2-1 新人さんとご対面!
お見舞いから数日後、ステラも体調が戻り、オレたちはギルドへ向かう事にした。例の加入希望者と面談するためだ。
「どんな子なんだろうな、弓兵の子」
「さぁーねー」
なんかビミョーにリアの声が不機嫌だな……。そんなに気が向かないのかね……。
「リアはどんな子ならOKなんだ? 結構な腕前らしいけど?」
「まー、信用できそうな感じならいいんじゃない? ルイならかわいければすぐOKしそうだけどさー」
「ほっとけ!」
まあ、そうだけどさ。
ギルドの前まで来ると、見慣れたツインテールが目に入った。
「おはよー、ステラ」
「あ、おはようございます」
今日はクエストなしなので、ステラも少し薄めのブラウスにロングスカートだ。相変わらずかわいい。
「ステラ、体はもう大丈夫か?」
「はい、もうすっかりよくなりました。すぐにでもクエストに行けますよ」
「さすがステラ、頼もしいね。頼りにしてるよ」
うん、確かに元気そうだな。この前のクッキーが効いたのかな?
「それじゃ、そろそろ入るか」
「はい」
「はーい」
そう言うと、オレたちはギルドの門をくぐった。
受付に向かうと、オレたちに気づいたアンジェラが笑顔で手を振ってきた。
「アンジェラ、おはよー」
「あら、いらっしゃい」
ステラの方に視線を移すと、ほほえみながらアンジェラが言う。
「ステラちゃん、お加減はどうかしら?」
「はい、もう大丈夫です」
「それはよかったわ」
そう言ってウィンクする。
「ねえアンジェラ、例の人はどこなのー?」
「ああ、そうだったわね。今呼んでくるから少し待っててちょうだい」
立ち上がると、アンジェラは受付を出て向こうの部屋に行った。例の子を呼びにいったのかね。
「どんな方なんでしょうね、その方」
「いい奴だといいな」
「そうだといいけどねー」
でも、実際どんな子なのかね。やべ、ちょっと緊張してきた……。
それほど間を空けずに、アンジェラがこっちに戻ってきた。お、あの隣の子が例の弓兵ちゃんか……。
こげ茶っぽい茶髪を肩あたりまでたらしながら、ポニテというか、頭のてっぺんあたりで髪を少しまとめてる。瞳は緑色で、顔もキレイだ。でも、ちょっと性格がキツそうな感じだな。
オレたちのところまでくると、アンジェラが隣の子を紹介し始めた。
「それじゃ紹介するわね、こちらがあなたたちのパーティーに加入希望のベティちゃんよ。前も話した通り、レベル45、Bランクの優秀な弓兵よ。ベティちゃん、どうぞ」
「……ベティです、よろしく」
なんか、不機嫌そうだな……。声が低いからそう聞こえるだけか?
オレたちの顔を見ながら、ベティちゃんが言う。
「皆さんの活躍、わたしも聞いています。ぜひお仲間に加えてほしいと思って、今回こうしてお願いにきました」
「え、えーと……。そりゃどうも……」
なんていうか、嬉しいんだけど、いかんせん不機嫌そうなんだよな……。元々こういう子なんだろうけど。ちょっとからみづらいというか……。
「あの、ベティさんはどうしてこのパーティーに入りたいと思ったんですか? 素晴らしいパーティーは自由連盟にもあると思うのですが……」
お、突っこむねステラ。さて、なんて答えるのかな?
「皆さんはもろもろの活躍にもかかわらず、驕る事なく精進し続けていると聞いています。それに、力を持つ者は持たざる者を守るべきであると考えているとか。違いますか?」
「え? あ、オレ? うん、そんな事も言ったような……」
てか、そういう事を面と言われると照れるな……。
「そのようなパーティーに加わる事ができれば、わたしも力あるもののあるべき姿を学べるかと思いまして」
「あ、そ、そう……?」
いや、そんな大層なモンじゃないと思うんだけど……。みんな、どう思う……?
「素晴らしい心がけだと思います」
ベティちゃんをまっすぐみつめて、ステラが言う。おお、なんかかなり感銘を受けてるっぽいぞ。
「そのような考えの方が増えれば、きっとこの国もよりよくなると思います。ルイさんやリアさんはまさにそんな心の持ち主です。私もいつもお二人に学ばせてもらっています」
「そんな、オレたちよりステラの方がよっぽど立派だろ」
でもまあ、お互いに勉強してる感じではあるかな? そういう意味では、確かにうちのパーティーに入ったら成長が望めるかもね。
オレは二人に向かい聞いてみる。
「オレ的には、とりあえず一度いっしょにクエストしてもらって判断するのがいいと思うんだけどどうだ?」
「そうですね、私もそれがいいと思います」
ステラはどうやらこの子の事がだいぶ気に入ったようだ。なんかもっと功名心とかでがっついた感じかと思ったけど、結構しっかりしてる子っぽいしな。
「うーん、二人がそこまで言うなら、私も異存はないけど……」
お、リアもうなずいたか。ま、こいつも信用できそうな人ならOKって言ってたもんな。
二人の意見を確認したオレは、ベティちゃんの方に向かって言う。
「OK、それじゃとりあえず一度オレたちとクエストに参加してくれないか? それで判断しようと思うんだけどいいかな?」
「はい、お願いします」
ぶっきらぼうな感じでベティちゃんがうなずく。う~ん、やりにくい……。
「あ、そういえばまだ自己紹介がまだですよね?」
「ああ、そういえばそうだな」
なんか順序があべこべになっちゃったけど、それじゃあらためて……。
「オレはルイ、職業は詩人っす。よろしく」
「私はステラ、職業は斧兵です。よろしくお願いします」
「リア、盗賊です。よろしく」
「ベティです、弓には自信があります。よろしくお願いします」
自己紹介とか、ホントいまさらだな……。まあでも、オレ的にはもうほとんどオッケーって感じだけどな。
「それじゃアンジェラ、クエスト選んでもいいか?」
「もちろんよ。ちょっと待っててね」
そう言うと、アンジェラが受付に戻って手ごろなクエストの依頼書を持ってくる。
「四人で行くなら、少し下の方の階がいいんじゃないかしら?」
「そうですね、う~ん……」
クエスト選びのセンスには定評のあるステラが、依頼書を見比べながら考えこむ。やがて、一枚のクエストを選んでオレたちに聞く。
「このクエストなど、どうでしょう」
「えー、どれどれ……? お、四十五階で痺れ角魚の肝を採取? また変わったクエストだな。でもいいんじゃないか?」
「私もさんせー。盗賊スキルも生きるしね」
ああ、魚さばくの得意そうだもんな。
「ベティちゃんもこれでいい?」
「はい、大丈夫です」
静かに一つうなずく。ううむ、『氷帝』とはまた別種のとっつきにくさがあるぜ。
「日取りは三日後くらいで大丈夫か?」
「私はそれでいいよ」
「そうですね、私も賛成です。ベティさんはいかがですか?」
「わたしも大丈夫です」
「OK、それじゃアンジェラ、これで頼む」
「わかったわ。四十五階は水の多い場所だから、ちゃんと着替えも用意しておくのよ?」
「おう、了解だ」
そんな感じで次回のクエストを決めると、オレたちはそこでベティちゃんと別れる。とりあえず難色を示していたリアが納得してくれてよかった。
ま、あの子の力はクエストでじっくりと見せてもらおうか。三日後、楽しみにしてるぜ。
で、久々にレベルチェックをしたわけだが、今回はなんかまた結構レベルが上がってオレ49、リア46、ステラ47になってた。てかオレ49かよ! もうすぐAランクじゃん! 数字だけだけど!
う~ん、これはこの前の石像が大きいのかね? あと、オレとリアは『氷帝』の特訓が効いてそうだな……。
チェックを終えると、アンジェラにあいさつしてギルドの出口へと向かう。
ギルドを後にしたオレたちは、近くの喫茶店に寄って軽くステラの快気祝いをする事にした。さて、今日はどの店にしましょうかね。




