2-11 ベティちゃんの秘密!?
「ふぅ~、ごちそうさま~」
満腹したのか、リアが満足そうに言う。オレも久々に堪能させてもらったぜ、モンベール。
「ベティ、二度目のモンベールはどうだった? いいでしょ、このお店」
まるで店に不慣れな新人に対する先輩のような態度で、リアがベティちゃんに聞く。お前、ちょっとこの店に来てるからってもう常連気取りかよ。
「ええ、噂に違わぬお店のようですね。食材もよく吟味されていましたし」
「そうでしょう、そうでしょう」
ベティちゃんのコメントに、リアが得意げにうなずく。いや、なんでお前が褒められてるかのような顔でいるんだよ。
「あの魚……王都でもあれだけの鮮度を保ったものを扱える店はそう多くはないでしょうね。きっと独自の流通ルートを持っているのでしょう。火加減も絶妙、高級店としては及第点でした。あの皮の香ばしい焼き上げ方、おいしかったでしょう?」
「うん、ううん……?」
「あなた、あの料理人の技に何も感じなかったのですか? あの焼き加減、並みの者にできるものではないのですよ?」
「そ、そうなの……?」
ありゃりゃ、先輩風を吹かせるつもりが、逆に突っこまれ始めたぞ? リアがよくわからないといった顔で困り果てる。身から出たサビだね、こりゃ。ああ、でもこの流れは……。
「ベティさんもおわかりになりましたか。そうなんです、このお店の料理人の方の腕は文句なしに一流なんです」
ほら、やっぱり食いついてきたよ、我がパーティー随一のグルメリポーター・ステラさんが!
「あなたはどうやら違いがわかる方のようですね。お肉をいただいていたようですが、そちらはいかがでしたか?」
「はい、火の入れ加減はもちろんのこと、ソースもじっくりと時間をかけて作られているのがわかります。肉の処理、下ごしらえもとっても丁寧です」
「私の皿も同様です。下処理も丁寧で、間違ってもソースの味でごまかすなどというようなことはありません。噂には聞いていましたが、大したものですね」
おお、ベティちゃんとステラが思わぬところで意気投合してる……。オレは肉ウメえくらいの感想しか出てこないのに、二人ともよくあんなにスラスラと感想が出てくること。
そんな二人の会話から完全に締め出され、リアが開き直ったようにブーたれる。
「何さー、料理なんておいしいってわかればそれでいーじゃん。どーせ私はそんなご立派なコメントできませんよーだ」
あーあ、スネちゃって。ま、オレもそう思うけどな。
「早く行こ、ルイ。どーせあんたもあの二人についていけないんでしょ?」
「ほっとけ!」
いや、その通りだけどさ!
グルメ談義に花を咲かせる二人に声をかけると、オレたちはモンベールを後にした。
「はぁ~、やっぱりモンベールはいいよねぇ……」
店を出るや、リアがうっとりした顔で言う。確かに、やっぱ若者に人気な高級店なだけはあるよな。来るのも久しぶりだったし。
「それじゃ今日はこの辺でお開きかな。またあさってにギルドでってことで」
「おう、了解」
「わかりました」
日も傾いてきたし、今日はもう帰るノリだな。
リアがベティちゃんに聞く。
「ねえベティ、今日は一日パーティーに加わってどうだった? うち、楽しいでしょ」
「そうですね、皆さんの力を間近で見られてよかったです」
あ、サラッとスルーした。でも、まんざらじゃなさそうだな。
そんなベティちゃんに、リアが何かを思い出したかのように聞く。
「そうだ」
「なんです?」
「ベティ、家はどのあたり?」
「北東の方です」
「へー、あっち側はあんまり行ったことがないなあ」
そんなことを言いながら、
「じゃあさベティ、家の場所教えてよ」
「い゛っ!?」
リアの言葉に、ベティちゃんがスゲぇ声を上げて驚く。なんだ、そんなに驚いちゃって。教えるのイヤなのか?
「ちょっとベティ、そのリアクションは何さー? 私に家を教えるのがそんなにヤなの?」
「いえ、そうではないのですが、家に来られるのはちょっと……」
「なになに~? 見られたくないものでもあるのー?」
リアが意地悪な顔で聞く。案外そうなのかも。
「そんなものはありません。だいたい、どうしてわたしの家をあなたに教えなければいけないのですか?」
「いいじゃん、友だちなんだしー。ってのは冗談で、私連絡係だからさ、何かあったらみんなのところにピューっとひとっ走りして知らせるんだよ。だから聞いておこうと思って」
ああ、そういや前にそんなこと決めたっけな。ステラが休んで『氷帝』とクエストした時だっけか。
それを聞いて、ベティちゃんがそれなら結構とお断りする。
「しばらくの間は自分で毎日ギルドの方にうかがいますので。それに、わたしはこれからギルドの近くに引っ越そうかと思っているところなので、少々忙しいのです。引っ越しが終わって落ち着いたらあらためてお知らせします」
「そっかー、じゃあしょうがないね。それじゃその時におじゃまするね」
「わかりました」
そう言うと、ベティちゃんがオレたちに向かって言う。
「今日は皆さん、どうもありがとうございました。これからよろしくお願いします」
「おう、こちらこそよろしくな。ベティちゃんの弓には期待してるぜ」
「い、言われなくてもわかっています」
あれ? なんかプイッてそっぽ向かれた……。やっぱ嫌われてんのかな、オレ……。
「それではわたしはここで失礼します」
「うん、じゃああさってにギルドでね~」
「今日はおつかれさまでした。さようなら」
あいさつをすませると、ベティちゃんはすたすたと向こうへ行ってしまった。なんていうか、ドライな子だなあ……。
彼女の後姿が見えなくなると、リアがステラに話しかける。
「でも、いい子でよかったね~」
「ええ、腕も立ちますし、料理にも詳しいですし」
あ、そこなのね。まあでも、確かに腕は文句ナシだし、入ってくれてよかったよ。初めはあまりの無口ぶりに正直どうなることかと思ってたけど、なんだかんだでよくしゃべってくれてたしな。次回からはクエストもまた一段と楽しく、そして楽になりそうだぜ。
それにしても、ベティちゃんの家で見られたくないものってなんなんだろ。もしかして、趣味のBL本だったりしてな。
てか、もうお目にかかることはないかもしれないけど、フルカラーのエロ本が恋しいなあ……。エロ動画とか、そこまで贅沢は言わないからさ、誰か写真やフルカラー技術発明してくれないもんかね。
リアルの関係ですっかり遅くなってしまいましたが、最新話をお届けします。
次回からは新メンバーを加えての本格的なパーティー活動が始まります。
ここでご報告です。
応募していた「第2回オーバーラップ文庫WEB小説大賞」ですが、先日あえなく二次選考落選となりました。う~ん、残念。MFに続き二次敗退、当然ではありますがなかなか二次の壁が破れませんね。応援してくれた皆さん、どうもありがとうございました。




