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5-12 もしかして、最強の職業!?





 王様のメイドにして、実はボディガードでもあるらしい栗毛のメイド、ハルミさん。いや、さすがに信じがたいんですけど……。確かにいっつも王様のそばにいるけどさ。

「あの~。護衛って事は、ハルミさんって職業は剣士や槍兵あたりなんですか?」

 おずおずと手を挙げてリアが質問する。おお、ナイス質問だ。

「いいえ、私はただのメイドにございます」

 対する返答は、しかし意味不明なものだった。いや、ここが日本ならごく当たり前の答えなんだけどさ。

「え~と、どういう事ですか……?」

「それは僕が説明いたしましょう!」

 わっ!? いきなり出てくんなよ王様!

「他のメイドさんは槍兵や僧兵が多いんですが、こちらのハルミさんは、メイド長のみに許された職業『メイド』なのです!」

「え~っ!?」

 なんだそりゃあ!? つまり、オレの『詩人』と同じレア職業って事か?

「で、でも、メイドってそもそも強いんすか?」

「うん、すっごく強いよ!」

「ギュスターヴさんやウェインさんよりも?」

「あっはは! 彼らには悪いけど、正直ハルミさんの敵じゃないよ!」

 マジかよ! ギュス様よりずっと強いとか、バケモノだろそれ!

「まあギュス君もメキメキ強くなってるから、この先どうなるかはわかんないけどね。でも今のところ、この城の中でハルミさんとまともに戦えるのはレナード君だけじゃないかな?」

 レナード君って、『剣聖』レナードの事かよ! てかSランク級の強さなのかよ!

 王様の説明にあんぐりと口を開けるオレたち。と、王妃様がにこやかに王様の言葉を訂正する。

「あら陛下、このお城にはもう一人、ハルミさんと互角の力の持ち主がいらっしゃるじゃありませんか」

「あ~、そう言えばそうだったね! それじゃあ問題です、それはいったい誰でしょ~?」」

 はぁ!? 他にもそんなバケモノじみたヤツがいるのかよ!? てか、そんな問題わかるわけねーだろ! 

 ……って、なんか王様が、すっごい期待するような目でオレたちを見てる……。いやアンタ、なんでそんなにそわそわしてるんだよ……。

 てか、今オレめっちゃイヤな予感がしてるんだけど……。なんかあの人、あからさまにオレオレって感じで自分を指さしてるし……。

「もしかしてそれって、王様の事なのかな~、なんちゃって……」

「ピンポンピンポーン! 大正解でーす!」

「えええーっ!?」

 リアとステラがさも驚いたって風に驚く。いや、明らかにオレオレって誘導してただろ……。でもこいつらの事だし、演技なのか本気なのか……。

(てかお前ら、ホントに王様が強いと思う?)

(え? いや、う~ん……)

(どうなんでしょう……?)

 オレたちがひそひそ話をしてる向こう側で、王妃様が口を開く。

「今でこそ陛下は『賢王』と呼ばれてますけれど、かつてはそのあまりのお強さに『剣皇けんおう』と怖れられたお方。今でもその剣は衰えておりませんのよ」

「いやいや、さすがにもう大分年だし、昔みたいにはいかないよ~」

 その話、どこまでホントなんだろ……? どう見てもこのオッサンがギュス様より強いとは思えないんですが……。てか、ホントにそんな強いんなら護衛とかいらんでしょ、アンタ。

「ちなみに、僕の職業は『国王』! ハルミさんと同じ、たった一つのレア職業だよ!」

 いや、そりゃあんたは職業国王に決まってんじゃん……。てか、一つの国に二人も三人も王様がいてたまるかよ。

「お父様、そんなにおしゃべりし続けては皆さんも食事が進みませんよ?」

「ああ、ごめんねマリちゃん! 僕ばっかりしゃべってたらマリちゃんさみしいよね!」

「なっ、そ、そういう意味ではありません! お食事が冷めてしまう前にと……」

 あー、まだ話の途中だってのに、マリ様の話ロクに聞かずにメシ食い始めてるよ、王様……。ホント自由だな、この人……。

「さーてそれじゃ、みんなどんどん食べてねー! おかわりもまだまだあるよ~!」

 王様のお言葉に甘えて、オレたちはウマいメシをたらふく食ったのだった。









「ふー、食った食った……」

「も~お腹いっぱい……」

「とってもおいしかったです……」

 食事も終わり、オレたちは三人思い思いに感想を口にする。

「よかった、みんな満足してくれたみたいだね! マリちゃんもそうでしょ?」

「もちろんです。……なんですか? その顔は……」

「いやいや! パパも娘のためにいい事したな~って!」

「もう……」

 ……「いい事」の意味がよくわかんないんだけど。てか、いつもマリ様に迷惑かけてるようにしか見えないんすけど。

「どうも、ごちそうさまでした」

「いえいえ~。僕たちはこの後仕事だけど、みんなまた来てね~!」

「あ、ありがとうございます」

「それじゃあ今度のクエストもよろしくね! 日取りが決まったら、みんなのところにお知らせするね~」

「了解っす」

 そうだ、クエストもあるんだった。王様の直クエスト、いったいいくらもらえるんだろうな……。

 そんな事を考えていると、マリ様がオレたちに声をかけてくれる。

「皆さん、このたびは本当にありがとうございました。ルイさん、ぜひまた歌をお聞かせくださいね」

「は、はい! そのうちいつかマリ様のために新曲を作ります!」

「え……?」

 それを聞いたマリ様が、少し顔を赤くして上目遣いになる。

「ありがとうございます、た、楽しみにしてます……」

「は、はい……」

 ヤバい、超カワいい! よーし、いつ作れるかわかんないけど、超いい曲作ってくるぜ!

「えー! マリちゃんだけずるいー! 僕にも一曲作ってよー!」

 声デケえぇぇぇっ! 僕にもって、アンタは駄々っ子かなんかかよ!

「え、えーと、いいっすよ……。どんな歌がいいっすか……?」

「う~ん、そうだなぁ……。そうだ! さっき若い頃の話が出てたから、『イケメン剣皇アンリ』って感じで!」

 またムチャな注文だな、おい! オレはアンタの若い頃知らないから、そんなの全然イメージできねえっつうの!

 まあヒマがあったら考えときますと軽くあしらったところでオレたちは「夏の間」を出た。しばらく貴賓室で休憩して、お昼前に城を出る。はぁ、まだ昼前だってのに、なんだかすっかり疲れたよ……。




 その後は、せっかくなんで昨日待ち合わせの時に話題に出たスタバこと『スタイリッシュ・バロン』に入ってみる。今ならいい服も着てるしな。たまに来ていたらしく堂々と店内に入っていくステラに、オレとリアも城帰りで気が大きくなっているのもあってずいずいとついていく。うーん、勢いってのは大事だね。そこで三人、わいわいとお気楽な時間を楽しんだ。

 案の定、今ちまたで話題の黒いお茶はコーヒーでしたとさ。






次回から第二部のクライマックス、6章に入ります。久々のクエストをお楽しみに。

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