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6-4 おいバカ、それは……





 人が使っていた痕跡の残るエリアに入り、オレたちの探索にも力が入る。リアはもう勝手にずいずいと先に進んでくし。まーた宝箱探すつもりだな、あいつ……。

「まったく、困ったモンだよな、あいつにも」

 隣を行くステラに話しかけると、ステラも苦笑をもらす。

「きっとはりきってるんですよ、盗賊が活躍できる場面ですし」

「オレはてっきり、こういうところは調査隊や冒険者がとうにチェック済みでなんにも残ってないんだと思ってたぜ」

「このあたりのダンジョンに来る人たちは、すでに見つかっている薬草や鉱石などを目当てにしてますからね。わざわざあるかどうかもわからない宝箱を探す人はあまりいないんじゃないでしょうか。調査隊がやってくるのも月に数回ですしね」

「へえ、そういうモンか」

「ただ、ここみたいに人が使っていたとなると話は別ですね。他にも何かあるんじゃないかとリアさんがはりきる気持ちもわかる気がします」

「そのとーり! さっすがステラ、よくわかってるじゃん!」

 うおっ!? お前、いつの間に戻って来たんだよ! びっくりさせんな!

 オレの驚きもよそに、リアがぐいぐいとオレとステラの腕を引っぱる。てか、裾を引っぱんな! 服が伸びるだろーが!

「宝箱なんてそうそうお目にかかれるものじゃないからさー。盗賊の血が騒ぐわけよ」

「よかったですね。探索を依頼した王様に感謝しないとですね」

「そうだね~。うん、王様にもおみやげいっぱい見つけてあげよっか!」

 こいつらもすっかり王様を身内かなんかみたいにあつかい始めてるな。ま、オレらその王様から信頼されてるスーパーパーティーだし、それも当然か!

「でも盗賊らしいことって言っても、リアってなんかできるのか?」

「はぁ!?」

「いやだって、さっきカギ開けれなかっただろ」

「え、え~と……だからあれは、魔法の力だったんだって!」

「ふーん。ま、それじゃそれは置いといて。他には何ができるんだ?」

「へっへーん、よくぞ聞いてくれました」

 リアの瞳がギラリと光る。な、なんかイヤな予感……。

「例えばね……」

 そう言うと、リアがオレにぶつかってくる。イテぇな、なんだよいきなり。

 一方のリアはと言えば、謝りもせずに妙にドヤった顔してやがる。くそ、ムカつくな。

「ふっふ~ん……」

「なんだよ。お前、人にぶつかっておいて詫びもナシかよ」

「あれ? まだ気づかないの?」

 呆れたって顔でリアが言う。はぁ? 何がだよ。

「もー、早く気づいてくれないとさぁ……」

 そう言いながら、リアがちっちゃい袋をオレの目の前に差し出す……っておい! それオレのサイフじゃねーか!

「お前! 何オレのサイフパクってんだよ!」

 慌てて取り返そうとするオレの腕をひょいとかわし、リアが口笛を吹く。くっそ、マジムカつくなこのガキんちょ!

「何って、ルイが言うから見せてあげたんじゃない、盗賊らしい技をさ」

 そう言ってサイフをオレの頭の上に乗っける。テメェ! それタダのスリじゃねーか!

「ま、この技が生きる場面ってそうそうないんだよね~。人にやったら捕まっちゃうし」

 当たり前だ! てか、オレをムカつかせる才能だけは超一級だな、オマエは!

「ところでさ。あっちの方、なんだかリッパな造りになってたよ。ちょっと調べに行こうよ」

 オレの怒りなど気にも留めず、そんな事を言いながらリアが向こうの方を指さす。くっそ、後で覚えてろよ! 

 しっかし、まだなんかあるのかな。いつまでも腹立ててるとまたこいつのペースになるので、オレも気持ちを切り替える。

「よし、それじゃ行ってみるか」

「はい」

「よーし、それじゃ行ってみよ~!」

 そうしてオレたちは、さらに奥へと進んでいった。






 リアの案内でやってきたエリアは、キチンとキレイにカットされてた石が敷き詰められた場所だった。ここ、なんでこんなにキレイに整備されてんだ? さっきからあちこちに例の紋章が刻まれてるし、悪のアジト的なものかなんかだったのか?

 何度かモンスターとも遭遇したが、そこはリアとステラがちゃっちゃと退治してくれる。てかせまい通路だから、リアの投げ石から身をよけようがないんだよな。なすすべもなく足を砕かれたモンスターたちが、ステラにさくっと頭を割られていく。もうただの作業と化してるな。

「しっかしホント、キレイに造られてんな……」

「そうですね、お城や神殿みたいです」

「何か祭ってたりするのかなー。邪神を崇める邪教徒の祭壇とか?」

 なんだよその中二的発想。てか、こっちにもそういう邪神的なヤツってあるのか?

「あ、見て見て~。あっち、多分部屋になってるよ」

 明るい声でリアが言う。こいつ、今日はホント上機嫌だな。あんまりハメはずしすぎるなよ。


 どんどん先に進むリアを追いかけ、オレたちもその部屋に入る。

 そこは、なんとも息苦しい部屋だった。天井が低い……。ムダに柱がいっぱいあってジャマくせえし……。ギリシャとかの神殿をせまくした感じだな。

 そして、中でも一際オレたちの目を引くものが部屋の奥にあった。

「ねえ、何あれ……?」

「なんだか不気味な像ですね……」

「ああ……」

 そこに立っていたのは、腕が六本ある等身大の石像だった。1メートル80くらいはあるか? 肩と脇、そして背中から一対ずつ腕が生えてる。お前は阿修羅像かっつーの。なんか全部の手にちょっと短めの剣を握ってて怖いな……。てか、めっちゃ強そう……。

「ねえ、ここホントに邪神崇拝の礼拝場とかなんじゃないの?」

「かもな……。とりあえず王様に連絡した方がい……」

「あーっ! お宝発見ー!」

 人の話聞けよ! てか、いつのまにオレの隣から消えたんだよ!

「ほらほら、二人とも来なよー!」

 はいはい、わかったよ。オレとステラがリアのところへと寄る。リアの目の前には、なんだか怪しげな石壇があった。そこにこぶし大くらいのっきな赤い宝石がはまっている。その隣にもなんか穴が開いてるな。

「ね? スゴいでしょ? これいくらで売れるかな?」

 嬉しそうにリアが言う。いや、だから、それはまず王国に届けるんだろ?

「それじゃ、いただいていきますか」

「ちょっと待て、罠とかはないんだろうな? いくらなんでも明らかに怪しいぞ、この宝石」

 隣の穴も気になるし。ここに何かはめるとか、そういう系の仕掛けなんじゃないのか?

「へーきへーき、罠ならこの美少女盗賊リアちゃんがとっくに気づいてるって」

 そんなたわ言をほざきながら、リアが赤い宝石を躊躇なく取りはずす。カチッと小気味いい音を立てて、宝石は簡単に台座からはずれた。


 ――――ブィィィィィィィン――――――――。


 明らかに異常な起動音みたいなのが部屋中に鳴り響く。おい、これ、やっちゃったんじゃ……。

「リアさんリアさん、これはいったいどういうことかな?」

「あ、あは、あははははー!」

 完全にやらかしたって顔で、リアが笑ってごまかそうとする。お、お前ってヤツはよぉ……。

 その時、石像の方から足音のような音が聞こえてきた。嫌な予感に振り返ると、思った通りあの不気味な石像がこちらに向かって近づいてきていた。ヤベ、超強そう……。

「これはあれか、戦うしかない流れだよな……」

「どうやらそうみたいですね……」

「そ、そーだよ! コイツをやっつけちゃえば万事オッケーだって! あははははー!」

 そう言うからにはちゃんと倒せよ? テンプレのようなバトル展開に、オレも覚悟を決める。

 大丈夫、オレたちは王国に認められたトップランクパーティーなんだ! お宝の守護者くらい、パパッと片づけてやるさ!






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