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6-1 王様直々のクエストだぜ!





 王様に頼まれた探索クエストの日。オレたちは王城の城門の前にいた。

「さーて、今日もはりきっていきましょうか」

 手を組んで上に伸びをしながら、リアがお気楽な調子で言う。こいつもずい分慣れてきたみたいだな、この城に。

「でも、お城にもゲートってあるんだねー」

「言われてみれば、四十一階の詰所には魔法陣が四対ありましたね」

「それってあれか、調査隊用のゲートなのかね」

「まあ、わざわざ他の詰所作るのも大変だもんね~」

「そう考えると、自由連盟の皆さんは大変ですね。自前で詰所作ってますし、維持するにも自分のギルドのメンバーだけで守らなければいけないんですから」

「ああ、それは大変そうだな。変な意地はらなきゃいいのに」

 衛兵さんに門の内側へ通され、庭を通って城の中へと案内してもらいながらそんな話をする。

「さすがに五十一階は自分たちだけでは詰所を維持できないらしくて、自由連盟のAランクプレイヤーの皆さんはわざわざ四十六階から上っていかなければならないらしいです」

「ふん、自業自得じゃん。あんな奴ら、勝手に苦労してればいいんだよ」

 あれ? なんか妙にリアの発言にトゲがあるな。以前に自由連盟の連中となんかあったのか?

 先週来たばっかだからか、城に入ってももう大して緊張を感じない。まあ、この前は城中ウェインさんに案内してもらったしな。

「あ、今日は王様出てこないのかな?」

「そりゃ王様だってそんなにヒマなわけないじゃん。あいかわらずわかってないみたいだけど、スゴい人なんだよ? あの王様」

「本来なら、私たちがお声をかけていただく機会さえないはずのお方ですからね……」

 しみじみと語らいながら、衛兵さんにゲートへと案内してもらう。ああ、今日は案内がウェインさんとかじゃなくてよかった。あの人がいたらまた「そんなことはありません! 皆さんは救国の英雄なのですからうんたらかんたら!」とか言い出すだろうしなあ……。この衛兵さん、あんまオレたちに興味ないっぽいから気楽に雑談できるわ。


 しばらく廊下を歩いていると、部屋の一つの前に人が立っているのが見えた。衛兵さんがその人に向かって敬礼する。軽装の鎧を着こんでるけど、剣士か槍兵かな? 衛兵さんから引き継ぐように、その人がオレたちに向かって笑いかけてきた。

「ルイ殿とパーティーの皆さんですね? お待ちしておりました。私は王国調査隊のヨハンと申します」

「え!? こ、こんにちは!」

 オレたちも慌てて口々にあいさつをする。この人、調査隊の人なのか! 超エリートじゃん! ま、まあ、王様とメシ食っておいて今さらビビるような事じゃないよな、うん。

「ゲートはこちらになります。皆さん、どうぞ」

 部屋の扉を開きながらヨハンさんが言う。そ、それじゃ、おじゃましまーす……。


 部屋の中は、あっけにとられるほど普通の部屋だった。ゲートが全部で三対ある。ま、ゲートに入るためだけの部屋なんだろうな。シンプルなのも当然と言えば当然か。

「皆さんは左のゲートから四十一階に向かってください。こちらが簡単な地図になります」

「あ、どうもっす」

 ヨハンさんから地図を受け取ると、一番地図の読めるリアに手渡す。てか、ホントに簡単な地図なんだな……。子供の落書きレベルだろ。

「そう言えば、ギュスターヴさんがまだ来てないっすけど……」

「はい、副隊長は前の仕事が長引いておりまして、後から急いで皆さんを追いかけるとの事です。申し訳ありませんが、お先に調査に向かってください」

「そうなんすか。それじゃ仕方ないっすね」

 そう言いながら、リアの耳元にささやく。

(ここでギュス様来るの待ってちゃダメなのかな)

(バカ、ギュス様もお仕事なんだからしょうがないじゃん。基本私たちが受けたクエストなんだし、仕方ないよ)

(ま、そうだよな……)

 ギュス様いればラクできると思ったんだけどなぁ……。しょうがないか。

「えっと、マントはヨハン様にお渡しすればいいでしょうか……?」

「ええ、お預かりします、よ……?」

 マントを脱ぎ始めたステラを見ていたヨハンさんが、中から現れたビキニアーマーに硬直する。そっか、初めて見るんだよなこの人。顔真っ赤にしていろんなところを凝視してる。ヨハンさん、あんたもなかなかなむっつりぶりですなあ……。

「それでは、お願いします」

「あ、はい! それではお預かりします!」

 大いにうろたえながら、ヨハンさんがマントを受け取る。

「それじゃ、いってきます」

「えー、ゴホン! どうぞ皆さん、お気をつけて! ご武運を!」

 まだ動揺が収まらないのか、声を裏返らせながらも敬礼で見送るヨハンさんに頭を下げ、オレたちは四十一階へと向かった。





 四十一階のゲートに着き、詰所の広間に出る。

「今日は先生いないみたいだね」

「そうだな」

 部屋の中の皆さんにあいさつして、詰所を後にする。あの人たち、みんな各ギルドのベテラン冒険者なんだよな……。オレたちもずい分遠くまできたもんだよ。


 そんなわけで、まずは探索を頼まれた四十三階を目指す。なんていうか、途中の敵が全然敵じゃないな……。この前クエストでやってきた四十二階も、特に苦戦する事なくずいずいと進んで行く。ああ、サーベルタイガーを見るとこの前のクエストの悪夢が……。クッソ重い荷物を持たなくていいってだけでも、今回のクエストは極楽だぜ。

「そう言えば」

 ヒマなのでリアに話しかける。

「ん、なに?」

「盗賊ってやっぱ探索とか得意なのか?」

「あー、そりゃもちろんだよ。敵には見つかりにくいし、罠とかもすぐ見つけられるしね。扉や宝箱のカギも開けられるし、やっぱり一家に一人は必要だよね、盗賊は」

 なんだよ、「一家に一人」って。しかしそれならホントにラクそうだな、今回のクエストは。

「バトルとなればステラがいるし、ホント楽勝だよね~。もしかして私たち、もうトップクラスのパーティーなんじゃない?」

 まさに鼻高々といった感じでリアが笑う。ついこないだまで、自分の人間離れした強さにあれだけ悩んでたってのによ。オマエ、急に天狗になりすぎだろ。

 まあでも、実際そうかもな。ギュス様が倒せなかった幽霊も倒したし、今じゃみんなBランクだし、こうして王様から直々にクエスト受注してるしな。そろそろオレたちもトッププレイヤーとしての自覚を持った方がいいのかもしれんね。

「で、でも、私はまだまだです……」

「ステラももっと自信持ちなよ、どーんとさ」

「そうそう、王様も言ってただろ。女の斧兵でステラほど強いプレイヤーはいないって」

「は、はい……」

 少し申し訳なさそうにステラがうなずく。うんうん、ステラは自分の力をちゃんと自覚すべきだよな。実際バケモノじみた強さだし。ヘタしたらもうギュス様より強いんじゃね?

「さーて、そろそろ四十三階だよ~」

 階段を見つけたリアが能天気に言う。さて、それじゃトップランカーらしくちゃっちゃとクエスト片づけちゃいますか。





第二部もクライマックスに入ったところで、少しだけ宣伝を。


八月から新作『一年遅れの精霊術士』という作品を連載しています。

本作に比べると幾分シリアス分が高めですが、よければ一度チラッと読んでもらえると嬉しいです。


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