表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/204

1-1 こ、こんな夜になんの用っすか!?





 王様の初クエストをさんざんな形で終え、がっくりしながら家に戻ってきたオレ。夕食の準備をして、食い終わるともうとっくに日が暮れている。

「ああ、マジ疲れた……」

 ひとりごとをもらしながら、オレは粗末なベッドに横たわる。このベッドもこの前買ったばっかだけど、今度もっといいのに買いかえようかな……。洗い物とかもたまってるけど、今日はそんなのやる気分じゃないな……。いいや、今日はさっさと寝よ……。

 しばらくしていい感じにうとうとしてきたオレの耳に、パカラパカラと馬のひづめの音が聞こえてくる。こんな夜に急いじゃって、どこに行くのかね……。


 ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!


 って、ウチかよ! うっせーよ! こんな時間になんの用だよ! 遠慮なくドア叩くんじゃねえ!

 だが、直後に聞こえてきた渋い声にオレの心臓が止まりそうになる。

「ルイくーん! ねえ、ルイくうぅぅぅぅぅん!」

 ちょっ!? 王様かよ! なんで王様がこんなところに来るんだよ! オレはあわててベッドから飛び上がると、猛ダッシュでドアを開ける。

「ねえぇぇぇ! 開けてよー! 僕の事、キライにならないでよおぉぉぉぉ!」

「開けます! 今開けますって! ちょっと静かにしてください!」

 わけわかんねえ事言ってる王様をなだめながらドアを開けると、いきなり王様が飛びこんできた! うおお!? 何事だよ!

「ルイ君、ごめんねえぇぇぇぇ!」

「なっ、何がっすか!?」

 てか、オレに飛びついてくんな! オレにそんな趣味はねえぇぇぇ!

「と、とりあえず落ち着いて! マジ落ち着いてくださいって!」

「落ち着いたら話聞いてくれる?」

「聞きます! 聞きますから! とりあえず上がって!」

 とにかくまずは黙ってほしいので、王様を家に入れる。だって外の人がめっちゃ見てるんだもん! ほっといたら絶対騒ぎになるだろ!

「汚い家っすけど、上がってください……」

「やったー! おっじゃまっしまーす!」

 そんなに嬉しいかね……。あ、メイドのハルミさんもいるのね。

 てか、ホントにったねーな、オレの部屋……。王様もさることながら、ハルミさんみたいな美人を入れるにはあまりにもしのびない……。あ、二人ともそこに座ってくださいね……。


 二人が席についたところで、オレもイスに座る。

「で、なんだってこんな時間にうちに来たんすか? てか、王様みずからこんなとこまで来るとかどういうことっすか!?」

 すると、オレの言葉が呼び水になったかのように王様がしゃべり始めた。

「そう! 僕、ルイ君に謝らなきゃならないんだった! ルイ君、ホントにごめんねー!」

「だ、だから謝るって、いったいなんのことっすか!?」

「さっきギュス君に聞いたよ! すっごい危ない目にあったって! だから急いで謝りに来たんだよー!」

「ああ、そういうことっすか……」

 なんとなく想像がついたわ……。で、大急ぎでうちに来たってわけか……。

「んなもん、別にいいっすよ。王様が何かしたわけじゃないんだし……」

「そんな冷たいこと言わないでよー! すぐに謝らないといけないと思って、リアちゃんやステラちゃんの家にもうちの嫁さんと息子が僕の名代で謝りに行ったんだから!」

 ちょっ!? 王妃様と皇太子様かよ! 何大事おおごとにしてんだよアンタ! てか、そのお二方とはあんま話したことないんだから余計緊張するだろが! そんなVIPにいきなり訪問されて大丈夫かな、あいつら……。

「怒ってないっすから、もう頭上げてくださいよ……」

「ホント? ホントにゆるしてくれる?」

「ホントホント。全然怒ってませんって」

「ホントのホント? やったー!」

 そんなバンザイして喜ぶほどのことじゃないだろうに……。とりあえず納得してもらえたようでよかったぜ……。

「ホントにごめんね? こんなことなら会議を打ち切ってでもギュス君にクエストに行ってもらえばよかったのに……」

「いやいや、結構ですって! あれはオレたちが弱かったのが原因だから、ギュス様も王様もなんにも悪くないっすから!」

 てか、もうあんま思い出したくないんだけど! あのことは!

 と、王様が何かを察したように首をかしげてくる。王様、その仕草は五十過ぎたオッサンがやってもキモいだけっすよ。

「あれ、もしかしてルイ君、ちょっと落ちこんでる?」

「え? ええ、まあ……」

 鋭いな王様! 確かにパーティー一同、がっつりとヘコんでるよ! 

「やっぱり! そうだよね、それは落ちこむよね」

「まあそうっすけど、オレらももっと強くならなきゃって反省してたところっすから……」

「あ、みんなはもっと強くなりたいの?」

「そりゃそうっすよ。今回みたいな無様なのはもうイヤっすから」

「そっか~、なるほど~」

 うんうんとうなずきながら、王様が何事かを考えこんでいる。う、なんかすっごくイヤな予感……。

 少しして王様が顔を上げると、満面の笑みを浮かべながら言った。

「了解、わかったよ! それじゃあ何か考えとくね!」

「あの、考えとくって、いったい何を……?」

「うんうん、悪いようにはしないから! 他にも希望があったら遠慮なく言ってね!」

「いや、全然話が見えないんすけど……」

 とまどうオレにビシッと親指を立てると、王様は満足したとばかりに立ち上がって玄関に向かう。おい! 話聞けよ!

「それじゃルイ君、明日は報告よろしく! 報酬も楽しみにしててね!」

 そう言い残して、王様は颯爽と馬上の人になる。ハルミさんも「失礼します」と言って馬に乗る。

「ではまた! 近いうちに、またお茶でもしましょ~!」

 そう言ったかと思うと、馬を疾駆させて夜の闇に消えていく。ご近所さんが何人か窓から顔出して見てるけど、まさかあれが王様だとは夢にも思わないだろうな……。


 てか、ホント自由な人だな……。なんの前触れもなくやってきて、嵐のように去っていったよ……。こんな時間に王様みずからわざわざ謝りにくるか? 普通……。最後は何言ってるのかもはや意味不明だったし……。

 しっかし、オレそろそろここに住むのがツラくなってきたかも……。ここ最近は朝から兵隊が来たり馬車が来たりで騒がしかったし。おかげで近ごろご近所の目が冷たく感じるよ……。今後もこういうことが続くんなら、いっそお城の近くにでも引っ越そうか?

 あーあ、もうすっかり目が冴えちまったよ。明日は城にクエストの報告に行かなきゃなんないんだけどな……。リアやステラは今ごろ大丈夫かな……。


 結局、その日はたまってた洗い物を片づけて寝ることにした。






一週間ほど間を置こうかと思いましたが、いつもの間隔で第三部に入ります。

開幕からいきなりドタバタですが、ルイたちの成長をどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←よければぜひクリックして投票お願いします! 『詩人』も参加中です!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ