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1-2 昨日はホント、大変だったな……





 朝食を食い終わって城に行く用の服を着ていたら、コンコンと扉を叩く音がした。ずいぶんと控えめなノックだな……。

「ルイ~、入ってもいい?」

「おう、上がれよ」

「じゃあ、おじゃましま~す」

 控えめな声で静かにドアを開くと、リアが中へ入ってきた。こいつ、オレに断りを入れてから家に入ってきたなんて初めてなんじゃないのか……?

「なんだか元気ないな」

「え? いや、そんなことないよ?」

「てか、その顔……いや、いい……」

 明らかに寝てないな、こいつ……。目の下にクマができてるぞ。


 準備を終えて、オレたちは家を出る。今日はギュス様に昨日のクエストの報告をしないとな。

「昨日は大変だったな。夜にいきなり王様が来るんだから」

「ああ、ルイのところは王様だったのかぁ……。いいなあ……」

「リアのとこには誰が?」

「王妃様……」

「ああ……」

 確かに王妃様はキツいな……。美人で優しいけど。てか、だからこそより一層緊張しちゃうんだけど。

「いきなり王妃様に謝りに来たとか言われて、私緊張で昨日眠れなかったんだけど……」

「まあ、そうなるよな……」

「なんだかすぐに察してくれたようで、あんまり気にしないようにって言われたんだけど、無理だよね……」

「だな……」

 ヘコみと眠さのダブルパンチで、テンションが異常に低い。なんかオレの方までめいってきた……。

 と、リアがいきなり自分の頬をバチーンと叩く。

「うん! もっとシャッキリしなきゃ!」

「お、復活したか?」

「まあ、一応。いつまでもうだうだ言ってられないし」

「おう、その調子だぜ」

 なんとか立ち直ってはいるようね。それじゃさっさとステラと合流しましょうか。



 今日は大通りが交わる噴水でステラと待ち合わせしてる。オレたちが噴水に着くと、ステラはすでに到着してベンチに座っていた。なんか本というか、巻物を開いて読んでる。今日は白い半袖シャツに黒のタイトスカートが。髪をおろして、マジメなOLルックなのね。

「おまたせ~」

「あ、おはようございます」

「それ、何読んでたんだ?」

「いろいろな職業の方の戦闘スタイルや型を少々……。私の戦い方にも応用できないかと思いまして」

「ほぇ~、さすがステラ……」

 感心したようにリアがつぶやく。この世界って結構書物の値段も高いのに、ステラさん、マジ研究熱心だな……。

「また私が皆さんの足を引っぱるわけにはいきませんから」

「え、ステラは全然足引っぱってないじゃん。やられちゃったのは私だし……」

「いえ、本来は私が前衛として皆さんに危険が及ばないようにしなければならなかったのですから……」

「あー、ナシナシ! それは反省会の時でいいから! 今から暗い気分になってどうすんだよ!」

「そ、そうだね……」

「す、すみません……」

 ホントこたえてんな、こいつら……。気持ち切り替えていこうぜ。


 王城前の大通りを三人並んで歩きながら、ステラに聞いてみる。

「昨日はステラのところにも誰か来た?」

「あ……はい。夜に皇太子殿下が……」

 ああ、そういえば王様も言ってたな、そんなこと。正直一番緊張する相手だよな……。まだ一度しか会ったことないし、王様の息子ってことは次の王様なわけだし……。

「突然お詫びなどとおっしゃるものですから、あまりにおそれおおくて……」

「それで眠れなかったわけだ……。私と同じだね……」

 確かに、ステラも目にクマができてるもんな。

「皆さんのところには、どなたが……?」

「うちは王妃様……。ルイは王様だってさ」

「私の感覚がおかしくなってるのかもしれませんが、王様が一番お話ししやすいように思います……」

「それ、私も思った……」

 オレもそう思うわ。現に唯一オレだけがちゃんと眠れてるもんな。

「実は王様って、私たちが話しやすいようにああいうキャラなのかもしれないね……」

「いやいや、それはないだろ。マリ様だってめっちゃ困ってたじゃん」

「でも、十分にありうることです。何せあのお方はレムール王国三名君の一人、賢王アンリ四世陛下なのですから……」

 そうかなあ……。元々のキャラなだけって気がするんだけど……。まあ、親しみやすくてしゃべりやすいってのは確かだけどな。いや、いろいろとからみづらい人ではあるけど……。

「ルイさんは、王様と何かお話されたんですか?」

「ああ……めっちゃビビったよ……。いきなりドアガンガン叩いてごめんねーって大声上げるんだもんな……」

「あ……」

「ルイさんも、大変だったんですね……」

 そうだよ、オレはオレで大変だったんだよ。なんてったって、あの王様を一人で相手してたんだからな……。

「あ、そう言えば」

「ん、何?」

「オレらもっと強くならなきゃなーって言ったら、わかった、考えとくとか言ってそのまま去ってったんだよな……。何をするつもりなんだろ……」

「そ、それは謎だね……」

「き、きっと私たちのために何か考えてくださっているんですよ! きっと!」

 ステラがかなり無理した感じで声を張る。うん、それが妙な方向に行かなければいいんだけどね……。


 モンベールの前を通りすぎ、王城が近づいてくる。その距離に反比例するように、リアとステラの顔がだんだん固くなっていく。ああ、二人ともせっかく城のフインキにも慣れてきてたってのに、昨日ので全部帳消しだな……。

「今日はまあ、酒場で少し飲もうぜ。イヤな事があった時はためこまずにパッと気晴らしするのが健康の秘訣なんだとさ」

「お、ルイのわりにはいいこと言うじゃん。健康の秘訣って、なんだか年寄りっぽいけど」

 ほっとけ! お前のために提案してやってんだろが!

「でも、ルイさんの言うとおりですね。そこで昨日の反省と今後についてを考えましょう」

「さすがステラ、オレの意をキチンと汲んでくれる!」

「はいはい、どーせ私はわかりませんよーだ」

 なんでスネるんだよ。まあいいや、ほら、もうすぐ着くぞ。


 城に着いたオレたちは、手際よく中へと通される。城内へ入り、立派そうな部屋の前に来ると衛兵さんがノックして紋章の入った扉を開く。

「皆さん、どうもお疲れのところご苦労様です」

 部屋の中に入ろうとするオレたちに、ねぎらいの言葉と共にギュス様が笑いかけてくる。いえいえどういたしましてと一歩踏み出して、オレたちはもう一人誰かいることに気がついた。その人が誰かを思い出し、緊張に身体が固くなる。

「よう。久しぶりだな、お前ら」

 くだけた口調でオレたちに声をかけてくるのは、オレたちも一度会ったことのある人物。この国の軍のナンバー2――王国調査隊隊長リシュリューだった。






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