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2-4 オレの歌、絶好調!






 そんなわけで無事ステラがパーティーに加わる事になった。ふう、よかったよかった。リアがオレに声をかけてくる。

「じゃあさ、仲間入りのお祝いに一曲歌ってあげなよ」

「そうだな、いっちょやるか!」

「え、いいんですか……?」

「もっちろん! こいつ詩人だしね!」

 リアに得意げに言われるのはなんかシャクだが、ここでいいとこ見せておくのは悪くない。初対面の印象は大事って言うしな。

「ルイって歌だけはいいんだよ。歌だけは」

 そこだけ強調すんな! 他が全てダメみたいじゃねーか!

「正確には歌は大した事ないんだけど、竪琴の演奏はホントすごいんだよ」

「私、竪琴の演奏なんて初めてです」

 歌もダメなのかよ! てか、なんかムダにハードル上がってるな……。思えばリア以外の人間に歌聴かせるのはこっちの世界じゃ初めてだ。まさかとは思うが、酷評されたらどうしよう……。 やべ、バンド時代のトラウマが甦ってきた……。

「いい曲頼むよー」

 へいへい、客は気楽でいいよな。こっちは初見相手に緊張してんだ。えーと、女の子だからラブバラードなら多分はずさないだろ。じゃあ高校の頃にやってた曲でも歌うか。べんべんべんべーん、べんべんべんべーん……。

「え、何この音……?」

「ね、すごいでしょ?」

 どうやらツカミはオッケーのようだな……。このイントロ、そんなにいいのかね? 

「こんな伴奏、聴いたことありません……」

「私もだよ……。ついこの前まではこんなの弾けなかったはずなのに……」

 あ、そうなの? じゃあやっぱオレの演奏がいいって事? さて、そうこう言ってるうちに早くもサビだ。あーいーすーるーきぃみーとぉー……。

「――!?」

 サビに入った途端、ステラの顔が一気に真っ赤に染まる。

「な、なんだろ、すごく胸に来ます……!」

「私も……」

 なんか二人ともうっとりしてるな。さすが伝説的バンド・シスターヤングメンの90年代ラブソング、現代(?)の女の子のハートも鷲づかみだぜ!




 その後もオレの熱唱は続き、一曲歌い終わる頃には二人とも顔真っ赤で目もうるうるだった。あれ? そんなによかった? 今ならもしかして二人とも落とせるんじゃね?

「どうだった? オレからのプレゼント」

 やや気取ってステラに話しかける。我ながらキモいセリフではあるが。

「え、その……」

 ステラはもじもじしながらオレから目をはずした。あれ、これって恋する乙女のリアクションじゃね? 実はホントにオレに惚れちゃってたりする? 

「と、とっても素敵でした……」

 キタ――! これは惚れてる! 絶対惚れてる! 誰が何と言おうと! ついにオレにも魔法使いルートから脱出する時がやってきたのか? これはもう、ここでキメるしかない!

「そうか! じゃあ今夜はいっしょに……げふうっ!?」

「なーに調子に乗ってんの」

 バッカ、だから脇腹に肘を入れるんじゃねぇ……! こ、呼吸が……!

「な、何だよ、ぜぇ、おま、や、やきもちでも、やいて……」

「おーっと、肘だけじゃ足りなかったのかなー」

「ご、ごめんなさい……」

 なんかコイツ、加速度的に暴力女化してる気がするんだけど……。あ、いて! いてて……。



「さーて、それじゃあ私たちはクエストの続きといきましょうか」

 ひとしきりオレを小突いた後、リアが言った。

「そうだな、オレもさっさと帰りたいし……。じゃあステラ、この石持ってくれる?」

「はぁ? ルイ、何やってんの?」

 素っ頓狂な声を上げるリア。

「何って、ステラに石持つの手伝ってもらってんだよ」

「何言ってんの? クエストは私たちだけでやるに決まってんじゃない」

「はあ?」

 今度はオレが声を上げる番だ。何意味わかんねえ事言ってんだコイツ? せっかくパーティーに加入したステラをクエストに参加させないというリアの謎発言に、オレも食ってかかる。

「おい、何でステラをハブるんだよ! たった今パーティーに入ったお祝いまでやったばっかじゃねえか!」

「正式にはまだ登録してないし、このクエストは私たちが受注したものでしょ? ステラだって自分のクエスト終わらせたばっかりなのに大変だし、こちらのタダ働きさせる事になるじゃない」

「それならステラにも報酬分ければ済む話だろ! ステラをハブる理由にはなんねーよ!」

「いずれにせよステラに確認しないとダメ。それと」

「それと?」

「私、ハブりたくてイジワル言ってるわけじゃないから。今度その言い方したら、殴るよ」

「はい、すいません……」

 どうでもいいけど、ハブるって表現は通じるのね……。

「あ、あの!」

 おおう、ビックリした! ステラが急に大きな声を上げるもんだから!

「私、お手伝いしたいです!」

「え、でもいいの? 石集めだから結構しんどい依頼だよ?」

 オマエ、やっぱしんどいって思ってたんじゃねーか! てか、そう思うならお前も少しは持てよ!

「それは問題ないです。私体力はありますし、あんな素敵な歌までプレゼントしてもらって何もしないなんて……」

「でも……」

「あ、すみません……。勝手な事言ってしまって……。他人様のクエストに首を突っ込むなんて、図々しいですよね……」

「あ、いや! そういうわけじゃないんだよ!」

 慌てて弁解するリア。

「ほら、リアが妙な事言い出すからステラが遠慮しちゃったじゃねーか」

「何さ、そんなんじゃないって言ってるでしょ!」

「あの、ご迷惑なら無理しないで下さい……」

「いやいや、ホントに迷惑なんかじゃないって!」

 両手を振って必死に否定する。

「手伝ってもらえるなら大歓迎だよ! それじゃあよろしく!」

 リアがそう言うと、ステラも安心したのかようやっと笑顔になった。

「はい! よろしくお願いします!」

 満面の笑み、そして弾む声。か、かわいい……。あ、こっち見た。てか目がうるうるだよ。そんなにオレらとクエストできるのが嬉しかったのか?





 というわけで、さっそくクエストを手伝ってもらう事になったステラに、オレが運んでた石をいくらか持ってもらう事にする。

「ルイ、調子に乗って石いっぱい持たせるんじゃないよ」

「しねえよ、そんな事」

 てか全部他人に持たせるお前ほどオレは鬼畜じゃねーよ! 三分の一くらい持ってもらえば十分だっての!

 ふう、念のために手さげカバン持ってきておいて正解だったぜ。どうせリアは手伝う気なんてないんだろうから、いっそ置いてこようかと思ったが。このカワいい牛チチ金髪ツインテールちゃんといっしょに仕事ができると思うと、俄然やる気が湧いてくるぜ。アニメ声だし。

「よっと……じゃあとりあえず、このくらい持ってくんないか?」

「はい……ありがとうございます」

 恐る恐るという感じでステラが手を伸ばす。そんなに遠慮すんなっての。

「あの……これだけでいいんですか? 私斧兵ですし、もっと持てますよ?」

「いいのいいの、レディにそんなに持たせられないって。それにバトルになったらステラにも戦ってもらわなきゃいけないし」

 あんま持たせるとリアがまたうるさいしな。

「ルイさんって、優しいんですね……」

 ぐっ、上目遣いでそう言われると、いろいろヤバいものがあるな……。てかオレ、ホントにその気になっちゃうぞ?

「ステラ、あんま調子づかせないでね。そいつバカだから」

 だからお前にはバカって言われたくないんだっつーの! コイツがいなければ絶対ステラを口説くとこなのに。仕方ない、それはまたおいおいって事で。

「さー、それじゃ残りもちゃっちゃと集めちゃいましょうか」

「ひとっつも石持たないヤツは気楽でいいよな」

「何か言った?」

「いんや、何にも」

 オレたちの石集めは、その後もしばらく続いた。







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