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6-6 この人、こんなに強かったのかよ!?





 謎の石像に襲われ、今まさにとどめを刺されようとしていたリア。そのピンチを救ったのは、王国屈指の腕を誇るAランク剣士、ギュスターヴさんだった。え? なんでギュス様がここに?

 そんなオレのとまどいをよそに、石像の剣を受け止めたギュスターヴさんが力任せに敵を振り払う。一目見て相手を雄敵と判断したのか、剣を構えると精神を集中させていく。

「おおおおおおオオッ!」

 咆哮とともに、ギュスターヴさんが猛然と斬撃を繰り出す。は、ええ! ゾンビ退治の時に見たあの剣さばきだ! だが石像野郎も、四本の腕で弾き返しながら反撃してくる!

「やああああぁぁぁっ!」

 おお! 後ろからステラが雄叫びを上げて襲いかかる! これはイケるか?

 だけどステラの斧、背中に生える二本の腕に簡単にさばかれてる。え、なんで? 見ればギュスターヴさんも押されぎみだ! あのギュス様が劣勢だなんて!

「ルイさん! 歌です!」

 気を失ったリアを抱きかかえてハラハラしながら見守るオレに、ステラが叫ぶ。そ、そうか、歌がないから力が出せてないのか! 

「リア、ちょっと辛抱してろよ!」

 柱にリアの身体をあずけると、オレはダッシュで竪琴を取りに行く。あの化物から離れた所に落ちててよかったぜ!

 竪琴を手に取ったオレは、速攻で応援歌を歌い始める。一旦石像から間合いを取っていたギュスターヴさんが、驚きの声を上げる。

「な……!? これは、いったい……!?」

「それがルイさんの歌の力です! 今、私たちは普段以上の力を発揮できます!」

 とまどうギュス様に、ステラが手短に説明する。お? オレの歌、ギュス様にも効いてるのか?

「なるほど……。まるで私の身体じゃないようだ!」

 高揚した面持ちで笑うと、ギュス様が石像に突っこんでいった……って、は、ええ! あのスピード、リアよりも速いぞ!?

「おおおオオオオオオオッ!」

 再びギュス様が吠えながら、斬撃を……って、ええ、速すぎんよ! さっきのリアの二刀流と同じ、いや、それ以上の速さで斬りつけていく。しかもその一撃一撃がステラの斧なみに重いらしく、あの石像野郎が防戦一方に追いこまれているぞ! ステラも石像の後ろから攻撃を仕掛け、今度は押しぎみに戦っている。

「ふん!」

 おお! ついにギュス様の剣が敵の左腕をとらえた! 脇から生えた腕が、ひじのあたりから吹っ飛んでいく! これで相手の手数は単純に25%減るわけだ! 勝負あったか?

「これで、終わりだああアアアアッ!」

 ギュス様の剣が、稲妻のごとく閃く! 目にも止まらぬ速さで、なんと残りの三本の腕もすべて切り落としちまった! す、げえ! 凄すぎる!

「ぬうううううんっ!」

 両手で剣を握ったギュス様が、大上段に構えて一気に振り下ろす。石像は真っ二つに両断され、背中の二本の腕もその動きを止めた。




「か、勝ったんですか……?」

 肩で息をしながら、ステラが放心状態でつぶやく。どうやら、勝てたみたいだな……。

「そうだ、リアッ!」

 いけねえ! あいつ、大丈夫なのか? 急いでリアのところに駆け寄ると、その肩を揺らして名前を呼ぶ。

「リア! リア! 大丈夫か!?」

「う、う~ん……?」

 うるさいなぁ、といった顔でリアが目を覚ます。ほっと安堵するオレたち。目覚めたリアが、あたりをきょろきょろと見回す。

「え~と、私、お宝見つけて……あーっ! 敵、敵! あいつ、どこ行ったの!?」

「落ち着けリア、あいつならほら、あのザマだよ」

 そう言ってオレが真っ二つの石像を指差す。リアはいまだよく状況が飲みこめていないらしい。

「あれ~? いつの間に倒しちゃったの? って、どうしてギュスターヴさんがいるの?」

 首をかしげるリア。ステラとギュス様も駆け寄ってくる。

「よかった……! リアさん、無事だったんですね……!」

 ステラがうるうるしながらリアの身を案じる。かわいい。

 ん? なんかギュス様、めっちゃ暗い顔してるな……。命の恩人なんだし、まずはお礼を言わないとな。

「ギュスターヴさん、助かったっす。おかげで……」

「皆さん、本当に申し訳ございませんっ!」

 えっ、ええええ!? 額が地面につくんじゃないかってくらい身体を折り曲げて、ギュス様がオレたちに頭を下げてくる。な、なんで!?

「ど、どうしたんすかギュスターヴさん!? オレらギュスターヴさんに助けてもらったんすよ!?」

「そ、そうですよ! むしろギュスターヴさんのお手をわずらわせてしまって、私たちが頭を下げるべきところです!」

「ほえ? ギュス様、なんで頭下げてるの?」

 まだ朦朧としてるのか、リアがとぼけた事を言う。いいや、コイツはしばらくっとこ。

 とまどうオレたちに、ギュス様が心底申し訳なさそうに口を開く。

「本来今日のクエストは私も同行する予定だったんです。それが、前の案件が長引いてしまい、皆さんの後から行く形になってしまいました。こんな言い訳、許されようはずもありませんが……」

「いやいや! 言い訳も何も、国の大事な仕事なんでしょうからそっちを優先すべきに決まってますって! このクエストだって、元々オレたちだけでやるはずのクエストだったんですから!」

「それも私のミスなのです。このダンジョンならルイさんのパーティーに任せられると思っていたのですが、このようなモンスターがいるなどとは思っておりませんでした。これほどまでの強さ、本来なら調査隊の精鋭で臨むべき強敵です。今回皆さんを危険な目に遇わせてしまったのは、完全に私の調査不足と無責任な仕事ぶりのせいなのです……」

「ないない! ないから! ギュス様が無責任だとしたら、オレなんかむしろ責任を他人になすりつけるレベルだから! 調査にしたって、こんな化物がいる事を想定する方がおかしいっすから!」

 思わず言葉使いがくだけてしまう。いや、元々くだけてるけどさ。なおもうなだれるギュス様に、オレはことさら明るい調子で言う。

「と、とにかく! こうしてギュスターヴさんが来てくれたおかげでヤバい敵も倒せたし、お宝も手に入ったし! オレたちも無事に王様のクエストをこなせたしで、すべてよしっすよ! だからギュスターヴさん、あなたが気にする事なんてこれっぽっちもありませんって!」

 そう言ってむりやり笑うオレを、ギュス様がいかにも感激したって顔で見てる。う、なんかヤな予感……。

「おお……。到底許されざる不始末をしでかしたにもかかわらず、そのような優しいお言葉でなぐさめ、笑って許してくださるその度量の大きさ……。このギュスターヴ、あらためて感服いたしました……」

 出たよ! 必殺、謎のホメ殺し! それマジでやめて! チョー恥ずかしいから!

 ま、でもギュス様も納得してくれたようだし、みんなも無事だし、まずはめでたしめでたしかな。

 少し落ち着いたのか、ギュス様がオレに聞いてくる。

「それにしても、先ほどの歌……。私の奥底から力が引き出されるような感覚でしたが、あれもルイさんの歌の力なのですか……?」

「え? はい、そうみたいっす。リアとステラにしか効かないのかなと思ってたんすけど、ギュスターヴさんにも効くんすね」

 オレの説明に、またしても謎の感銘を受けたご様子のギュスターヴ氏。

「ゾンビ討伐の時にあの亡霊を退けた奇跡の力のみならず、そのような力までお持ちとは……。先ほどの敵も、普段の私の力では倒す事ができなかったでしょう。あの亡霊の時といい、今回といい……私の命は、もう二度もあなたに救われているのです。この命、あなたのためにならいつでも投げ打つ覚悟はできておりますゆえ」

 いや、いいから! オレなんぞのために投げ打たなくていいから! 王様あたりのためにとっておいてくれよ!

 てか、早く帰ろうぜ! このままじゃオレ、マジでギュス様にホメ殺されちまう!



 こうして、オレたちは無事クエストを終えて帰路へとついたのだった。






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