5-8 城内を見学!
昼食を終え、オレたちはウェインさんの案内で城の中を見学させてもらっていた。正直ダルいなーとか思ってたんだけど、実際に見てみると意外とおもしろいな。
「あちらがプールになります。王族の皆様がお客人をお招きする事もあります」
「おー! すっごーい!」
「本当ですね。私も泳いでみたいです」
うん、それはオレも見たい! ステラはビキニもいいけどスク水もアリだと思うんだ! リアは……ま、なんでもいいんじゃね?
ステラのつぶやきを聞いて、ウェインさんが笑いかける。チッ、イケメンは何をやってもサマになりやがるぜ。
「それなら陛下にお願いしてみてはいかがですか? 皆さんのお願いなら、陛下もこころよくお許しくださるのではないでしょうか」
「そ、そんな! おそれ多いです!」
真っ青になってステラが首を横に振る。てか、なんでリアまでいっしょになって首振ってんだよ。そんなに首振ったら、もげるぞ?
「ははは、皆さんは相変わらず謙虚ですね。そんなに遠慮なさらずともいいと思うのですが。もっとも、近く王都に公衆プールを造る計画もあるようですし、それまでお待ちいただければいくらでも泳ぐ事ができるようになりますよ」
「え?」
「ホントっすか!?」
「ええ、本当です」
マジか! やった! 水着、水着! ステラの水着! あ、アンジェラを誘うのもいいな。あの人、胸はないけど脚はキレイだし。後は誰を誘おうかな……。
「ル~イ~くん?」
「はっ、はい!?」
「今、な~にを想像してたのかなぁ~?」
「えっ!? い、いや別に何も!?」
「ふ~ん……」
いかにも疑わしげな目でオレをニラむ。うっ、さすが盗賊、レベルアップしてるせいか鋭さにも磨きがかかってる気がするぜ……。
「さて、後はどこにお連れしましょうか……」
ウェインさんが少し考えこむ。やがて、一つポンと手を叩く。
「そうだ! 宝物庫をまだご紹介してませんでしたね」
「宝物庫!?」
お宝のニオイがプンプンするワードに、リアが前のめりぎみに食いつく。おいお前、まさかとは思うが、ちょいと盗み出してやろうとか考えるんじゃねえぞ……?
「ええ、宝物庫と言いますか、近くに展示スペースがあるのですよ。国賓の方々を招いたりする事が多いのですが、皆さんにもお見せしましょう」
「そ、そんな大事な物、私たちが見てもいいのでしょうか……?」
「大丈夫ですよ。皆さんのご案内につきましては、この私が陛下より一任されているのですから。遠慮せずご覧ください」
「あ、あの! たとえばどんな物が展示されてるんですか?」
はいはーいと手を挙げて、リアがハイテンションで質問する。まるで水を得た魚のようだな。
「そうですね。かつて教会が教皇を戴いていた時代に、教会の守護者たる大レムール帝国皇帝としてフィリップ大帝が戴冠した際の宝冠、レムール王国建国の際に英雄王ルイ一世が携えていた異界の宝剣アスラを筆頭に、我が王国の至宝がそろっておりますよ」
「ほ、宝冠!?」
「あの伝説の魔剣アスラですか!?」
リアとステラが驚きに目を丸くする。どっちもオレにはその価値が全然わからんけど。リアはともかく、ステラって武器マニアだったりするのかね……? 料理に武器と、守備範囲広いなステラさん。
「おお、皆さんそんなにご興味がおありですか! それではさっそく参りましょう!」
二人の反応に気を良くしたのか、ウェインさんがゴキゲンな様子でオレたちを先導する。ま、オレもお宝ってのがどんなモンなのか興味なくはないし、そんじゃちょっくら行ってきますかね。
一通り城の中を見学したオレたちは、この前来た時も通された貴賓室で少し休憩していた。うん、この後おやつを食えるくらいには腹がこなれたな。
「ねールイー、これスゴいよー? 冷蔵庫なんて初めて見たよー」
オレらのテーブルから少し離れたところでは、リアが冷蔵庫を開いて冷気を浴びていた。そういやこの前はぐったりしてて冷蔵庫どころじゃなかったな、コイツ。オレとステラは前回さんざん見たんだよ。ま、楽しそうで何よりかね。
そんな事を思ってると、外で鐘の音が鳴るのが聞こえた。正午の鐘の後になる鐘、通称「おやつの鐘」だ。
「さて、それではそろそろ参りましょうか」
オレらの向かいに座っていたウェインさんがそう言って立ち上がる。お、おお、ついに王女様とのお茶会か……。マリ様だっけ? なんだか緊張してきたぜ。
「おいリア、いつまでやってんだ。もう行くぞ」
「ちょっと、待ってよ。ルイってば、せっかくのお城なのに感動薄いんじゃない?」
「オレは今それどころじゃないんだよ」
「なになに~? ははぁ~ん、さては王女様に気に入ってもらおうとか? あっはは、ムリムリぃ~。夢見るのは勝手だけど、現実と混同しちゃダメだよ?」
うっせ! 言いたい放題言いやがって! オマエは気づいてないかもしれないけどな、オレはこの前の晩餐会での演奏で王女様の好感度超上げたんだぞ! ……多分。
また一曲披露する事になるかもしれないと思い、オレは竪琴を手に立ち上がる。
「あれ、それ持ってくの? もしかして王女様に一曲歌うつもり? ダメダメ、私たちに評判いいからって調子に乗っちゃ。ルイ、心の傷をまた一つ増やしちゃうよ?」
「うっせ! てか、オレが心の傷抱えまくりみたいな風に言うな!」
まったく、こいつはよぉ。オレがリアをニラんでいると、ステラも加勢してくれる。
「そうですよリアさん。ルイさんの歌は、王女様にお聞かせしてもまったく恥ずかしくありません」
「ほら見ろ、さすがステラはわかってるぜ」
「ちょっ、ステラ、なんでルイの味方についてるのさ!」
口を尖らせて抗議する。おーおー、まったくお子ちゃまな事ですこと。
「ああ、わかった」
「わかったって、何がさ?」
「お前、オレの歌で王女様がオレに惚れちまう事を心配してんだろ?」
「は、はぁぁぁ!?」
リアが顔を真っ赤にして声を上げる。おー、効いてる効いてる。
「安心しろって、王女様がオレに惚れてもお前の相手くらいはしてやるからさ」
「ちょ、調子に乗るんじゃないっつーの! 誰がルイの相手なんかしてやるモンかー! バーカバーカ!」
あっかんべーしながら言うと、プイッとオレから顔をそらす。いつもの事ながら、過剰すぎるほどの反応だな……。そんなにオレの事好きって思われるのがイヤなのかね……。
「ルイさん、あんまりリアさんをからかっちゃダメですよ?」
あれ、なんかステラがわりと本気で注意してる……。やり過ぎだったか? ウェインさんはウェインさんで、なんかやれやれって顔してるし。うう、二人から見ればオレもリアと同レベルのガキんちょって事か……? オレ、これでも精神年齢は二十一歳のはずなのに……。
いささか落胆しながら、オレはみんなといっしょに王女様が待つ部屋へと向かった。




