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5-9 王女様との、チョー楽しいひととき!





 貴賓室を出たオレたちは、またさっきの王様の部屋の方へと歩いていく。ああ……王女様の部屋か……。さすがに緊張するぜ……。やっぱいい匂いとかすんのかな、王女様の部屋……。

 はっ!? てかオレ、女の子の部屋に入るとか生まれて初めてじゃね!? ヤバい、オレ汗臭くね? 王女様に鼻つままれて出てけとか言われたら、オレもう立ち直れないぜ!?

「……ルイ、何してんの?」

 自分の腕やら肩やらをくんかくんかするオレに、リアが呆れぎみの視線を向ける。だいたいの見当はついているのか、手のかかるヤツだと言わんばかりの口調で言った。

「今さらそんな事気にしてもしょうがないでしょうに……。大丈夫だよ、別にクサくないって」

「ホント? ホントに?」

「ホントホント。てゆーか、ホントにクサかったら私たちがとっくに注意してるって」

 リアの言葉に、ステラも困ったような顔でうなずく。ホッ、よかったぁ。そんなんで嫌われたら、オレ一生恋愛できなくなってたところだわ……。

 そんな調子で歩いていると、ウェインさんがオレたちの方を見て笑う。

「皆さん、あちらのお部屋です」

 王様の部屋よりは小さめでかわいらしい感じの扉にノックし、ウェインさんがオレたちの到着を告げる。部屋の中から声がして、扉が開かれた。

「それでは皆さん、どうぞお入りください」

 ウェインさんの後に続いて、オレたちも部屋の中へと入る。初めて入る、女の子の部屋……。おお、オレはまた一段男としてのステップを上がるぜ……。

 部屋の中は日の光が差しこんで明るく、中のものがよく見える。テーブルやイスもさっきの王様の部屋のと比べて女の子っぽいというか、曲線が多くてかわいい。カーテンもランプのかさもヒラヒラしてて、なんだかメルヘンな感じだぜ。

 そんな部屋の中に一歩入ると、くんかくんかするまでもなくオレの鼻腔をくすぐってくるほのかな香り。ああ、これ、花の匂いか。確かにあちこちに花が飾られてるぜ。さすが王女様、女子力もハンパなく高いな……。

 そして、テーブルに座ってオレたちにほほえみかける女の子……お、王女様! スゲえ、マジで絵本やマンガで見かけるレベルの美少女だ! なんか後光が見える気がする! これ、特殊なエフェクトとかじゃないよな? 隣のリアも、ほへ~と間の抜けた顔で王女様の方を見てる。同性から見ても、別次元の生き物だよな。

「殿下、皆さんをお連れいたしました」

「ありがとうございます、ウェイン卿」

 柔らかにほほえむと、王女様が立ち上がってオレたちに一礼した。

「皆様、ようこそおいでくださいました。お会いするのはしばらくぶりですね」

 オレたちに聖母クラスの微笑を向けてくれる王女様。こ、神々しすぎる! なんかヘンな手汗をかいてきたぜ!

「は、はい! 呼んでくれて嬉しいです!」

「わ、私も、誘ってくれてありがとうございます!」

「で、殿下にお誘いいただき光栄です……」

 王女様の圧倒的天使級オーラに、しどろもどろになるオレたち。こ、これが王家のオーラってヤツか……。マジで別世界の人間、身分が違いすぎるって感じがするぜ。なんせ今まで会った王族って、基本あの王様くらいだもんな……。

 でも、晩餐会の時はそこまでオーラを感じなかったのにな。なんでだろ? あれか、王家のオーラをぶち壊すくらい、王様個人の変人オーラが規格外って事なのかね。

 オレたちのつたないあいさつに、王女様は笑って席を示す。

「どうぞ皆様、おかけになってください。ウェイン卿もそちらにどうぞ」

「は、はい」

「失礼しま~す……」

 カチカチになりながら、オレたちは白くてかわいらしい楕円形のテーブルの周りに座る。テーブルの真ん中には、クッキーとかアメとかいろんなおやつが入ったオシャレな入れ物がいくつも並べられていて、オレたちの手元にはおしぼりっていうか少ししめったファンシーなハンカチみたいなのが置いてあった。

「失礼いたします」

 部屋に控えていた青髪と茶髪のメイドさんが、まず王女様に、そしてオレたちに紅茶を注いでいってくれる。おお、さすがいい匂いがするぜ。てか、紅茶と部屋の匂いが混ざって、さらにいい匂いが……。もしかして、この匂いが混ざり合う事まで計算して花の種類も選んでいるのかね。女子力高すぎる……。

 初めての女子の部屋と、正真正銘の王女様のオーラのダブルパンチに開幕早々ノックアウト寸前になりながらも、お茶会は無事にスタートした。







「あら、そうだったんですか? ふふふ、それは災難だったですわね」

「そうなんすよ。リアなんか、『オバケ怖いー』って泣き出しちゃって」

「ちょっ、ルイ!? 嘘つかないでよ、私泣いてないもん!」

 お茶会が始まって数十分、オレたちはすっかりいつもの調子に戻って王女様にクエストの話を披露していた。てか、王女様コミュ力高すぎ! オレたちにすっかりなじんじゃってるよ! むしろ不安になってくるよ。いいのか? オレらなんかになじんじゃって?

 しっかし王女様、すべてが完璧すぎね? うちのステラもスゲえ美人だと思うけど、王女様のはマジで国が傾くレベルだろ! 長い金髪が日光を浴びてキラッキラ虹色に輝いてるし、肌はチョー白くてほっぺとかほんのりピンク色だし、瞳とか透き通るような青で潤みがちに輝いてるし! まつ毛長いし、唇さくらんぼ色でかわいい形してるし、指とか細くてしなやかだし……。絶対オレと同じ生き物じゃないだろ、これは。

 外見がそんな調子なのに、それに加えて中身まで完璧だってんだから、もう嫉妬とかする気にもならないわ。チョー優しいし、気も利くし、頭もいいっぽいし、おもしろい事も言うし、オレが勝てそうな要素何一つないんだけど。こんな完璧人間が側にいたら、ステラあたりは自分を卑下して消え入りそうになっちゃいそうなところだけど、そのステラは王女様マジ尊敬って目で楽しそうにしゃべってる。コミュ力っていうか、もはやカリスマ? もう王女様が王様やった方がいいんじゃね?

 そんな調子で王女様にメロメロになっていたオレだが、さっきから会話の中で一つ気になっている事があった。

「そうですか、それでリアさんのためにお守りを……。やっぱりルイ様はお優しい方なのですね」

「いえ、そんな事はないっす……」

 さっきからオレの事「ルイ様」って呼んでくるんだけど、なんで? リアやステラはさん付けなのに。オレが男だから? ウェインさんはなんか「ウェイン卿」とか呼ばれて微妙にカッコいいけどさ。さすがに満面の笑みで「ルイ様」とか呼ばれると、あまりにもおそれ多いわけよ。

 てわけで、王女様にお願いする。

「あの~、王女様……」

「はい、なんでしょう? ルイ様」

「そ、そのですね……『様』をつけられると、なんか落ち着かないっていうか……」

「あら、そうですか? それでは早く慣れていただかないと」

「な、なんで!? いや、そうじゃなくてですね、オレの事は呼び捨ててくれるとありがたいなー、って……」

 しばらくポカンとしていた王女様の頬が、次第に赤みを増していく。え、なんで? 少しそわそわしながら、王女様が上目遣いにオレを見る。

「そ、そんな、呼び捨てだなんて……。そ、それでは、わたくしの事も、マリ、と、よ、呼んでいただいても……」

「いやいやいやいや!」

 慌てて立ち上がるオレ。……てか、隣の二人も立ち上がってるんですけど。しかもやたらオレの事ニラんでくる……なぜ?

「よ、呼び捨てなんてムリに決まってるじゃないっすか!」

「そ、そうですよね、呼び捨てはまだ早いですよね」

「そ、そうそう、そうっすよ……」

 「まだ」って何がまだなのかよくわからんけどな。てか、なんかデジャブが……。これはギュス様の時みたいに折衷案出さなきゃいけない流れか? あいかわらず隣の二人の視線も厳しいし……。

「じゃ、じゃあ、オレの事もこいつらと同じように、せめてさん付けで呼んでください」

「そ、そうですね、その方が親しい雰囲気がするかもしれませんね」

 よ、よかった、意外とすんなり譲歩を引き出せたぜ……。さん付けでも十分おそれ多いけどな。

「あの、それでは、皆様もどうぞ私の事は名前で呼んでくださいまし……」

「マ、マリ様、ですか」

「そ、そうですね、まずはそこからですよね……」

 顔を赤くしながらうつむく王女様……マリ様。くうっ、チョーカワいいぜ! 王女様って気軽に友だち作れなさそうだし、普段は周りから殿下とか呼ばれてるから、きっと名前で呼ばれるだけで嬉しいんだろうな。「まずは」って事は、これから友だちづきあいを深めていきましょうって事なんだろう。もちろん超深めますよ! なんならもっと先のステップに踏み出してもいいっすよ! オレ的には!

「ちょっと、いつまでつっ立ってるのさ」

ってえぇぇ!?」

 すでにイスに座ってたリアが、オレの右ふとももをつねってくる。てぇよ! なんで機嫌悪いんだコイツ!

 ふとももをさするオレに、マリ様が心配そうな目を向ける。ああ、ホント王女様は優しいぜ……。




 その後も語らいは続き、オレもマリ様のリクエストに応えて歌を何曲か披露した。ラブバラードを歌った時にはマリ様のみならず、周りのメイドさんまで目がうるうるになってたぜ。順調に好感度積み上げてるな、オレ。

 もっとも、ウェインさんまで乙女チックに目を潤ませてるのには何か身の危険を感じなくもなかったけど……。



 



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