもらうわ」

 あー、こりゃアンジェラ困ってるな……。てか、ステラはこういうファンシーなのが好きなのね、メモメモっと……。

「じゃあ次はステラー」

「はい、ええと……あ、手袋ですね」

「ああ、それオレのだ」

 オレ以外みんな女の子だから、ちゃんとかわいい系のヤツを買ってきたぜ。ししゅうが女の子っぽいと思うんだけど。

「ステラはもっとかわいいのがよかった? オレ好みとかよくわかんないんだけど」

「いえ! とってもかわいいです! 大切に使わせていただきます!」

 そう言って、手袋を胸元にギュッとする。いや、ホントデカいな……。オレも手袋になりてぇ……じゃなかった、喜んでもらえてよかったぜ。

「さーて、最後はルイだね」

「おう、これだな」

 リアにうながされ、包みを手にする。

「てか、これお前のなんだよな。何が入ってるんだ?」

「えへへ、開けてからのお楽しみ~」

 ちっ、カワいいじゃねーか。リアのくせに。さて、中身はっと……。

「お?」

 マフラーか。定番だな。こういうところはちゃんとツボを押さえてくるな。

「それ、私の手編みなんだよ」

「へえ、スゴいじゃん」

「えへへ……」

 だらしない笑顔を見せるリア。そんなにオレに自慢したかったのな。

「ま、サンキューな。ちょうどいいから使わせてもらうわ」

「どーぞどーぞ。大事に使ってよー」

 わかってるって。ボロボロにしたら何言われるかわかんねえし。

「うふふ、リアもステラちゃんもよかったわね」

 そう言ってアンジェラが笑う。そうだよな、二人とも実用的なものをもらえてるもんな。てか、アンジェラはあのぬいぐるみどうするんだろ……。





 食事とプレゼント交換を終え、オレたちは店の外に出ていた。

「じゃあ、ここでお開きだねー」

「そうですね」

「もう今年も終わりなのね」

「早いもんだな」

 外もだんだん冷えこんでくる。やっぱ外は寒いな……。

「ルイ、今日は忘れられない一日だったでしょ」

「まーな、おかげさまで」

「そのマフラーもあることだし、今年は一人さびしく寒い思いをすることもないよ」

「ほっとけ!」

 やりあうオレたちに向かい、ステラが言う。

「私も今日は忘れられない一日になりました。皆さん、本当にありがとうございます」

「いやいや、それはオレも同じだよ。これからもよろしくな」

 そう言うと、ステラはもじもじしながら少しうつむく。ああ、来年はステラのミニスカサンタ姿見たいなあ……。

 そんなことを思っていると、突然頬に冷たさを感じた。

「冷たっ!」

 何かと思い顔を上げると……。

「あ、雪」

 空からは雪がちらほらと降ってきていた。ああ、こっちの世界では初めて見たな、雪……。

「わー、雪だ、雪だー!」

 リアも気づいて子供のようにはしゃぐ。

「珍しいわね、雪なんて」

「そうなの?」

「ええ、もう何年も降らなかったのに。雪もルイ君たちを祝ってるのかもしれないわね」

 そんなことを言ってアンジェラがほほえむ。なるほど、それもいいかもな。

 リアがオレたちに向かって言う。

「ねえ、最後にみんなでもう一回アレやろうよ」

「あ、いいですね」

「よし、じゃあそれで今日はシメるか」

 そう言うと、オレたちはリアに合わせて息を吸いこむ。

「せーのー……」

 息をそろえて……。



「メリークリスマース!」

 

 

 


初期メンバーでお送りしたルイたちのクリスマス、いかがだったでしょうか。

本作は、年内はこれが最後の投稿になります。来年に向けて執筆がんばります。


それでは、少し早いですがよいお年を。

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