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2-8 うちのパーティーに、入ってくれる?






「いや~、今日もよく働いたねぇ」

 四十六階の詰所も近くなり、一仕事終えたとばかりにリアが言う。

「相変わらずお前は荷物持たないけどな」

「ちょっと待ってよ、私いっぱい魚さばいたじゃん。今日はサボり扱いされるの超心外なんですけどー」

 今日は、って、いつもはサボってる自覚あったのかよ! まあいいけどさ。

「ベティちゃん、今日はスゴかったよー。さすが本職の弓兵さんは違うね~」

 オレの事などソッコー忘れたかのように、リアがベティちゃんに声をかける。まあいいけどさ!

 ベティちゃんはといえば、ふて腐れたような顔でリアを見る。あ、でもこれはきっと照れを隠してる顔だな。

「別に大した事はありません。この人の歌の効果もありますし」

「いやいや、あれは相当なものだよ。私もAクラスの弓兵の技見た事あるけどさ、それに迫るものがあったよ」

 うんうんとうなずきながらリアが言う。へー、そんなにスゴいのか。いや、素人目に見てもスゴかったけどさ。

「そんな事はありません。もちろんわたしもAクラスを目指してますから、そのレベルを目標にしてはいますが」

 まーた不機嫌そうな顔しちゃって。この子、いろいろと不器用なのね。

 そこにステラも加わる。

「でも、ベティさんがパーティーに入ってくれたら本当にありがたいですね。あんな援護があるのなら、私も安心して前に出る事ができます」

「……そのくらいの事であれば造作もありません」

「おお~、頼もしい言葉だね~。それで、ベティちゃんはうちらのとこに入ってくれる気になった?」

「……は?」

 え? 何そのリアクション。完全に入ってくれる流れだと思ってたんだけど。なんかヤなとこあった?

「オレら、なんかダメだった? 悪い所あったなら直すからさ、遠慮なく言ってくれよ。オレらベティちゃんにぜひ入ってほしいんだよ」

 そう言うオレに、ベティちゃんはあきれたって顔でため息をつく。がーん……。な、何がダメ?

「あなたまで何を言ってるんですか……。それは話が逆でしょう」

「逆?」

「今日はあなたたちがわたしをパーティーに入れるか品定めしに来たのでしょう? 決めるのはわたしではなくあなたたちです」

「あ、そっか」

 オレとリアが同時に声を上げる。そう言えばそうだったな。てか、リアなんか初めはわりと露骨にイヤがってたっけか。今じゃすっかり仲間扱いだもんな、川でもあんなにじゃれ合って。

 するとリアが、オレに向かって聞いてくる。

「ねえねえ、私はベティちゃんにぜひ入ってほしいんだけど、ルイはどう?」

「どうもこうも、オレは初めから入ってほしいって思ってたしな。渋ってたのはリアだから、お前がいいなら問題なんて全然ないぜ」

「え? ヤ、ヤだなあ、私は別に渋ってなんてないって、あは、あは、あははー!」

 少し慌てて、変な笑いでごまかしてやがる。そして今度はステラにも聞く。

「ねえ、ステラはどお……?」

「私はさっきも言った通り、ベティさんに援護してもらえるならとても心強いです。ですから、ぜひ入っていただきたいです」

「そっか! そうだよね! じゃあ、パーティーに入ってもらうって事でいいよね?」

「おう、もちろんだ。戦闘の時もいっしょにいてスゲえ心強いしな」

「ぜひお願いします。これほどの腕の冒険者に参加してもらえるなんて、凄い幸運だと思います」

「やったー! 私もベティちゃんみたいなスゴい子が入ってくれて嬉しいよ!」

 口々にホメるオレたちに、ベティちゃんが少し顔を赤くしながら答える。

「そ、そんな大した事ではありません……。わたしの方こそ、無事にパーティーに加えてもらえてよかったです」

 またまたカワいい事言っちゃって。ま、オレはどんなにリアがゴネようとも入れる気でいたけどな。カワいいし。

「それじゃ私たち、これから仲間だね! よろしくね、ベティ!」

「ちょっと、あなた、そんな乱暴に……きゃぁっ!?」

 すっかり浮かれたリアが、ベティちゃんの手を握るとブンブンと振り回す。おいおい、腕ちぎれるだろが。なんかさっそく呼び捨ててるし。やっぱあれかね、川での戦い(?)を経て二人の間に友情でも芽生えたのか……?





 詰所からゲートを抜け、オレたちはギルドへと戻ってきた。道中リアはずっとベティちゃんにあれこれと話しかけていたな。ベティちゃんもそこそこつきあってあげてたし。でもあんま初めから飛ばしすぎると、引かれるぞ?

 受付に戻ると、アンジェラが手を振ってくる。

「おつかれさま。どうだったかしら? いっしょに戦ってみて」

「もーサイコーだよ。満場一致、文句なしでメンバー入りけってーい」

「それはよかったわね。それじゃベティちゃん、手続きする?」

「はい、お願いします」

 うなずくと、ベティちゃんがアンジェラから書類を受け取って記入し始める。

 その間に、オレは魚の肝が入ったビンをアンジェラに手渡した。レベルのチェックもテキパキとこなす。

 それから次のクエストもちゃっちゃと決めると、アンジェラがベティちゃんに声をかける。

「ベティちゃんはどうだったかしら? 今日のクエスト」

「はい、噂通り、いえ、それ以上のパーティーでした。わたしもこの中に加わる事ができて、とても嬉しく思います」

「あら、それはよかったわね。私もシティの職員として嬉しいわ」

「もー、ベティったら嬉しい事言ってくれちゃって~」

「や、やめなさい」

 バシバシと肩を叩くリアに、ベティちゃんがうっとうしそうにその手を払う。

あれ結構痛いんだよな。まあ、さすがにベティちゃんには加減してるみたいだけど。あ、もしかして彼女が入ってくれると、リアの注意がオレからそれる? それは結構いいかも。

 じゃれ合う二人をほほえましく見つめながら、アンジェラが言う。

「はい、手続き終わったわ。ベティちゃん、これで今日からパーティーの一員よ」

「ありがとうございます」

「やったー! これからよろしくー!」

「ちょっと、だからやめなさいってば」

「これからよろしくお願いしますね、ベティさん」

「ベティちゃんが入ってくれてうれしいぜ。よろしくな」

「い、いえ、こちらこそ……」

 顔を真っ赤にしてベティちゃんが言う。相変わらずテレ屋さんだな。

 アンジェラがベティちゃんに聞く。

「よかったわね、仲間に入れて。この子たちいい子だから、きっとあなたもすぐになじめるはずよ。ところで、ベティちゃんは今日はこれでお帰りかしら?」

「そうですね、今日は……」

「あ、ベティ、今日この後何もないんだったら、せっかくだからお茶しようよ!」

「え? でも……」

「いいじゃんいいじゃん、晴れてうちのパーティーに入ったことだし、少しゆっくりとお話しようよ~。ね、みんなもそう思うでしょ?」

 お、オレたちに振ってきたか。でもリアにしてはいいアイデアだ。

「そうだな。オレもいろいろ聞きたいし、ヒマがあるならいっしょにいこうぜ!」

「私もぜひゆっくりお話したいです。ご都合はいかがですか?」

 オレたちに言い寄られ、ベティちゃんが困ったような顔をする。

「わ、わたしだって暇じゃないんですよ? でも、どうしてもと言うのなら、少しつきあうくらいの時間はありますが……」

「じゃあ行こ行こ! ね、ルイ!」

「そうそう! いっしょに行こうぜ!」

 そう言われて、ベティちゃんが渋々といった顔でうなずく。

「仕方ありませんね……。それでは、わたしもご一緒させてもらいます」

「そう来なくっちゃ!」

 かわいくない事言うわりには、なんだか嬉しそうだなベティちゃん。友だちが増えて嬉しいのかもな。どうも友だち少なそうな感じだし。

「よーし、それじゃさっそくレッツゴー!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい、手を引っぱらないで!」

「みんなおつかれさま。ゆっくり楽しんでね」

「ああ、それじゃまたな」

「失礼します」

 アンジェラにあいさつすると、オレとステラはリアに引っぱられていくベティちゃんを追いかけていった。やれやれ、今日はどうなる事やら……。



 



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